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介護業界の人材不足はなぜ起こる? データで見る現状と原因、今すぐできる対策を解説

2026/10/14

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介護業界の人材不足はなぜ起こる? データで見る現状と原因、今すぐできる対策を解説

介護業界の人材不足は「慢性的な課題」として語られることが多いが、実際にどれほど深刻で、何が根本的な原因なのかを正確に把握できている人事労務担当者は多くないだろう。漠然と「低賃金だから」と捉えていると、対策の方向性を誤ることもある。

本記事では、公的機関のデータをもとに介護業界の人材不足の現状を整理した上で、その原因、国が進める対策、そして事業所が今すぐ取り組める解決策までを解説する。ぜひ、本記事を自社の人材確保・定着戦略の参考にしてほしい。

本記事のポイント

2040年度までに57万人の人材確保が必要

高齢化の進行により、介護業界の人材不足は今後さらに深刻化する見込みです。

人材不足の背景は賃金だけではない

少子高齢化に加え、人間関係や職場環境も離職を招く要因になっています。

定着率向上と業務効率化が重要

ICT活用や評価制度の整備など、職場でできる改善策の積み重ねが欠かせません。

(1)データで見る介護業界の人材不足の現状

「介護業界は人手不足」というのは広く知られた事実だが、その規模や地域差を具体的な数値で把握できている人は少ないだろう。ここでは、公的データをもとに人材不足の現状を整理する。

・2040年度に向けて約57万人の増員が必要

厚生労働省の推計によると、2022年度に約215万人であった介護職員は、2026年度には約240万人、2040年度には約272万人まで増やす必要があるとされている。

これは2022年度と比較して約57万人の増員が必要であり、年間で見ると2026年度までは毎年6万人規模、2040年度にかけては毎年2万人規模のペースで人材を確保し続けなければならない計算になる。高齢化のピークを迎える今後十数年が、人材確保において最も厳しい局面になると見込まれている。

・有効求人倍率の高さと都市部の深刻さ

厚生労働省の資料によると、2025年3月時点の介護職の有効求人倍率は全国平均で3.97倍と、全職種平均の1.16倍を大きく上回っており、とりわけ東京都は7.65倍と突出して高い水準にある。

公益財団法人介護労働安定センターの介護労働実態調査でも、従業員が不足していると回答した事業所は「大いに不足」「不足」「やや不足」を合わせると、全体で65.8%に上り、訪問介護に限ると8割を超える。人口が集中し高齢化も進む都市部ほど、人材確保の競争が激しくなっている実情がうかがえる。

(2)介護業界で人材不足が進む主な原因

人材不足の背景には、単一の原因ではなく、社会構造・処遇・職場環境が複雑に絡み合った複数の要因が存在する。ここでは、代表的な原因を整理する。

・少子高齢化による需要と供給のギャップ

介護業界の人材不足の根本には、少子高齢化という社会構造の変化がある。高齢者人口の増加により要介護者数は年々増加する一方、出生数や若年層人口の減少によって介護人材の供給が追いつかない状態が続いている。

要介護者が増え続ける一方で支え手が減っていくという構図が、他業種以上に深刻な人材不足を生む要因となっている。加えて、地方では若年層の都市部への流出も進んでおり、地域によっては担い手そのものの確保が一層難しくなっている点にも留意が必要である。

・給与水準の低さと社会的評価の課題

介護職は心身への負担が大きい仕事であるにもかかわらず、給与水準が見合っていないという指摘は根強い。厚生労働省の資料によると、介護職員の平均給与額は31.4万円(2025年)となっており、全産業平均と比べ、約8万円少ない。いわゆる「3K(きつい・汚い・危険)」というイメージと相まって、社会的評価の低さが新規就業者の減少や定着率の低下につながっているとされる。

・離職理由の実態は「人間関係」が上位

介護職の離職は低賃金が主な原因と捉えられがちだが、介護労働安定センターの調査では、介護関係の仕事を辞めた理由として最も多かったのは「職場の人間関係に問題があったため」(27.3%)であり、「収入が少なかったため」(15.7%)を上回っている。離職防止には処遇改善だけでなく、円滑なコミュニケーションや良好な人間関係を築ける職場環境づくりも重要である。

(3)介護業界の人材不足に対する国の対策

深刻な人材不足に対応するため、国もさまざまな施策を打ち出している。ここでは、代表的な国の取り組みを紹介する。

・処遇改善加算などの賃金対策

国は、介護職員の賃金水準を他産業と遜色(そんしょく)ない水準に引き上げることを目指し、経験・技能のある職員に重点をおいた処遇改善加算の拡充や、介護報酬改定を通じた賃金の底上げに取り組んできた。こうした施策により、介護職員の月額平均賃金は段階的に改善が進んでいるものの、依然として全産業平均との差は残っており、継続的な処遇改善が課題とされている。

・多様な人材の確保・育成と外国人材の受け入れ拡大

国は、未経験者向けの入門的研修や、修学資金の貸付制度による多様な人材の参入促進に加え、外国人材の受け入れ環境整備にも力を入れている。特定技能・技能実習・EPA・在留資格「介護」といった枠組みを通じた外国人介護士の受け入れは年々拡大しており、出入国在留管理庁の発表によれば、2025年12月時点での介護分野の特定技能外国人在留者数は67,871人に上っている。

