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運送業の人材不足を外国人運転手でカバー! 企業が対応すべき5つのこと

2026/4/15

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運送業の人材不足を外国人運転手でカバー! 企業が対応すべき5つのこと

国内の運送業界では、運転手の高齢化と人口構造の変化が進む中、人材確保を巡る競争が年々激しさを増している。こうした背景を受けて、2024年に「自動車運送業分野」が特定技能制度の対象に加えられたことで、外国人運転手の受け入れが可能になった。

本記事では、外国人運転手の受け入れを検討している運送業者が押さえておくべきポイントや、受け入れ体制を整えるための具体的な要件、実際の運用で注意すべきことなどを詳しく解説する。

(1)日本は生産年齢人口が減少傾向に

日本の労働力構造を見ていくと、働き手とされる15~64歳の「生産年齢人口」が今後も減少していくことがほぼ確実である。この傾向は運送業界にも直接的な影響を及ぼしており、厚生労働省の統計によると、トラック運転手の有効求人倍率は2.37倍(2024年度)。ほかの産業(1.14倍)と比べて高い水準が続いている。

また、トラック運転手の年間労働時間は、全産業平均が2,052時間であるのに対し、大型トラックで2,484時間、中型や小型トラックで2,424時間と長時間労働の傾向にある。また、賃金も全産業平均を下回っており、若年層や他業種からの人材流入が進みにくい状況だ。

(2)特定技能制度の「自動車運送業」の基本を押さえる

特定技能制度における自動車運送業分野では、バス・タクシー・トラックの3業種が対象になっている。トラックの場合、運ぶための走行(運行業務)だけでなく、荷物の積み下ろしといった荷役業務も含まれるのが特徴である。

業種によって求められる要件に違いがあり、運転免許の種類や評価試験の内容、日本語能力の水準、事業者が満たすべき条件が定められている。トラックの場合、受け入れ対象は第一種免許に加えて特定技能評価試験の合格が必要で、日本語能力試験(JLPT)はN4水準(基本的な日本語を理解することができる)が求められる。さらに事業者には「働きやすい職場認証制度」等の認証取得要件が課される。

また、運転免許を取得するための準備期間として、在留資格「特定活動」のビザが認められている点も重要である。

(3)特定技能外国人に求められること

外国人運転手を受け入れるにあたって、制度的には運転技能・運転免許・日本語能力という3つの要素が必要である。これらを満たしていなければ、特定技能制度を活用できないので、企業側は事前にそれぞれの基準をよく把握しておかなければならない。

ここでは、特定技能外国人に課される主な要件を整理し、それぞれについて深掘りしていく。

・自動車運送業分野特定技能1号の取得

特定技能1号を取得するためには、業務に応じた学科および実技の評価試験に合格しなければならない。特定技能評価試験はトラック・タクシー・バスの各区分に対応しており、運行前後の点検や安全運転、乗務記録の作成といった業務遂行能力を問う内容になっている。

トラックの場合、荷崩れ防止といった荷役業務も含まれており、運行技能だけでなく荷物を扱う能力も評価対象になる。

・対象となる運転免許証の取得

特定技能1号で運行業務に就くためには、日本国内の運転免許証が必須である。外国人が日本国内の免許を取得する方法としては、外国の運転免許を保有している場合は、翻訳書類などを整えた上で切り替え手続きを行う、もしくは国内の教習所で新たに取得を目指す、のいずれかになる。

トラック区分では第一種免許、タクシー・バス区分では第二種免許が必要だ。学科試験については20言語から選択できるが、実技試験は日本語で行われるため、状況に応じて通訳による支援が認められるケースもある。

・生活や業務に必要な日本語能力

特定技能制度では、業務を遂行する際や、日常生活を送るのに支障が出ないレベルの日本語能力が求められる。

トラック区分の場合、JLPTのN4またはJFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト)の合格が基準とされており、タクシー・バス区分ではより高い日本語能力試験を示すためにJLPTのN3(日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる)が必要である。

(4)特定技能外国人を企業が受け入れるための要件

外国人運転手を含む特定技能外国人を採用するためには、制度上の条件を満たした事業者でなければならない。特定技能制度では、法的要件や安全研修、認証取得といった複数の基準が定められており、それらを満たすことで受け入れが可能になる。

ここでは、企業が特定技能外国人を受け入れるために必要な5つの条件を整理し、実務上で注意すべき点について説明する。

・自動車運送事業を行う事業者である

受け入れ企業は、道路運送法に定められた「自動車運送業者」でなければならない。これは、貨物運送事業や旅客運送事業を営む正式な許可事業者であることを意味する。

無許可で事業を行っている事業者や、委託のみを行う仲介業者は制度の対象外なので注意が必要だ。

・道路旅客運送業もしくは道路貨物運送業にあてはまる

特定技能運転手の受け入れ対象となるのは、日本標準産業分類で「道路旅客運送業」または「道路貨物運送業」に区分される企業である。これは統計基準にもとづいて運送サービスを提供する法人を明確にするものであり、物流・倉庫業や人材派遣業と区別されている。

