働き方改革コラム

建設業
建設業でも始まる「時間外労働の上限規制」 労働環境改善は担い手不足解決につながる

2024/2/28

建設業でも始まる「時間外労働の上限規制」労働環境改善は担い手不足解決につながる

2019年4月から順次施行されている「働き方改革」は、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」等の社会的課題に対して、労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現するために推進するもの。「長時間労働の是正」「多様で柔軟な働き方の実現」「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」等を行い、労働者一人ひとりが、より良い将来の展望を持てることを目指している。

時間外労働の上限規制は罰則あり

「長時間労働の是正」については、2018年6月に成立した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(参考1、いわゆる「働き方改革関連法」)において以下の改正が行われた。

①時間外労働の上限規制(大企業は2019年4月~、中小企業は2020年4月~、一部の職種・業務は2024年4月~)
それまでは法律上、時間外労働の上限なし(行政指導のみ)。改正により36協定で定めることのできる時間外労働の上限が原則、月45時間、年360時間に。違反企業には罰則が課される。
②「勤務間インターバル制度」の導入促進(2019年4月~)
勤務終了後、翌日の出社までに一定時間以上の休息時間(インターバル)を確保。企業の努力義務。
③年次有給休暇の確実な取得(2019年4月~)
年5日間の取得を義務化。
④労働時間状況の客観的把握(2019年4月~)
裁量労働制が適用される人や管理監督者も対象に。
⑤「フレックスタイム制」の拡充(2019年4月~)
労働時間の清算期間の上限が1カ月から3カ月に。
⑥「高度プロフェッショナル制度」の導入(2019年4月~)
健康確保措置を前提として特定の対象労働者に対して労働基準法に定められた労働時間等を適用しない。
⑦月60時間超残業に対する割増賃金率の引き上げ(2023年4月~)
中小企業の割増賃金率を25%から50%へ。(大企業は以前から50%)

労働時間が長く休日が少ない建設業 法令を順守するためには勤怠管理のシステム化が必要

「時間外労働の上限規制」は、一部の職種や業務内容等によって適用まで5年の猶予が与えられた。「医業に従事する医師」「工作物の建設の事業(=建設業)」「自動車運転の業務」等に対して、それぞれ異なる、時間外労働の上限規制が2024年4月から適用される。これらの職種や業務内容はとりわけ長時間労働になりやすい。

建設業の総実労働時間(事業所規模5人以上、パートタイム労働者除く、2023年速報)は月平均で168.9時間、年換算で2026.8時間に及び、全産業の中でも建設業の同労働時間の長さは上位に位置する。全産業の年換算1960.8時間(月平均163.4時間)と比べると66時間も長い状況。労働時間の長さもさることながら、建設業は休日も少なく、月平均の出勤日数は20.4日で全産業の中で最も多い(参考2)。建設業に従事する労働者のうち、週休2日(4週8休以上)を確保できているのは、技術者で11.7%、技能者で11.0%という低水準であることからも、必然的に休日が少なくなるのであろう(参考3)。

2024年4月からは、建設業における時間外労働の上限は原則、月45時間、年360時間。特別条項付き36協定を結べば、年720時間まで可能になるが、「時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満」「時間外労働と休日労働の合計は、2~6カ月平均で80時間以内」「月45時間を超える時間外労働は年6回まで」のすべてを守る必要がある。違反した場合には罰則があり、使用者に6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される。

これまで時間外労働の上限がなかった建設業において、これらの法令を順守して、労働時間を抑制するには、従業員の労働時間の正確な把握が欠かせない。厚生労働省が2017年1月に策定した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(参考4)によれば、勤怠管理は自己申告制による不適正な運用ではなく、原則的にタイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等、客観的な記録にもとづいて、行うことを求めている。これにより過重な長時間労働や割増賃金の未払いといった問題を防ぐ狙い。おのずと勤怠管理をシステム化して、リアルタイムに状況を把握しながら、労働時間の抑制に努める必要がある。

高齢化が進む建設業において労働環境改善は担い手不足の解決につながる

また、建設業は担い手不足の問題も抱えている。2023年の建設業における就業者数は483万人。これは20年前と比べて20%超、減少している。そのうち、177万人が55歳以上であり、実に36.6%を占める。その一方、これからを担う29歳以下の若手は56万人程度、10%強しかいない。社会全体が少子高齢化といえども、全産業における29歳以下は16.7%なので、建設業の高齢化の進みが顕著であることがうかがえる(参考5)。労働時間や休日等の労働環境を改善することは、魅力向上のひとつになるので、担い手不足の解決にもつながるであろう。

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