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運送業DXに求められる人手不足と需要拡大への対応

2026/4/30

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運送業DXに求められる人手不足と需要拡大への対応

さまざまな業界でDXの取り組みが活発になっている。DXとは、デジタル技術を活用し、業務プロセスや組織、企業文化、提供するサービスなどを変革することを指す。運送業においても、政府のDX推進支援策を背景に、DXの早急な導入が求められている。

本記事では、運送業DXの重要性や非効率な業務課題を整理するとともに、具体的な施策や導入の進め方について解説する。

(1)運送業DXの重要性とは

運送業では、需要の増加、人材確保の難しさ、時間外労働の上限規制、環境問題への配慮といった点から、DXの早急な導入が必要とされている。

・EC市場の成長に伴い高まる運送業の需要

宅配便は、スマートフォンの普及やEC市場の成長により、取り扱い件数が増加している。総務省によると、ネットショッピングを利用する世帯は増加傾向にある。

2024年に利用した世帯(2人以上)の割合は55.3%にのぼり、2002年の調査開始以来、過去最高を更新した。また、国土交通省が公表している「宅配便取扱個数」も、確認できる1985年度以降、増加傾向にあり、直近の公表データでは過去最高水準となっている。

このように、ドライバー不足が深刻化する一方で需要は拡大しており、時間指定や再配達、当日配送といった多様なニーズも、ドライバーの負担を大きくしている。

・人材確保の難しさ

日本は、働く女性や高齢者が増えたことで、15歳以上の「仕事をしている人」と「仕事を探している人」を合わせた「労働力人口」(2025年平均)は前年と比べて、48万人(男性5万人、女性43万人)増加している。

しかし、運送業界の人手不足は深刻化している。その要因として、労働条件の厳しさ(低賃金・長時間労働)や、若手の採用難、女性ドライバーの比率が依然として低いことなどが挙げられる。

厚生労働省によると、2024年度の有効求人倍率は、全産業が1.14倍であるのに対し、貨物自動車運転手は2.37倍となっている。求人に対して貨物自動車運転手が少なく、人材確保が激化している状況がうかがえる。

働き方改革による時間外労働の上限規制

ドライバー不足は以前から課題であり、ドライバーの長時間労働にもつながっていた。働き方改革関連法により、2024年4月からドライバーにも時間外労働の上限規制が適用され、上限を超えた場合には罰則が科される。

時間外労働は、原則として月45時間以内・年360時間以内である。特別条項付き36協定を締結する場合でも、年960時間以内と定められている。さらに、拘束時間休息時間などの基準も改正された。

これにより、ドライバーの長時間労働を抑制できる一方で、人手不足の深刻化が課題となっており「2024年問題」と呼ばれている。ドライバーの長時間労働に依存しない仕組みづくりが求められている。

・環境問題への配慮

環境問題は、世界的に深刻な課題であり、企業には社会的責任として持続可能な社会を実現するための取り組みが求められている。運輸部門は、日本全体のCO2排出量の中でも大きな割合を占めており、環境対策における重要な分野とされている。

CO2削減やカーボンニュートラルの実現に向けて、次のような取り組みが求められる。

  • ‐EV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)トラックへの移行
  • ‐モーダルシフト(自動車による貨物輸送を環境負荷の小さい鉄道や船舶の利用に転換すること)の導入
  • ‐トラックの積載率向上
  • ‐エコドライブの実践
  • ‐運営施設の省エネ対策や再生可能エネルギーの導入

特に、トラック輸送は環境への負荷が大きく、こうした幅広い施策を併用することで、DXによる業務効率化と環境問題への対応を両立する取り組みが注目を集めている。

(2)運送業における非効率な業務課題

運送業では、現在でも紙ベースで行われている業務が多く存在する。しかし、デジタル化やシステムの導入によって、効率化を図れる業務も少なくない。

ここでは、出退勤・点呼管理、社員や車両に関する情報管理、配送手続きについて解説する。

・紙ベースの出退勤や点呼の管理

運送業は、夜勤や直行直帰など勤務形態が多様であり、休憩時間や待機時間、走行距離などの管理も複雑になりやすい。出退勤や点呼を紙に手書きで記録する方法では、記入漏れや誤りが発生しやすく、集計や確認などの事務処理にも大きな負担がかかる。

デジタル化やシステムの導入によって、ヒューマンエラーの防止や業務効率化を図れるだけでなく、書類の保管スペースを削減して有効に活用できるようになる。

・社員や車両に関する情報管理

社員や車両に関する情報管理は、紙ベースで行うと記入漏れや誤りが生じやすく、情報共有も遅れやすい。そのため、これらの情報をデジタル化するメリットは大きい。

デジタル化する社員情報には以下のようなものがある。

  • ‐社員台帳
  • 健康診断や適性診断のスケジュール
  • ‐指導記録

車両管理は、事故防止や法令順守、コスト削減のために欠かせない。以下のような情報をデジタル化し、一元管理することで、リアルタイムで共有できるようになる。

  • ‐車両の基本的な情報
  • ‐保険に関する情報
  • ‐整備や点検に関する情報
  • ‐故障や事故に関する情報

また、情報の更新や検索が容易になることで、管理業務の効率化も進む。さらに、車両管理システムを導入すれば、保険更新や点検期日などをアラート通知によってあらかじめ把握できるようになるので、管理の抜け漏れを防止できる。