(4)職場でできる人材不足解消の取り組み

国の施策を待つだけでなく、事業所が自ら取り組める対策も数多く存在する。ここでは、現場レベルで実践しやすい代表的な取り組みを紹介する。

・ICTや介護ロボットの導入による業務効率化

見守りセンサーや介護ロボット、記録業務のペーパーレス化といったICTの活用は、職員の身体的・精神的な負担を軽減し、離職防止につながる有効な手段である。

また、施設運営の工夫としてユニットケア(入居者10名程度を1つの単位として専任スタッフが担当する手法)を取り入れることで、少人数単位でのきめ細かなケアや職員間の連携強化につながる場合もある。導入には施設整備のコストがかかるものの、国や自治体の補助金制度を活用すれば負担を抑えながら段階的に取り組むことも可能である。

・評価制度の整備

介護人材の定着率向上には、職員の働きぶりや能力を適切に評価する仕組みづくりが重要である。評価基準やキャリアパスを明確にすることで、職員は将来の成長イメージを描きやすくなり、モチベーション向上や離職防止につながる。また、能力や成果を処遇へ反映する仕組みを整えることで、納得感のある職場環境を実現しやすくなる。

・相談しやすい職場環境の整備

介護労働安定センターの調査では、介護職が前職を辞めた理由として「職場の人間関係に問題があったため」が最も多く挙げられている。職員が悩みや不安を抱え込まないよう、相談窓口の設置や定期的な面談の実施など、相談しやすい環境を整えることが重要である。また、ハラスメント防止や職場内コミュニケーションの活性化に取り組むことで、人間関係を原因とする離職の防止が期待できる。

・外部人材の活用による業務改善の推進

「人手が足りず改善策に取り組む余裕がない」という場合には、外部の専門人材を活用したり、定型業務をアウトソーシングしたりすることで、まず現場の業務負荷を軽減する進め方も有効である。外部人材の活用によって生まれた時間的な余裕を、業務改善やICT・ロボット導入の検討に充てることで、人材の育成・確保と生産性向上を同時に進めやすくなる。

(5)介護業界の人材不足に関するよくある質問

Q1.人材不足対策は、何から着手すべきでしょうか?

まずは自施設の離職理由を把握することから始めましょう。介護労働安定センターの調査で最も多い離職理由は職場の人間関係ですが、施設ごとの事情は異なるので、すべての施設に当てはまるとは限りません。実際には夜勤負担やシフトの組み方、特定の部署に偏った負荷が主因になっているケースもあります。

退職者への面談記録の振り返りや職員アンケートを通じて、自施設の離職構造を可視化した上で優先順位をつけて対策を講じることが、限られた予算や時間を有効に活用する近道です。

Q2.処遇改善加算を取得すれば、賃金の課題は解決しますか?

処遇改善加算の取得は前提条件ですが、それだけでは十分とは言えません。処遇改善加算は職員への配分ルールを定めて確実に届ける必要があり、配分の考え方が職員に伝わっていなければ「上がった実感がない」という不満につながりかねません。

また、賃上げが定着に結びつくかは、評価基準が明確で、働きぶりが昇給や役職に反映される仕組みが整っているかに左右されます。処遇改善加算の取得に加え、配分の透明化や評価制度の整備にも取り組むことで、職員の納得感や定着率の向上が期待できます。

Q3.ICTや介護ロボットを導入すれば、人員を減らせますか?

人員削減を目的に導入すると、期待した効果は得にくいでしょう。ICTや介護ロボットの主な効果は、記録業務や見守りにかかる負担の軽減であり、直接的な人員削減ではなく、職員一人あたりの負荷を下げて離職を防ぐことにあります。

導入時には現場の職員が使い方を習得する期間が必要で、短期的にはむしろ負担が増える局面もあります。「まず負荷を軽減し、生まれた余裕を業務改善に充てる」という順序で捉えたほうが、現場の納得も得やすくなります。

(6)まとめ

介護業界の人材不足は、少子高齢化による構造的な需給ギャップに加え、給与水準や社会的評価、職場環境など複数の要因が重なって生じている。厚生労働省の推計では、2040年度に向けて約57万人の介護職員が新たに必要とされており、人材確保は今後ますます重要な経営課題になると考えられる。

また、離職の背景には賃金だけでなく人間関係の問題も存在しており、処遇改善と併せて職場環境の整備に取り組むことが欠かせない。国による処遇改善や外国人材受け入れ拡大といった施策も進められているが、事業所としてはICTや介護ロボットの活用、評価制度の整備、相談しやすい職場づくりなど、自ら取り組める対策を着実に進めることが重要である。

人材不足は一朝一夕で解決できる問題ではない。しかし、自施設の課題を把握し、定着率向上と業務効率化の両面から継続的に改善を重ねることで、安定した人材確保につなげることは十分可能である。まずは現状を正しく把握し、自施設に合った対策から着手していこう。

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