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公正な採用選考とは何か? 採用選考で聞いてはいけないこと

2025/2/19

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公正な採用選考とは何か? 採用選考で聞いてはいけないこと

(1)採用選考の基本的な考え方

採用選考の基本的な考え方は、応募者の基本的人権を尊重し、適性・能力にもとづいた基準で行うことである。これは、日本国憲法第22条にもとづく「職業選択の自由」を保障するためのものであり、すべての国民が平等に職業を選択できる権利を持つことを意味する。

まず、採用選考においては、応募者の基本的人権を尊重することが最も重要である。これは、応募者がどのような背景を持っていても、公平に扱われるべきであるという考え方にもとづいている。具体的には、応募者の性別、年齢、国籍、宗教、障害の有無などに関係なく、平等に評価されるべきである。

次に、採用選考は応募者の適性・能力にもとづいて行われるべきである。これは、応募者がその職務を遂行するために必要なスキルや経験を持っているかどうかを評価することを意味する。例えば、応募者の学歴や職歴、専門知識などがその職務に適しているかどうかを判断することが重要である。

さらに、公正な採用選考を行うためには、応募者に広く門戸を開くことが求められる。これは、求人条件に合致するすべての人が応募できるようにすることであり、特定のグループや個人を排除しないことを意味する。例えば、求人広告を広く公開し、多様な応募者が応募できるようにすることが重要である。

最後に、採用選考においては、応募者の適性・能力に関係のない事項を評価基準に含めないことが重要である。例えば、応募者の家族構成や生活環境、宗教・信条などは、その職務を遂行するために必要な情報ではないため、これらの事項を評価基準に含めることは避けるべきである。

(2)採用選考時に配慮すべき事項

厚生労働省の公正採用選考特設サイトでは、配慮すべき事項として14事項を挙げている。

(a)本人に責任のない事項の把握
  • ・本籍・出生地に関すること(※1)
  • ・住宅状況に関すること
  • ・家族に関すること
  • ・生活環境・家庭環境などに関すること
(b)本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)の把握
  • ・宗教に関すること
  • ・人生観・生活信条などに関すること
  • ・思想に関すること
  • ・購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
  • ・支持政党に関すること
  • ・尊敬する人物に関すること
  • 労働組合(加入状況や活動歴など)、学生運動などの社会運動に関すること
(c)採用選考の方法
  • ・身元調査など(※2)の実施
  • ・合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施(※3)
  • ・本人の適性・能力に関係ない事項を含んだ応募書類の使用
  • ※1 「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることはこれに該当する。
  • ※2 「現住所の略図等」は、生活環境などを把握したり、身元調査につながる可能性がある。
  • ※3 採用選考時において合理的・客観的に必要性が認められない「健康診断書」を提出させることを意味する。

(3)面接時の不適切な質問例

採用選考における面接においては以下のような質問は、不適切な内容に該当する。

■本人に責任のない事項
・本籍地や出生地に関する質問
「あなたの出身地はどこですか?」「生まれてから、ずっと現住所に住んでいるのですか?」等
・家族構成や家族の職業に関する質問
「あなたには兄弟や姉妹がいますか?」「あなたのお父さんやお母さんは、どこの会社に勤めていますか?」「あなたの家族の年収はどれくらいですか?」等
令和5年度にハローワークで把握した不適切な質問の内訳
家族に関することを質問してしまうケースが最も多い。企業側は応募者の緊張をほぐす目的で聞いていることであっても、応募者は面接で聞かれるすべての事柄を採用基準になるものと考えているので、慎重に質問する必要がある。
・住居とその環境に関する質問
「あなたの住んでいる家は持ち家ですか?賃貸ですか?」「あなたの住んでいる地域は、どんな環境ですか?」等
■本来自由であるべき事項
・思想や宗教、信条に関する質問
「あなたの家族は、何を信仰していますか?」「あなたの信条としている言葉は何ですか?」「尊敬する人物を教えてください」「将来、どんな人になりたいと思いますか?」「あなたは、どんな本を愛読していますか?」等
・支持政党や政治的信条に関する質問
「あなたはどの政党を支持していますか?」「政治や政党に関心がありますか?」等

そのほか、「結婚や出産後も働き続けようと思っていますか?」のような男女雇用機会均等法に抵触する質問やセクシャルハラスメントや就活ハラスメントと受け取られるような質問も避ける必要がある。

(4)不適切な質問をしてしまうと……

職業安定法では、採用活動において、目的の達成に必要な範囲内で、応募者の個人情報を収集、保管、使用する必要があることが規定されている。違反するとハローワークがその企業に是正・指導を行い、是正・指導に応じなければ、改善命令を出す。改善命令に従わない場合は罰則(6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科される可能性がある。

(5)公正採用選考人権啓発推進員の選任

企業が公正な採用選考を実施するために、日本では「公正採用選考人権啓発推進員制度」がある。一定規模以上の事業所(常用従業員数が30人以上の事業所もしくは職業紹介事業や労働者派遣事業を行う事業所)において同推進員を選任することが推奨されている。

同推進員は、企業内での採用選考プロセスを監督し、公正な評価が行われるようにする。これは、応募者の基本的人権を尊重し、適性・能力にもとづいた評価を行うための重要な役割である。例えば、面接官に対して適切な質問の仕方や評価基準についての教育を行うことが求められる。

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