・紙ベースの配送手続き

送り状や伝票など、配送に関する手続きは、現在も多くの場合に紙ベースで行われている。紙による管理は、作業に手間がかかる上、紛失のリスクもある。システムを導入してデジタル化を進めることで、業務の効率化やコスト削減が期待できる。

(3)運送業DXで実施される主な施策

運送業DXでは、業務のデジタル化や効率化を目的として、さまざまな施策が実施されている。自社の課題に応じて適切な領域から導入を進めることが重要である。

代表的な施策は以下のとおりである。

  • ・配車の最適化(AIによるルート・積載効率の向上)
  • ・動態管理(GPSによる車両位置のリアルタイム把握)
  • 勤怠管理労務管理デジタル化
  • ・車両管理(点検・整備・保険情報の一元管理)
  • ・伝票や請求書の電子化によるペーパーレス化

これらの施策を組み合わせて導入することで、業務効率の向上だけでなく、コスト削減やサービス品質の向上にもつながる。

(4)運送業DXはどこから始めるべきか

運送業DXは、やみくもにシステムを導入するのではなく、自社の課題に応じて優先順位をつけて進めることが重要である。すべてを一度に変革しようとすると、現場負担やコストが大きくなり、かえって定着しにくくなる可能性がある。

そのため、現状の業務を整理しながら、効果が見えやすい領域から段階的に取り組むことが成功のポイントになる。

・現状の業務の可視化と優先順位の整理

はじめに、紙やExcelで管理している業務や属人化している業務を洗い出し、どこに非効率があるのかを明確にすることが重要である。「手間がかかる」「ミスが多い」「情報共有が遅い」といった観点で整理すると、改善すべきポイントが見えてくる。

例えば、出退勤管理や配車業務、伝票処理など、日常的に発生する業務の中に非効率が潜んでいるケースは多い。こうした業務は改善効果も大きいため、優先的にDXを進める対象となる。

・小規模導入から段階的に展開する

DXは最初から全社的に導入するのではなく、一部の拠点や業務に限定して試験的に導入することが望ましい。これにより、実際の運用に適しているかを確認しながら進めることができる。

また、現場の意見を取り入れながら調整することで、「使いにくい」「業務に合わない」といった問題を未然に防ぐことにもつながる。段階的に導入範囲を広げていくことで、リスクを抑えつつスムーズな定着が期待できる。

・導入後の運用と効果測定を行う

DXは導入して終わりではなく、その後の運用と改善が重要である。導入したシステムが現場で活用されているかを確認し、必要に応じて運用ルールの見直しや追加の教育を行うことが求められる。

また、1件あたりの配送コストやドライバーの残業時間、稼働率などの指標をもとに効果を測定することで、DXの成果を可視化できる。可視化したデータを活用して改善を繰り返すことで、より高い効率化や生産性向上につながる。

(5)運送業のDXに関するよくある質問

Q1.運送業DXとは具体的に何をするのですか?

運送業DXとは、デジタル技術を活用して業務を効率化・最適化する取り組みのことです。具体的には、点呼や出退勤のデジタル化、配車・運行管理システムの導入、伝票等の電子化によるペーパーレス化などが挙げられます。これにより、人手不足の解消や業務負担の軽減につながります。

Q2.運送業DXが必要とされる理由は何ですか?

主な理由は、人手不足の深刻化と物流需要の増加です。加えて、2024年の時間外労働の上限規制(いわゆる2024年問題)により、従来の長時間労働に依存した運営が難しくなりました。そのため、業務効率化や省人化を実現するDXの導入が急務になったのです。

Q3.運送業DXを導入するとどんな効果がありますか?

DXの導入により、業務効率化・コスト削減・ミス防止といった効果が期待できます。また、ドライバーの労働時間の適正管理や、情報共有の迅速化にもつながり、結果として人手不足対策やサービス品質の向上にも寄与します。

(6)まとめ

DXとは、デジタル技術を活用して、業務プロセス、組織、企業文化、提供するサービスなどを改革することを指す。運送業では需要増加、人材確保の難しさ、時間外労働の上限規制、環境問題に対する配慮といった背景から、DXの導入が必要とされている。

運送業には、現在でも紙ベースで行われている業務が多く存在しているが、デジタル化やシステムを導入することで、効率化できる業務が少なくない。例えば、出退勤管理や点呼管理、社員や車両に関する情報管理、配送手続きなどである。

実際にさまざまな企業が、点呼支援ロボットや、輸送業務支援ソリューション、電子マニュアルツールなどのシステムを導入し、運送業DXに取り組んでいる。

DXは単なるデジタル化ではなく、データを活用した業務改革やビジネスモデルの変革まで含まれる点が重要である。

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