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建設業における人事制度の設計ポイント3つを紹介!

2025/10/29

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建設業における人事制度の設計ポイント3つを紹介!

建設業界は、人手不足や新卒入職者の早期離職、技術者の高齢化など、人材に関するさまざまな課題を抱えている。こうした中、適切な人事制度の整備は、優秀な人材採用や定着を促進し、企業の業績向上にもつながる。

本記事では、建設業が抱える人材面における課題、人事制度の重要性や設計ポイントについて解説する。

(1)建設業の人事評価制度とは

建設業において、人事評価制度は、業績を向上させるために重要な仕組みである。適切な制度を導入し、従業員を公正に評価し、人材を効果的に活用することで、従業員それぞれのモチベーションや業務効率の向上につながる。結果として、企業全体の業績向上が期待できる。

ただし、建設業は以下のように業態が多岐にわたることが特徴である。

  • ‐総合建設業
  • ‐ハウスメーカー
  • ‐マンションデベロッパー
  • ‐工事業

そのため、業態の特性を踏まえ、各企業の業務内容や経営課題に適した制度を構築することが大切である。

(2)建設業界が抱える人材面の課題

建設業界が抱える人材面における課題には、若年層の参入減少による人手不足、新卒入職者の高い早期離職率、そしてベテラン技術者の高齢化が挙げられる。これらの課題が解決されなければ、プロジェクトの遅延や、品質低下につながる恐れがあり、早急な対応が求められる重要な課題である。

・若年層の参入減少による人手不足

国土交通省が公表している「建設労働需給調査結果」によると、建設技能労働者の過不足率は、近年、ほとんどの年度でプラスであり、慢性的な人手不足であることが示されている。また、一般社団法人日本建設業連合会によれば、建設業の就業者全体に占める29歳以下の割合は減少し、2024年は11.7%になった一方で、55歳以上は増加して36.7%に達した。全産業と比べて高齢化がとても深刻である。

これは、少子高齢化の影響で若年層の参入が減少した結果である。さらに、建設業に対する厳しい労働環境や、長時間労働といったイメージが若年層の参入を遠ざける要因の一つと言える。

実際、国土交通省によると、建設業の年間実労働時間は全産業の平均を上回っており、2021年度は346時間長く働いていることが示されている。ワーク・ライフ・バランスを重視する若年層にとって、建設業は働きやすい職場と感じにくく、採用が難しい状況である。

離職率が高い

2020年度に卒業した大卒者・高卒者の、建設業製造業における、早期離職率は以下のとおりである。

  建設業 製造業
高卒者の3年以内の離職率 42.5% 27.6%
大卒者の3年以内の離職率 30.1% 19.0%

建設業においては、大卒者と比べて、高卒者の3年以内の離職率が高い傾向にある。また、高卒者も大卒者も、製造業と比較して建設業の早期離職率が高いことが分かる。このように、建設業では新卒入職者の離職率が高い状況であり、定着促進が課題である。

・ベテラン技術者の高齢化

建設業界では、ベテラン技術者の高齢化が認められる。増加する技術者の退職に、若年層の採用や育成が間に合わず、技術伝達が難航している状況にある。

この問題に対して、国土交通省厚生労働省は連携し、施策を実施している。両省は、建設業が「地域の守り手」としての役目を果たすために、人材確保を緊急課題として位置づけている。「人材確保」「人材育成」「魅力ある職場づくり」に対する予算を確保し、特に若年層や女性の入職・定着を重視して取り組む方針である。

(3)人事制度の重要性

人事制度とは、企業が従業員を適切に管理・マネジメントするための体系的な仕組みや、規定全般を指す。人事制度は「等級制度」「評価制度」「報酬制度」を中心に「福利厚生制度」「教育・研修制度」「採用制度」「定年制度」「再雇用制度」などで構成される。

人事制度の導入・運用によって、次のような効果が期待できる。

  • ‐優秀な人材の採用
  • ‐従業員の定着率向上
  • ‐従業員の満足度向上
  • ‐従業員のスキルアップ
  • ‐従業員のモチベーション向上
  • ‐生産性の向上

これらに伴い、採用コストの削減や、企業の業績向上にもつながる。このように、人事制度は企業の成長と、従業員の満足度向上に寄与する重要な制度である。

(4)人事制度の設計ポイント3つ

人事制度の効果を発揮させるためには、適切な設計・導入・運用が必要である。建設業では、現場と人事部門との連携が不足しやすい。連携が不十分な状態で制度を導入すると、効果を発揮できないだけでなく、従業員の不信感や、モチベーション低下などを引き起こす恐れがある。

ここでは、人事制度を適切に導入するためのポイントを3つ解説する。

・制度の目的を明確化し、全社で取り組む

人事制度をスムーズに導入・運用するためには、制度の内容やメリット、目的を明確化し、従業員に十分に周知することが重要である。周知が不十分な状態では、従業員は不信感を持ち、制度が利用されなくなったり、期待される効果が得られにくくなったりする可能性があるだろう。

資料を配布するだけでなく、説明会を開催し、管理職と一般社員がともに制度について理解した上で、会社全体で取り組むことが成功のポイントである。

・評価基準の明確化

人事制度の導入・運用においては、評価基準を明確にしておく必要がある。基準が不明確な場合、従業員の不満感や不平等感を招く。これを避けるためには、評価項目を具体的に設定し、評価者によるばらつきを抑え、客観的に評価できる体制を整えることが重要である。

・フィードバックが重要

評価した結果を、従業員にフィードバックすることも重要なポイントである。フィードバックでは、目標達成度や課題を共有し、今後の行動目標などを話し合うことで、従業員との信頼関係を築き、成長をサポートする。

従業員が自分の評価や課題を把握することで、目標達成や、業務の効率化、モチベーションアップにつながる。

一方で、フィードバックが適切に実施されない場合、納得感や信頼感を得られず、従業員の成長や愛社精神が阻害されてしまうことがある。適切な評価・フィードバックの仕組みを整えることが非常に重要である。

(5)まとめ

建設業は、業態が多様であるため、人事評価制度は業態の特性を踏まえ、各企業の業務内容や経営課題に適した制度を構築することが重要である。建設業界は、人手不足、新卒入職者の離職、技術者の高齢化など、さまざまな人材面に関する課題を抱えている。

そのため、人事制度は、企業の成長を支え、従業員の満足度向上を向上させる重要な制度だと言える。人事制度設計は、目的の明確化と全社的な取り組み、評価基準の明確化、適切なフィードバックがポイントである。

人事制度の効果を発揮するためには、適切な設計・導入・運用が必要不可欠である。

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