働き方改革コラム

病院Vol.02
医療機関の時間外労働時間の「特例水準」って何?

2022/10/19

所属するすべての医師の時間外労働時間が年960時間を超えなければ「A水準」
約4割の病院勤務医は年960時間を超えているという現実

医師の時間外労働時間

2024年4月から適用される医師の時間外労働の上限は原則、一般企業と同様に年360時間、月45時間、臨時的な必要がある場合に限り、36協定(時間外・休日労働に関する使用者と労働者間の協定)にもとづく時間外労働の上限が年960時間、月100時間未満まで認められる。この上限規制を「A水準」という。所属する医師がすべてA水準であるならば、特に手続きは不要。2024年4月からその医療機関には自動的にA水準が適用される。

その一方、年960時間を超えて時間外労働が必要な一部の医療機関では、年1,860時間を上限として、A水準を超える内容の36協定を結ぶことができる。厚生労働省が2020年7月に発表した「医師の勤務実態調査」(参考1)によれば、回答者の約4割は時間外労働時間が年960時間を超えているそう。全国の病院勤務医、約20万人のうち、約8万人が該当することになる。その現状や個々の医療機関の特性、地域性等を鑑みると、2024年4月の段階で一律にA水準を適用するのは難しい。そのため年1,860時間の時間外労働を可能にする「B水準」「連携B水準」「C水準」(以下、まとめて「特例水準」と呼ぶ)が設けられた。

▽B水準
3次救急医療機関や、救急車の受け入れが年1,000台以上などの要件を満たす2次救急医療機関、在宅医療で積極的な役割を担う医療機関などが該当する。
▽連携B水準
自院での上限は年960時間だが、副業・兼業先での労働時間を通算して上限を年1,860時間とするもの。医師の派遣を通じて、地域の医療提供体制の確保に必要な役割を担う医療機関が該当する。

「B水準」「連携B水準」は「地域医療確保暫定特例水準」とされ、2035年度末までに解消を目指すものだ。

▽C水準
「集中的技能向上水準」とされ、短期間に集中的な症例を経験することが必要である医師のために設けられた水準。対象によって「C-1」「C-2」に分類される。「C-1」は初期研修医や専門医資格を目指す専攻医、「C-2」は臨床に従事した期間が6年目以降で特定の高度な技能を習得するために長時間の修練が必要である医師を対象としている。

特例水準の適用を受けるためには第三者評価が必要
準備や審査、手続きなどを考慮すると2024年4月まで時間がない

これらの特例水準はA水準と異なり、自動的に医療機関に対して適用されるものではない。適用を受けるためには「医療機関勤務環境評価センター」による第三者評価を受けて、都道府県からの指定を得ることになる。同センターは評価業務を担う機関の総称で、厚生労働大臣が指定した組織を指す。2022年4月に日本医師会が同センターとして指定を受けた。

「医師の働き方改革の推進に関する検討会」(参考2)の資料によれば、特例水準の指定プロセスは以下のとおり。

特例水準の指定プロセス

2022年6月に厚生労働省が発表した「医師の働き方改革の施行に向けた準備状況調査」(参考3、2022年3~4月実施、回答数3,613病院)の結果によれば、副業・兼業先も含めた時間外・休日労働時間の把握状況において、「おおむね把握している」と回答した病院は39%、大学病院に至っては24%にとどまった。厚生労働省が「今回の調査では病院の準備状況等、総合的な評価は困難」との見解を示したほど。その後、大学病院に対して改めて同調査(参考4、2022年5~7月実施、回答数82病院・2,803診療科)を行い、把握状況が90%まで進んだことが分かったものの、それでも1割は把握できていない。2024年4月まであと約1年半の猶予があるが、特例水準の指定を受けるための準備や審査、手続きなどを考慮すると、実はあまり時間がないと言える。

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