建設業が作成すべき就業規則とは? 業種特性を考慮したポイントを解説
2025/11/12

建設業は、現場ごとの勤務形態や高い労働災害(労災)リスクなど、他業種と比べて特殊な労働環境を抱えている業界である。そのため、会社のルールとしての「就業規則」を整備する際には、一般的な内容に加え、業界特性を的確に反映した内容にする必要がある。
(1)建設業における就業規則とは
就業規則とは、雇用関係におけるルールが一方的にならないように定められている労働基準法などのルールを、具体的に会社内のルールに落とし込んだものを指す。建設業では、現場ごとの勤務形態など、他業種と比べて特殊な労働環境を抱えている業界であるため、それに合わせた内容の作成を求められる。
そもそも就業規則は、会社単位ではなく事業所単位で作成されるものである。従業員が常時10人以上いる事業所では、法律により就業規則の作成と管轄の労働基準監督署への届け出が義務づけられている。
この「10人以上」には正社員だけでなく、パートや契約社員などの非正規労働者も含まれる。10人未満の事業所に作成義務はないが、労働基準法は規模の大小を問わず、すべての企業に適用されるため、トラブル防止の観点からも就業規則を整備することが望ましい。
(2)建設業の就業規則を構成する3つの記載事項
建設業の就業規則は、従業員と会社が円滑に働くためのルールを体系的に示したものであり、主に3つの記載事項で構成されている。これらは法的に必須のものから、会社が任意に定めることが可能な内容まで幅広い。
ここでは、それぞれの記載事項の概要を説明する。
①絶対的記載事項
絶対的記載事項とは、すべての企業が必ず就業規則に盛り込まなければならない事項である。
労働時間・賃金・退職に関する事項は、絶対的記載事項に該当する。労働時間については、始業・終業時刻、休憩時間、休日、年次有給休暇の規定などを具体的に記載する必要がある。休日は「週1日」とだけ定めることもできるが、可能な限り曜日を特定することが望ましい。賃金の記載では、毎月支払う定期賃金の決定方法や支払い時期、締め切りなどを明示する。
なお、賞与などの臨時賃金は、相対的必要記載事項に含まれるため、ここには含まれない。退職に関しては、解雇事由、定年、契約満了など退職全般の事項を記載しなければならない。
特に解雇事由が就業規則に明記されていない場合、その理由での懲戒解雇は認められないため、注意が必要である。
②相対的必要記載事項
相対的必要記載事項とは、会社でルールとして定める場合に就業規則に記載しなければならない事項である。
具体的には、退職手当の適用範囲や計算方法、臨時賃金支払いに関する規定、食費や作業用品の規定、安全衛生管理、職業訓練、災害補償、表彰・制裁の基準などの項目が該当する。
建設業において特に重要なのは、安全衛生に関する規定である。安全衛生管理規定を作成し、従業員に順守させることで、労災の予防につながる。
厚生労働省や労働局が公開するモデル規定を参考にしつつ、自社の現場に合った内容を盛り込むのがよいだろう。
③任意的記載事項
任意的記載事項とは、法律上の記載義務はないものの、目的、適用範囲、採用手続きなど、会社が任意に記載できる事項のことである。
任意的記載事項には、会社の理念や目的、適用範囲、採用手続き、服務規律、用語の定義などが含まれる。
(3)建設業における就業規則の作成手順
建設業における就業規則の作成は、法令順守と現場の実態把握を両立させることが重要である。複雑かつ多様な労働環境に対応するため、段階的に、なおかつ計画的な手順を踏んで規則を整備する必要があるだろう。
ここでは、建設業における就業規則の具体的な作成手順を解説する。
・現行法規の確認と既存規則の見直し
就業規則作成に際しては、労働基準法のほか、就業規則に関連する現行の規制に準拠した就業規則を作成することが求められる。既存の就業規則を見直して、問題点、改善点を洗い出し、現場の実態に合った規則を検討する必要がある。
この過程では、従業員からの意見や現場の実態を反映させることが求められる。また、必要に応じて専門家の助言を取り入れるなど、実態に合った規則となるよう努める必要がある。
・従業員へのヒアリング
従業員や労働組合の意見を収集し、現場の声を取り入れることで、より従業員に寄り添った規則を作成することができる。現場の実情に合った就業規則は、結果的に従業員の納得感が向上し、円滑な運用につながるだろう。
また、ヒアリングは一度限りでなく定期的に行い、運用状況を継続的に確認することが望ましい。これにより、現場の変化や問題点を把握し、適切な改善を図ることが可能になる。
・新しい就業規則の草案作成
現行法規制や従業員の意見を集約し、具体的な規定を明記した就業規則の草案を作成する。草案には労働条件、勤務時間、休暇、懲戒処分など、必要な事項を具体的に記載することが求められる。草案作成後は社内の関係者によるレビューを実施し、内容の妥当性などを検証することが重要である。
・労働組合との協議
労使協議は、就業規則の承認に不可欠である。草案に対して労働組合と協議し、合意を得るプロセスが必要になる。この協議過程においては、透明性を確保し、互いにコミュニケーションを図りつつ、意見交換を活発に行うことが成功のカギを握る。そしてこの合意にもとづき、最終的な規則として決定するのである。
・建設業の特性を加味した定期的な見直し
建設業は法規制の変更による労働環境変化の影響を大きく受けるため、継続的なフィードバックと改善が重要である。常に最新の情報を反映し、企業と従業員双方の利益を守る必要がある。
これにより、労災の防止や働きやすい環境整備につながり、従業員の満足度や企業の生産性向上を促進することを期待できる。
(4)建設業の就業規則作成のポイント
建設業において就業規則を整備する際は、一般的な労務管理に加え、業界特有の事情を十分に考慮する必要がある。
労災のリスク、特殊な勤務形態、そして近年の法改正に対応するため、実態に合ったルールづくりが求められる。ここでは、就業規則作成の際に押さえておくべきポイントを解説する。
・労務管理上のトラブルを防ぐ
建設業は、現場集合などの特殊な出勤形態が多いため、欠勤・遅刻・早退などについて就業規則に具体的に明記することが重要である。これにより、従業員との間で認識のズレが生じることを防ぎ、トラブルの発生を未然に防止することが可能になる。
特殊な勤務形態に対応したルールを明記することで、日常的な労務トラブルを未然に防ぎ、現場の混乱を回避することにもつながるだろう。
・安全管理規定の明文化
建設業界は、高所作業や重機の操作など、危険を伴う業務が多く、労災事故が発生しやすい業種である。そのため、就業規則に事故予防ルールや、事故発生時の明確なルールを記載することが不可欠である。
現場のリスクを踏まえた安全管理のルールを明文化することで、労災の予防と対応力の強化を図ることができる。
・働き方改革関連法への対応
2024年4月から、建設業にも時間外労働の上限規制(原則月45時間・年360時間)が正式に適用された。これにより、従来の長時間労働体制を見直す必要が生じている。
法要件を満たしつつ、業容が後退しないようバランスに配慮した就業規則の作成が重要である。法改正の内容を反映した柔軟な就業規則を整備することで、法令順守と業務効率の両立を実現することが可能になるだろう。
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