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不足するDX人材 そもそもDX人材とは何なのか?

2025/4/23

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不足するDX人材 そもそもDX人材とは何なのか?

(1)DX人材とは

DX(デジタルトランスフォーメーション)人材とは、企業や組織がデジタル技術を活用して業務プロセスやビジネスモデルを革新するために必要なスキルと知識を持つ人材のことを指す。具体的には、データ分析、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、クラウドコンピューティングなどの先端技術を駆使し、業務の効率化や新たな価値創造を実現する役割を担う。経済産業省によると、「DXリテラシー標準」においてすべてのビジネスパーソンが身につけるべき、DXの基礎的な知識やスキル、「DX推進スキル標準」において、DXを推進する専門性を持った人材の役割や習得すべきスキルを定義している。

DXリテラシー標準 DX推進スキル標準

(2)すべてのビジネスパーソンが身につけるべき知識やスキル

2024年7月に公開された「デジタルスキル標準 ver.1.2」の中のDXリテラシー標準において、すべてのビジネスパーソンが身につけるべき知識やスキルを以下のように定義している。

大項目 項目 学習のゴール
マインド・スタンス
【デザイン思考/アジャイルな働き方】顧客・ユーザへの共感/常識にとらわれない発想/反復的なアプローチ
【新たな価値を生み出す基礎としてのマインド・スタイル】変化への適応/コラボレーション/柔軟な意思決定/事実にもとづく判断
社会変化の中で新たな価値を生み出すために必要なマインド・スタンスを知り、自身の行動を振り返ることができる
Why
DXの背景)
社会の変化/顧客価値の変化/競争環境の変化 人々が重視する価値や社会・経済の環境がどのように変化しているか知っており、DXの重要性を理解している
What
DXで活用されるデータ・技術)
【データ】社会におけるデータ/データを読む、説明する/データを扱う/データによって判断する
【デジタル技術】AI/クラウド/ハードウェア・ソフトウェア/ネットワーク
DX推進の手段としてのデータやデジタル技術に関する最新の情報を知った上で、その発展の背景への知識を深めることができる
How
(データ・技術の利活用)
【活用事例・利用方法】データ・デジタル技術の活用事例/ツール利用
【留意点】セキュリティ/モラル/コンプライアンス
データ・デジタル技術の活用事例を理解し、その実現のための基本的なツールの利用方法を身につけた上で、留意点などを踏まえて実際に業務で利用できる
  • ※デジタルスキル標準 ver.1.2にもとづき作成

DXリテラシー標準は、働き手一人ひとりがDXに参画し、その成果を仕事や生活で役立てる上で必要となるマインド・スタンスや知識・スキルを示す、学びの指針として策定されている。「マインド・スタンス」を土台として、DXの重要性を理解するために必要な「Why」、ビジネスの場で活用されているデータやデジタル技術についての「What」、それらのデータやデジタル技術をどのように使うのかの「How」で構成されている。

(3)DXを推進する人材の役割とスキル

DXについての基礎的な知識やスキルを持った人材を育成する場合、自社のDXの方向性を示したり、自社にとって必要な人材を把握したりといった、いわばDXを推進できる人材の存在が不可欠である。推進する人材を欠いた状態で知識やスキルをひたすらに習得しても、会社のDXの実現には至らない。

DX推進スキル標準によれば、DXの推進において必要な人材は主に5つの類型に定義される。

類型 役割
ビジネス
アーキテクト
ビジネスや業務の変革の目的を設定した上で、関係者をコーディネートし、関係者間の協働関係の構築をリードしながら、目的実現に向けたプロセスの一貫した推進を通じて、目的を実現する人材 新規事業開発
既存事業の高度化
社内業務の高度化・効率化
デザイナー ビジネスの視点、顧客・ユーザの視点等を総合的にとらえ、製品・サービスの方針や開発のプロセスを策定し、それらに沿った製品・サービスのありかたのデザインを担う人材 サービスデザイナー
UX/UIデザイナー
グラフィックデザイナー
データ
サイエンティスト
データを活用した業務変革や新規ビジネスの実現に向けて、データを収集・解析する仕組みの設計・実装・運用を担う人材 データビジネスストラテジスト
データサイエンスプロフェッショナル
データエンジニア
ソフトウェア
エンジニア
デジタル技術を活用した製品・サービスを提供するためのシステムやソフトウェアの設計・実装・運用を担う人材 フロントエンドエンジニア
バックエンドエンジニア
クラウドエンジニア/SRE
フィジカルコンピューティングエンジニア
サイバー
セキュリティ
業務プロセスを支えるデジタル環境におけるサイバーセキュリティリスクの影響を抑制する対策を担う人材 サイバーセキュリティマネジャー
サイバーセキュリティエンジニア
  • ※デジタルスキル標準 ver.1.2にもとづき作成

(4)なぜDX人材が必要なのか?

現代のビジネス環境は急速に変化しており、企業は競争力を維持するためにデジタル技術の導入が不可欠となっている。経済産業省は、デジタル技術の進化により産業構造が変化し、企業が競争上の優位性を確立するためにはDXの実現が重要であると指摘している。そのためにもDX人材の育成は急務なのだが、とりわけDXを推進する人材の不足が顕著である。

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が発表した「DX動向2024」によれば、日本におけるDXを推進する人材の不足感はIPAが調査を開始した2021年度以降、年々増加し、2023年度は「大幅に不足している」が62.1%となり、人材不足が深刻化しているという。55.1%の企業が「過不足がない」と回答している米国(2022年度)とは歴然とした違いがある。

DX動向

このまま、DX人材の不足が続くと、以下のような問題を引き起こす可能性がある。

・競争力の低下
DX人材が不足すると、企業はデジタル技術を効果的に活用できず、競争力が低下する。特に、データ分析やAIを活用した意思決定が遅れ、迅速な市場対応が難しくなる。
・業務効率の低下
デジタル技術を導入することで業務の効率化が図れるが、DX人材が不足しているとその導入が遅れ、結果として業務効率が低下する。これにより、コストが増加し、企業の生産性が低下する可能性がある。
イノベーションの停滞
DX人材は新しいビジネスモデルやサービスの開発に重要な役割を果たす。人材が不足すると、イノベーションが停滞し、企業は市場での競争優位性を失うリスクがある。
・組織文化の変革の遅れ
DXは技術だけでなく、組織文化や業務プロセスの変革も伴う。DX人材が不足していると、これらの変革が進まず、企業全体のデジタル化が遅れる可能性がある。
・セキュリティリスクの増大
デジタル技術の導入にはセキュリティ対策が不可欠。DX人材が不足していると、適切なセキュリティ対策が講じられず、情報漏えいやサイバー攻撃のリスクが増大する。

これらの問題を解決するためには、DX人材の育成と確保が急務。企業は積極的に研修プログラムを導入し、DX推進のための環境整備を進める必要がある。

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