運送業の人材獲得のカギは福利厚生! 企業ができる取り組みを紹介
2026/4/8

生産年齢人口(15~64歳)の減少が続く日本において、運送業も例外なく人材の確保が難しくなっている。特に、運送業の就業者は40代以上の層が多く、全産業と比べても高齢化が顕著である。若手を含む人材を確保するためには、福利厚生を充実させて業界の魅力を高めていくことが急務である。
本記事では、運送業が人手不足になっている理由や、人材確保のために企業独自で導入したい福利厚生について紹介する。中でもワーク・ライフ・バランスを重視する求職者や、従業員へのアピールとなるサポートについて解説する。
(1)運送業界が直面する人手不足の背景
ここ数年、人手不足に悩む業界は多く、運送業界もその一つである。少子高齢化を含めて人手不足の理由はさまざまであるが、中には運送業界ならではの事情もある。ここでは、運送業界が直面している人手不足の背景について3つの理由を紹介する。
・生産年齢人口の減少に伴う若手人材の獲得難
総務省統計局の労働力調査によれば、ここ数年、女性や高齢者の就業が進んだことで就業者数は、前年比で47万人増加。実に5年連続の増加である。その一方で、生産年齢人口(15~64歳)は減少傾向にあり、今後も減り続けることが見込まれている。
さらに運送業界の高齢化は顕著で、総務省の労働力調査(2024年)によれば、運送業では45歳から59歳の就業者の割合が全体の46%を占める。全産業では同34.3%であり、10%以上の開きがある。また、30歳未満の若手においては全体の10%程度にとどまり、これもまた全産業(16.9%)と比べて、大きな差がある。生産年齢人口が減少する中、全産業と比べても若手比率が低い運送業界では、若手人材の獲得は一層難しい状況にある。
・時間外労働の上限規制
2024年4月の働き方改革関連法の適用拡大により、トラック運転手の時間外労働にも上限規制が設けられ、年間960時間以内とされた。これは従来の運送業界で一般的であった長時間労働の是正と、交通事故防止を目的とするものである。
しかし、時間外労働の上限規制により、一人のドライバーが担当できる業務量は大きく減少する。その結果、これまでと同じ輸送量を維持するためには、追加のドライバーを確保する必要が生じる。すでに生産年齢人口の減少により働き手が不足する中で、運送会社にとっては大きな負担となっている。
加えて、時間外労働の制限により収入が減少する可能性があることから、若手人材が運送業を敬遠する要因にもなっている。このように、法改正は業界全体の労働環境改善につながる一方で、新たな人材確保の課題を生んでいる。
・EC市場での需要拡大
スマートフォンの普及やコロナ禍による非対面需要の高まりを背景に、オンラインで買い物をする生活スタイルが急速に広がった。これに伴い、EC市場は年々拡大を続け、宅配便の取り扱い個数も大幅に増加している。
EC需要の拡大は運送業にとってビジネスチャンスである一方で、現場の負担増加につながっている。荷物が細分化され、小口配送が中心となることで、一件あたりの効率が下がり、これまで以上に多くの人手が必要となるためである。さらに、ECの配送は再配達や時間指定が多く、ドライバーの業務量を押し上げている。
このように、EC市場の拡大により運送業への需要は増しているにもかかわらず、人材不足が続く現状とのギャップが広がっていることが、人手不足に拍車をかける要因になっている。
- ※参考:[経済産業省]宅配便が急増中!?
(2)基本の法定福利厚生とは
企業が従業員に提供する福利厚生には、法律で義務づけられた「法定福利厚生」と、企業独自に導入される「法定外福利厚生」がある。まずは、会社が最低限整備しなければならない法定福利厚生を理解することが重要である。
法定福利厚生は従業員の生活を支える基盤であり、加入漏れや制度への理解不足は企業の信頼性にも影響する。ここでは、企業が負担すべき法定福利厚生について整理する。
・雇用保険
雇用保険は雇用者と被雇用者が保険料を折半する仕組みである。失業手当、育児休業給付金などの給付を通じて、従業員の生活の安定を支える役割を担う。
・健康保険
会社員や公務員が加入する健康保険の保険料は、雇用者と被雇用者が半額ずつ負担する。保険適用の医療を受けた場合、窓口の自己負担額が最大3割になるほか、ケガ・病気・出産などに対して給付金が支給される。
・介護保険
40歳以上の人が対象となり、保険料は雇用者と被雇用者が折半する。要介護・要支援認定を受けた際に、介護サービスを利用できる。
・労災保険
パートやアルバイトを含むすべての労働者が対象で、保険料は雇用者が全額負担する。業務中や通勤中のケガ・病気・死亡に対して保障が行われる制度である。
・厚生年金保険
適用事業所で一定の労働時間・収入要件を満たす労働者が対象になる。保険料は雇用者と被雇用者が半分ずつ負担し、将来的に国民年金に上乗せして給付されるため、老後の生活を支える重要な仕組みである。
・子ども・子育て拠出金
従業員の子どもの有無にかかわらず、事業主が全額負担する制度である。従業員数に応じて拠出金を納め、児童手当や妊婦支援などの財源として活用されている。
法定福利厚生はすべての企業に共通して求められる義務であり、その整備状況は従業員の安心感だけでなく企業の信頼性にも直結する。次に紹介する「法定外福利厚生」を充実させるためにも、まずは法定福利厚生の理解が欠かせない。
(3)人材確保のための企業独自の法定外福利厚生
人材確保のため、自社の魅力を高めるには、企業独自の福利厚生を提供するのが効果的だ。ここでは、法定外福利厚生として整備したい制度を紹介する。
