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日本の人事評価制度の変遷

2024/12/18

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日本の人事評価制度の変遷

(1)人事評価制度とは

人事評価制度とは、企業や組織が従業員の業績や能力を評価し、その結果をもとに昇進、昇給、配置転換などの人事決定を行う仕組みのこと。評価の基準や方法は企業によって異なるが、一般的には業績評価、能力評価、行動評価などが含まれる。人事評価制度は、従業員のモチベーション向上や組織の目標達成の寄与に重要なツールである。

人事評価制度の目的は、従業員のパフォーマンスを正確に把握し、適切なフィードバックを提供することである。これにより、従業員は自身の強みや改善点を理解し、自己成長を促進することができる。また、企業側も従業員の能力を最大限に引き出し、組織全体の生産性を向上させることができる。

また、人事評価制度は公正性と透明性を確保することが重要である。評価基準やプロセスを明確に定めることで、従業員は評価結果に対して納得感を持ちやすくなり、組織内の信頼関係が強化される。これにより、従業員のエンゲージメントが向上し、離職率の低下にも寄与する。

(2)戦後から高度経済成長期までの人事評価制度

第二次世界大戦が終結した1945年以降の日本では、経済復興とともに企業の成長が急速に進んだ。この時期の人事評価制度は、主に年功序列終身雇用を基盤としていた。年功序列とは、勤続年数に応じて昇進や昇給が行われる制度であり、終身雇用とは、従業員が定年まで同じ企業で働き続けることを前提とした雇用形態のことである。これらの制度は、従業員の安定した雇用を保証し、企業への忠誠心を高める効果があった。

高度経済成長期(1950年代半ばから1970年代前半にかけて)には、日本企業は急速な経済成長を背景に、労働力の確保と育成が重要な課題となった。そのためにも企業は、従業員の長期的な成長と企業の持続的な発展を目指す必要があった。年功序列は、従業員の経験と知識の蓄積を評価し、組織内でのキャリアパスを明確にする役割を果たし、終身雇用は、従業員に対する長期的な雇用保証を提供し、企業と従業員の間に強い信頼関係を築くことを可能にした。しかし、これらの制度は、経済環境の変化や企業の競争力強化の必要性に伴い、後に見直しが求められることとなる。

(3)オイルショックからバブル経済期の人事評価制度

1970年代、2度(1973年、1978年)のオイルショックにより、日本経済の高度経済成長期は終えんを迎えた。原油価格の上昇が日本国内のインフレーションを引き起こし、経済の停滞と相まってスタグフレーションの状態に陥った。この経済環境下において、企業は変化に柔軟に対応できる人事評価制度への転換が必要になった。職能資格制度の登場である。職能資格制度は従業員の職務遂行能力が評価基準になる。専門職務を定めず、人事異動により幅広い経験を積ませる。これによりゼネラリストを育成できるので、変化に対して、企業は柔軟に人事配置をできるようになる。

1980年代後半から1990年代初頭のバブル経済期は、日本経済が急成長したことで、企業の競争力が高まり、人材確保が最優先課題となった。企業は高い成長率を背景に、年功序列を維持しつつ、従業員の安定した雇用を保証。さらに職能資格制度を引き続き強化することで競争力の維持に努めた。

(4)バブル崩壊後の人事評価制度

1990年代初頭のバブル崩壊後、日本経済は長期的な不況に突入した。この時期の人事評価制度は、従来の年功序列終身雇用からの脱却が求められた。企業はコスト削減や効率化を図るため、リストラ早期退職制度を導入し、成果主義に舵を切った。その成果の評価手法として、多くの企業がMBO(目標管理制度)を導入するようになった。

MBOは、具体的な目標を設定して、その達成度を評価するため、結果で評価する成果主義に適していた。また、目標が明確に設定され、評価基準が透明化されることで、従業員の納得感を高め、モチベーションの向上につながることが期待された。

(5)2000年代以降の人事評価制度

バブル崩壊後、多くの企業が成果主義を導入したが、2000年代に入るとその弊害が顕在化。成果主義は、従業員の結果にもとづいて評価を行う制度であるため、短期的な成果を重視する傾向があった。これにより過度な競争が生じ、チームワークの低下や従業員のストレス増加といった問題を生じさせた。そのため、成果だけでなく、成果を達成するためのプロセスや行動も含めて評価する必要性が認識されるようになった。

評価手法としては360度評価(多面評価)やコンピテンシー評価などが挙げられる。360度評価は、従業員の多面的な評価を可能にし、個々の強みや改善点を明確にするために有効。多面的にフィードバックを得ることで、より公平でバランスの取れた評価が可能になる。コンピテンシー評価は、従業員の専門知識やスキル、行動特性(コンピテンシー)を評価し、組織の目標達成に貢献する人材を特定するために用いられる。従業員の成長や長期的な貢献を評価できるようになる。

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