上記の区分に該当していない企業が外国人の受け入れを進めようとすると、在留資格の審査段階で不備と判断される可能性があるため注意が必要だ。

・特定技能協議会への加入

受け入れ企業には、国土交通省が設置している「自動車運送業分野特定技能協議会」への加入が義務づけられている。加入手続きは、被雇用者が在留資格を申請するまでに完了していなければならず、申請後の追加入会は認められない。

協議会に加入しないまま外国人の採用を進めてしまうと在留資格が許可されないため、必ず加入の手続きを完了させることが求められる。

・初任運転者研修の実施

外国人運転手を採用した企業は、乗務を開始する前に「初任運転者研修」を必ず実施しなくてはならない。国土交通省の指針では、座学15時間以上、実技20時間以上の合計35時間を超える研修を行い、その教育記録を3年間保存する義務がある。

研修内容には、安全運転や法令順守、貨物の積み付けなどが含まれているが、未実施や指導不足が判明した場合には、車両使用停止といった行政処分が科されることもあるため注意が必要だ。

・「働きやすい職場認証制度」の認証取得

受け入れ企業は、「働きやすい職場認証制度」(正式には「運転者職場環境良好度認証制度」という)を取得していることが必要である。

この認証は、一般財団法人日本海事協会が実施しており、労働時間の適正化や休暇取得、福利厚生安全教育の実施状況などを基準に審査する。

(5)外国人運転手を受け入れる企業が注意すべきこと

制度の要件を満たしても、実際の運用段階ではトラブルが起こりやすい部分も存在する。

ここでは、外国人運転手を受け入れる際に注意すべき3つのポイントを掘り下げ、運用上の失敗リスクを低減させる方法について説明する。

・言葉の壁

日本語能力の基準を満たしていても、作業手順書や指示文書に含まれる漢字や、業界特有の用語を理解できないケースは少なくない。このようなギャップを埋めるために、ルビ振りやイラスト・写真付きの手順書などの視覚的な素材を活用するのが有効だ。

・研修での理解度をきちんと把握する

一方的に説明するだけでは、受講者が本当に理解できているかを判断できない。研修を進めるたびに理解度を確認し、質問しやすい雰囲気づくりを目指すべきである。

また、文化的な差異や時間に対する感覚、安全意識の違いにも配慮しながら、段階的な指導を行うことが重要だ。

・価値観や文化の違いを理解する

外国人運転手の母国と日本とでは、働く際の価値観やビジネスに対する考え方が異なっていて当然である。例えば、時間厳守の意識や安全に対する感覚、上下関係の認識などは、異文化の背景を反映しやすいため、しばしばトラブルの原因になる。

このような差異を理解した上で、日本の職場で期待されるマナーや行動規範を丁寧に伝えることが大切だ。相手のバックグラウンドを尊重しつつ、業務基準でのすり合わせを行う姿勢が、信頼関係の構築に役立つだろう。

(6)運送業の外国人運転手に関するよくある質問

Q1.外国人運転手は日本でトラック運転手として働くことができますか?

はい、可能です。2024年から「自動車運送業分野」が特定技能制度の対象になり、一定の条件を満たした外国人はトラック運転手として働くことができるようになりました。具体的には、特定技能評価試験への合格、日本の運転免許証の取得、JLPTのN4相当以上などの要件を満たす必要があります。

Q2.外国人運転手を採用するために企業が満たす条件は何ですか?

企業が外国人運転手を受け入れるためには、いくつかの条件があります。主なものとして、自動車運送事業者であること、日本標準産業分類の道路貨物運送業または道路旅客運送業に該当すること、特定技能協議会への加入、初任運転者研修の実施、働きやすい職場認証制度の取得などが求められます。

Q3.外国人運転手を受け入れる際に注意すべきポイントはありますか?

外国人運転手を受け入れる際には、言語や文化の違いによるコミュニケーションのギャップに注意する必要があります。作業手順書にルビやイラストを入れる、研修で理解度を確認するなど、分かりやすい指導体制を整えることが重要です。また、日本の職場文化や安全意識についても丁寧に共有することで、トラブルの防止につながります。

(7)まとめ

近年では、国内の運転手不足を背景として、特定技能制度を活用した外国人運転手の受け入れが少しずつ広がってきている。

企業が外国人運転手の採用を進めていく際には、制度上の要件を正しく理解するだけでは十分ではなく、研修や言語支援といった現場での運用体制づくりが欠かせない。

文化や価値観の違いにもしっかりと配慮し、長期的に安心して働ける環境をつくることが、持続的な成長へとつながる。

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