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障害者雇用促進法改正による2025年4月の施行内容とは?

2024/12/11

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障害者雇用促進法改正による2025年4月の施行内容とは?

(1)障害者雇用促進法とは

障害者雇用促進法とは、障害者の職業自立を促進し、雇用の安定を図ることを目的とした法律のこと。正式には「障害者の雇用の促進等に関する法律」という。障害者雇用促進法は、1960年に制定された「身体障害者雇用促進法」を前身とし、1987年に現在の名称に改められた。この法律は、障害者の雇用機会を確保し、職業生活の安定を図るための基本的な枠組みを提供している。

(2)障害者雇用促進法の規定内容

障害者雇用促進法においては、主に以下の内容が規定されている。

・雇用義務制度
一定規模以上の企業に対して、法定雇用率にもとづき障害者を雇用する義務を課す。
・差別の禁止
障害者に対する差別を禁止し、障害者が平等に働ける環境を整えることを求める。
・合理的配慮の提供義務
企業は、障害者が働きやすいように合理的な配慮を提供する義務がある。これには、職場環境の改善や業務内容の調整が含まれる。
・職業リハビリテーションの推進
障害者が職業生活において自立できるよう、職業リハビリテーションの推進を図る。これには、職業訓練や職業紹介などが含まれる。
障害者雇用調整金等の支給や障害者雇用納付金の徴収
常時雇用する労働者数が100人を超える企業が、法定雇用率を達成できなかった場合は障害者雇用納付金を徴収し、逆に達成した企業には障害者雇用調整金等を支給する。
障害者職業生活相談員の選任
5人以上の障害のある労働者を雇用する事業所は、厚生労働省で定める資格を有する労働者の中から障害者職業生活相談員を選任し、障害者の職業生活に関する相談や支援を行うことが義務づけられている。

(3)障害者雇用促進法の対象企業

常時雇用する労働者数が一定以上の規模の企業は、障害者雇用促進法で定める割合の障害者を雇用しなければならない。民間企業の場合、法定雇用率が2.5%。つまり、常時雇用する労働者数が40人以上の企業であれば、障害者を1人以上、雇用する必要がある。ただし、一部の業種においては除外率が設定されており、40人以上の企業であっても障害者を雇用しなくてもよい場合がある。

(4)2023、2024年に施行された主な改正内容

法定雇用率の引き上げに加えて、雇用率の対象となる障害者の範囲が拡大された。これにより、週10時間以上20時間未満で働く障害者も雇用率の計算対象に含まれるようになり、企業はより多様な働き方を提供する必要がある。

■2023年4月施行
障害者雇用調整金の支給額の引き上げ
1人あたり月額27,000円から29,000円に引き上げられた。
・精神障害者である短時間労働者に関する特例措置の要件緩和
週20時間以上30時間未満で働く精神障害者について、雇入れからの期間等に関係なく、雇用率上、1人として計算する。
■2024年4月施行
法定雇用率の引き上げ
民間企業の法定雇用率が2.3%から2.5%に引き上げられた。なお、2026年7月には2.7%への引き上げが予定されている。
・雇用率の対象となる障害者の拡大
週10時間以上20時間未満で働く障害者も雇用率の計算対象に含まれるようになった。重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者を1人につき0.5人として計算する。
障害者雇用調整金や報奨金の支給額の見直し
障害者雇用調整金は、支給対象人数が10人を超える場合、超過分への支給額を29,000円から23,000円に減額。報奨金については支給対象人数が35人を超える場合、超過分への支給額を21,000円から16,000円に減額する。2024年度の実績にもとづいて、2025年度の支給から反映される。
障害者雇用助成金の拡充、新設
障害者介助等助成金等の拡充と新たな助成金の新設が行われた。

(5)2025年4月施行の改正内容

2025年4月には、除外率制度の引き下げが行われる。除外率制度とは、特定の業種において障害者の雇用義務を軽減するための制度のこと。ノーマライゼーションの観点から、2002年の障害者雇用促進法の改正に伴い、除外率制度は2004年4月から廃止されたものの、経過措置として、除外率設定業種ごとに除外率を設定し、段階的に除外率を引き下げることとなった。

2025年4月には以下の業種において、除外率が一律10%引き下げられる。

除外率設定業種 除外率
非鉄金属第一次製錬・精製業・貨物運送取扱業(集配利用運送業を除く) 5%
建設業・鉄鋼業・道路貨物運送業・郵便業(信書便事業を含む) 10%
港湾運送業・警備業 15%
鉄道業・医療業・高等教育機関・介護老人保健施設・介護医療院 20%
林業(狩猟業を除く) 25%
金属鉱業・児童福祉事業 30%
特別支援学校(専ら視覚障害者に対する教育を行う学校を除く) 35%
石炭・亜炭鉱業 40%
道路旅客運送業・小学校 45%
幼稚園・幼保連携型認定こども園 50%
船員等による船舶運航等の事業 70%

法定雇用障害者数を算出において、除外率設定業種の場合は常用労働者数から除外率に相当する常用労働者数を除いた人数に法定雇用率を乗じる。例えば、常用労働者数が1,000人で建設業の場合、「(1,000人-1,000人×10%)×2.5%」で22人(小数点以下は切り捨て)になる。

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