働き方改革コラム

物流・運送業
物流・運送業界に迫る「2024年問題」 運転者を守るためにわたしたちができること

2024/2/14

物流・運送業界に迫る「2024年問題」 運転者を守るためにわたしたちができること

2019年4月から順次施行されている「働き方改革」は、そのうち「時間外労働の上限規制」については、一部の職種や業務内容等によって5年の猶予が与えられている。対象には「医業に従事する医師」「工作物の建設の事業」「鹿児島県及び沖縄県における砂糖を製造する事業」のほか、「自動車運転の業務」が含まれる。それぞれの規制内容に従って、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用される。この規制に違反した場合には罰則があり、使用者に6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される。

時間外労働の上限規制と改善基準告示に対応するためには勤怠管理のシステム化が必須

「自動車運転の業務」については、具体的にはタクシーやハイヤーの運転者、トラック運転者、バス運転者が対象。特別条項付き36協定を締結すれば、時間外労働の上限が年960時間になる。一般労働者とは異なり、「時間外労働と休日労働の合計で月100時間未満、2~6カ月平均で80時間以内」「時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6カ月まで」とする規制はいずれも適用されないが、その一方で、拘束時間や休息時間について定めた「改善基準告示」(2022年12月改正、2024年4月施行)を順守する必要がある。

■タクシー運転者の改善基準告示(参考1)
  現行 見直し後
1カ月の
拘束時間
【日勤】
299時間[年換算3,588時間]
【隔勤】
原則262時間/最大270時間(年6回まで)
【日勤】
288時間[年換算3,456時間]
【隔勤】
現行どおり
1日の
休息時間
【日勤】
継続8時間
【隔勤】
継続20時間
【日勤】
継続11時間を基本とし、9時間下限
【隔勤】
継続24時間を基本とし、22時間下限
  • ※ハイヤー運転者については適用外
■トラック運転者の改善基準告示(参考1)
  現行 見直し後
1年の
拘束時間
3,516時間 原則3,300時間
1カ月の
拘束時間
原則293時間/最大320時間 原則284時間/最大310時間
(※1~3)
1日の
休息時間
継続8時間 継続11時間を基本とし、9時間下限
(※4)
  • ※1 1年の拘束時間が3,400時間を超えない範囲で年6回まで
  • ※2 284時間を超える月が3カ月を超えて連続しないこと
  • ※3 月の時間外・休日労働が100時間未満となるように努める
  • ※4 長距離・泊付きの運行の場合は、運行を早く切り上げ、まとまった休息を取れるよう例外を規定
■バス運転者の改善基準告示(参考1)
  現行 見直し後
1年の
拘束時間
3,380時間 原則3,300時間
4週平均1週
1カ月の
拘束時間
【4週平均1週間】
原則65時間[月換算281時間]
/最大71.5時間[月換算309時間]
【1カ月の拘束時間】
原則281時間/最大294時間
(※1、2)
1日の
休息時間
継続8時間 継続11時間を基本とし、9時間下限
  • ※1 281時間を超える月が4カ月を超えて連続しないこと
  • ※2 4週平均1週の拘束時間も同水準で存置。1カ月と選択可

これらに対応するためには、従業員の労働時間の正確な把握が欠かせない。厚生労働省が2017年1月に策定した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(参考2)によれば、勤怠管理は自己申告制による不適正な運用ではなく、原則的にタイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等、客観的な記録にもとづいて、行うことを求めている。これにより過重な長時間労働や割増賃金の未払いといった問題を防ぐ狙い。おのずと勤怠管理をシステム化して、リアルタイムに状況を把握しながら、労働時間の抑制に努める必要がある。

自動車運転者のために企業や消費者ができること

2024年4月以降の時間外労働の上限規制の適用により、労働環境の改善が期待される一方で、別の問題も生じる。いずれの自動車運転者も人手不足が顕著。少子高齢化による労働者人口の減少と担い手の不足が相まって、トラック運転者の有効求人倍率は2.26倍、バス運転者は同1.96倍、タクシー・ハイヤー運転者に至っては同4.68倍にも上る(参考3)。運転者1人あたりの労働時間の短縮が求められる上限規制によって、なお一層の人手不足に拍車がかかり、輸送力の低下が懸念される。これにより、これまでのサービスを維持できなくなる可能性が高く、これをいわゆる「2024年問題」という。中でも、トラック運転者の属する物流業や運送業で生じる「2024年問題」は企業や消費者にとって、もっとも身近な問題であろう。

この問題に向けて、荷主となる企業は、異なる企業間で共同配送をしたり、配送回数を減らしたりするなどで効率化を図る。また、厚生労働省はトラック運転者の労働時間削減を実現するために、消費者に対して以下のことを呼び掛けている(参考4)。

▽宅配便の受け取りについて
  • ・再配達を減らそう
  • ・宅配便の回数を減らそう
  • ・宅配便のサービス内容の見直しにご理解、ご協力を
▽引っ越しについて
  • ・早めに依頼しよう
  • ・混雑時期(3月中旬~4月上旬)を避けよう
  • ・土日や祝祭日を避けて、平日を選ぼう
▽安全運転に向けて
  • ・大型車の駐車スペースにマイカーを駐車しない
  • ・貨物車用パーキングにできるだけマイカーを駐車しない

企業の取り組みや消費者の心がけの積み重ねが自動車運転者の健康や安全につながっていく。

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