・住宅手当
従業員の生活基盤を支えるため、住居費の一部または全額を企業が負担する仕組みが住宅手当である。給料とは別に一定金額を支給する方法や、寮・社宅を用意する方法などがある。中には引っ越し費用を援助する企業もある。
・通勤手当
通勤手当とは、通勤にかかる交通費の一部または全額を企業が従業員に支給する制度のこと。公共交通機関を利用して通勤する従業員に支給するのが一般的だが、企業によっては自家用車で通勤する従業員も対象とすることがある。
・家族手当
扶養家族がいる従業員を対象に、生活サポートを目的として支給する手当。扶養家族とは、主に従業員の収入によって生活を支えられている家族のことであり、年齢や年収などの条件があるのが一般的。同じ年齢や収入でも扶養人数が多ければ必要な生活費が増えるため、直接的な生活サポートができる家族手当は従業員満足度の向上にもつながる。
・健康診断の補助
労働安全衛生法により、企業は従業員に対して1年に1回以上健康診断を受けさせる義務がある。個人で健康診断を受ける場合、一般的に5,000円~2万円程度の費用がかかる。法定健康診断の実施に加え、再検査費用やオプション検査費用を補助することで、従業員の経済的負担を軽減できるだけでなく、受診率の向上や健康管理支援にもつながる。
・慶弔見舞金
慶弔見舞金とは従業員の冠婚葬祭にあわせて企業が支給する金銭のこと。従業員のライフイベントに対する理解や状況の把握が、企業と従業員の信頼構築にもつながる。
(4)ワーク・ライフ・バランスを充実させるためのサポート
若手を中心にワーク・ライフ・バランスを重視する人は、長時間勤務になりやすく夜勤もある運送業を敬遠する傾向にある。ここでは、企業の魅力を高め、従業員の満足度向上も図れるワーク・ライフ・バランスの充実につながる福利厚生について、5つの方法を紹介する。
・食事の補助
トラック運転手は長時間労働が多く、夜勤も少なくないため生活サイクルが不規則になりやすい。また、外食が多くなるため栄養バランスが偏りやすい。業務により規則的な食生活を送るのが難しい従業員に対して、食事の補助は健康サポートとして効果がある。また、物価が高騰しているため、金銭面での支援としての意味も大きいと言える。
・健康管理
運転のため長時間同じ姿勢を取り続けるトラック運転手は腰を痛めやすく、不規則な勤務形態により体調を崩すこともある。運動施設の利用補助やオンラインでの健康相談などで健康管理をサポートすることは従業員の健康維持だけでなく、定着率アップにもつながる。
・宿泊や休憩施設利用の補助
長距離走行を行うトラック運転手には心身に大きな疲労が生じる。安全走行を続けるためには質の良い休息が欠かせない。必要に応じて宿泊・休息施設の利用をサポートすることは、トラック運転手の健康と安全を守るために重要である。
・教育や資格取得の支援
運送業界では職種により必要な資格が異なるが、例えば、トラック運転手の場合は大型自動車第一種運転免許、危険物取扱者などの資格があれば仕事の幅が広がり、キャリア・収入アップにつながる。企業が従業員のスキルや資格取得を支援することで、長期的なキャリア形成支援や定着率向上の一助になる。
・ワーク・ライフ・バランスの促進
運送業は勤務形態が不規則でプライベートと仕事のバランスが取りにくいイメージを持たれやすい。宿泊を伴わない地場配送(短距離配送)や日勤・夜勤の選択など柔軟な勤務形態を取り入れたり、希望どおりの休暇を取りやすくしたりすることで従業員の定着率向上が期待できる。また、ワーク・ライフ・バランスを重視する傾向にある若手人材の獲得に有利になる。
(5)運送業の福利厚生に関するよくある質問
Q1.運送業で導入すべき福利厚生にはどのようなものがありますか?
運送業では、法定福利厚生(社会保険など)に加えて、住宅手当・家族手当・通勤手当などの生活支援制度が有効です。また、食事補助や健康診断の追加補助、資格取得支援制度なども人気があります。長時間労働や不規則勤務になりやすい職種のため、ワーク・ライフ・バランスを支える福利厚生の充実が重要です。
Q2.運送業の福利厚生は人材不足対策になりますか?
はい、福利厚生の充実は人材不足対策として有効です。運送業界は若手人材が少なく、人手不足が深刻化しています。給与だけでなく、働きやすさや生活支援制度を整備することで、求職者への訴求力が高まり、定着率の向上にもつながります。
Q3.運送業で若手運転手に選ばれる福利厚生の特徴は何ですか?
若手人材は給与水準だけでなく、働きやすさや将来性を重視する傾向があります。具体的には、資格取得支援制度、希望休の取りやすさ、日勤選択制度、健康管理サポートなどが評価されやすいポイントです。特に、2024年以降の働き方改革を踏まえた労働環境の整備は、企業選びの重要な基準になっています。
(6)まとめ
運送業は生産年齢人口の減少による若手人材の獲得難や時間外労働の上限規制、EC市場の拡大などによって人手不足が続いている。優秀な人材を確保し、従業員の定着率を高めるには福利厚生の充実が欠かせない。
各種社会保険に加えて、住宅手当や家族手当のような独自の手当の導入を検討したい。さらに食事補助や健康管理など、従業員のワーク・ライフ・バランスをサポートする施策を取り入れることで、求職者や既存の従業員にとっての魅力を高められる。福利厚生の充実は単なるコストではなく、採用力と定着率を高めるための戦略的投資である。自社の状況と従業員のニーズを踏まえ、継続的に制度を見直していくことが重要だ。
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