人事
【2025年4月から完全義務化】
高年齢者雇用安定法/65歳までの継続雇用制度の経過措置が終了に
2025/1/15

(1)高年齢者雇用安定法とは
高年齢者雇用安定法(正式には「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」)は、高齢者の雇用機会を確保し、安定した職業生活を送るための法律のこと。この法律は、1971年に「中高年齢者雇用促進法」として制定され、1986年に現在の名称に改められた。企業が高齢者を積極的に雇用し、定年後も働き続けることができる環境を整えることを目的としている。具体的には、定年の引き上げ、継続雇用制度の導入、再就職支援などが含まれる。
この法律の背景には、日本の少子高齢化問題がある。1970年代初頭、日本は急速に高齢化が進行し始めていた。当時の高齢化率(65歳以上の人口の割合)は7%を超え、高齢化社会に突入。戦後のベビーブーム世代が中高年齢層に差し掛かり、労働市場における高齢者の割合が増加したことが要因だ。労働人口の減少に伴い、労働力不足の懸念から高齢者の労働力を活用することが経済の持続的成長に不可欠な要素となった。また、高齢者自身も、健康で働く意欲がある限り、社会に貢献し続けたいというニーズが高まっている。これに応える形で、高年齢者雇用安定法において企業と高齢者の双方にとって有益な環境を整えることが求められている。
(2)高年齢者雇用安定法の変遷
高年齢者雇用安定法は、1971年に制定されて以来、改正を重ねてきた。
施行年 | 内容 |
---|---|
1971年 | 中高年齢者雇用促進法を制定、当時は55歳定年が一般的 |
1986年 | 高年齢者雇用安定法に改称、60歳定年が努力義務に |
1998年 | 60歳未満の定年が原則禁止 |
2001年 | 65歳までの雇用確保措置が努力義務に |
2006年 | 65歳までの雇用確保措置が努力義務から義務に |
2013年 | 継続雇用制度の対象を希望者全員にすることを義務化 |
2021年 | 70歳までの就業機会確保が努力義務に |
初期の段階では、定年の引き上げや再就職支援が主な焦点であったが、2000年代に入ると、65歳までの雇用確保措置が努力義務となり、2006年には義務化に。より具体的な施策が求められるようになった。
雇用確保措置とは企業が以下のいずれかを実施することを指す。
- ・定年年齢の引き上げ
- 定年を定めている企業は、定年年齢を65歳に引き上げる。
- ・継続雇用制度の導入
- 再雇用制度や勤務延長制度により65歳までの雇用を確保する。(定年自体はそのまま)
- ・定年の廃止
- 定年制度を廃止する。年齢を理由とした労働契約の終了を行わない。
- ※参考:[厚生労働省]高年齢者の雇用
2006年施行の改正では、義務化されたものの、企業は労使協定にもとづいて継続雇用制度の対象者を限定することができた。それが、2013年施行の改正で希望者全員を対象とすることを義務づけ、さらなる高齢者の雇用安定を図った。
ただし、新たな制度への対応、労使協定の調整、年金受給開始年齢との調整が必要なことから、2013年4月1日以前に労使協定で継続雇用制度の対象者を限定していた企業は、老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢以上の者について継続雇用制度の対象者を限定することができるよう、経過措置が認められた。限定できる対象は、以下のとおり。
- ・平成25(2013)年4月1日から平成28(2016)年3月31日までの間で61歳以上の者
- ・平成28(2016)年4月1日から平成31(2019)年3月31日までの間で62歳以上の者
- ・平成31(2019)年4月1日から令和4(2022)年3月31日までの間で63歳以上の者
- ・令和4(2022)年4月1日から令和7(2025)年3月31日までの間で64歳以上の者
(3)2025年3月末で経過措置が終了
経過措置は2025年3月末まで適用される。経過措置の終了により、2025年4月1日からは、65歳までの雇用確保措置が完全に義務化される。これにより、すべての企業は65歳までの雇用を確保するための具体的な措置を実施する必要がある。これにより、高齢者が安心して働き続けることができる環境が整うことが期待される。
さらに、2021年施行の改正では、65歳から70歳までの就業機会を確保するために、就業確保措置として以下のいずれかの措置を実施することを努力義務とした。
- ①70歳までの定年引き上げ
- ②定年制の廃止
- ③70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
(特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む) - ④70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
- ⑤70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
- a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
- b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
70歳までの就業確保に向けた努力義務は、企業にとって新たな挑戦となる。高齢者が健康で働き続けるためには、職場環境の整備や柔軟な働き方の導入が不可欠。例えば、テレワークやフレックスタイム制度の導入により、高齢者が自分のペースで働くことができる環境を提供することが求められる。また、健康管理や職業訓練の充実も重要であり、高齢者が安心して働き続けるための支援が必要である。
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