人事病院
看護師の離職率は高い? 離職の理由や対策も紹介
2025/5/21

看護師の離職率は高いという現状があり、医療現場の安定性に大きな影響を与える重要な要素となっている。
本記事では、看護師の離職率に関する実態やその主な理由を解説し、さらに離職を防ぐための具体的な対策について紹介する。
(1)看護師の離職率
看護師の離職率は、医療現場の安定性に大きな影響を与える重要な要素である。公益社団法人日本看護協会の「2024年病院看護実態調査報告書」にもとづき、看護師の離職率の傾向を分析すると、地域や病院の種類、規模などによって顕著な違いがあることがわかる。
- ・都道府県別に見た看護師の離職率
- 都道府県別に見ると、正規雇用の看護師の離職率が最も低いのは岩手県と山形県の6.8%であり、次いで秋田県の7.4%、富山県の7.6%が続く。一方、最も高い離職率を示したのは東京都の14.2%であり、大都市ほど高い離職率が見られる傾向にある。
- この原因として、都市部では転職先の選択肢が多く、離職後の再就職が容易である点が挙げられる。新卒採用者の離職率が高いのは、香川県(15.2%)、東京都(11.7%)、大阪府(11.3%)であり、既卒採用者の離職率が高いのは大分県(22.4%)、鹿児島県(22.0%)、沖縄県(19.3%)である。
- ・病院の種類別に見た看護師の離職率
- 病院の種類別に見ると、正規雇用の看護師の離職率が最も高いのは医療法人(14.4%)。一方、公立病院の離職率は7.7%と低い。公立病院は福利厚生が充実しており、安定した雇用条件が確保されていることから、離職率が低いと考えられる。
- ・病院の規模別に見た看護師の離職率
- 病院の規模別に見ると、病床数が多い大規模病院ほど離職率が低い傾向にある。
- 199床以下の中小規模病院では正規雇用者の離職率が12.6%であり、200床以上300床未満の病院では離職率(12.2%)がやや低下し、300床以上400床未満の病院は11.5%、400床以上で10.4%となる。
- これは病院の経営環境や勤務条件の差が影響していると考えられる。
(2)看護師が離職してしまう主な理由
看護師の離職率は、さまざまな要因によって影響を受けており、その主な理由は労働環境の過酷さや給与・待遇への不満、身体的負担や精神的ストレス、ライフスタイルの変化などである。これらの要因が複合的に絡み合い、看護師の離職を引き起こしている。
- ・労働環境の過酷さ
- 長時間労働や休暇取得の難しさが、看護師の心身に大きな負担をかけている。2交替制の夜勤では、勤務前後に残業している看護師の割合が高く、勤務時間が12時間を超えることも少なくない。
- こうした長時間労働により、身体的・精神的な疲労が蓄積しやすい状況なのである。また、スタッフの不足により、看護師は希望するタイミングで休暇を取れないこともあり、十分なリフレッシュができずに離職を考える一因となる。
- このように、過酷な労働環境は看護師の離職につながる重大な要因となっている。
- ・給与や待遇への不満
- 看護師は高度な専門知識と技術、強い責任感を持って働いている。しかし、責任の重さに見合わない報酬が、看護師の働き続ける意欲を低下させている。特に都市部では生活費が高いが、十分な収入が得られないケースが多く、これが不満につながる。
- また、昇給やインセンティブが不明確である場合、キャリアの先が見えにくくなり、モチベーションが低下する。
- こうした状況では、看護師が働き続ける意欲を維持することが難しく、結果として離職率が上昇する原因となる。
- ・身体的負担や精神的ストレス
- 看護師は、身体的にも精神的にも大きな負担を抱えながら働いている。この日常的な身体的負担と精神的ストレスが、離職の引き金となっている。日常的に夜勤や残業をこなし、長時間立ちっぱなしでの業務が続くことが多いため、身体的な疲労が蓄積する。
- また、命を預かる責任感や突発的な緊急事態への対応、患者やその家族からのクレーム対応といった精神的ストレスも大きい。特に精神的ストレスが重く、看護管理者が考える新人看護師の退職理由の半数近くはメンタルヘルスに関連している。
- このように、心身のバランスが崩れた結果、離職を選択する看護師が増えているのである。
- ・ライフスタイルの変化
- 看護師は女性が多い職業であり、結婚や出産など、ライフスタイルの変化に対応しにくい勤務体制が離職を招いている。
- 育児休業の取得や院内保育所の整備など、復職をサポートする病院も増えてきたが、育児と仕事を両立させるのは依然として難しく、夜勤ができないなどの理由で、一時的に仕事を離れる看護師も多い。
- こうしたライフスタイルの変化に対応し切れない勤務体制が、離職の一因となっている。
- ・職場の人間関係の悩み
- 多職種との関わりが多い職場環境で、人間関係のストレスを抱える看護師は少なくない。看護師は命を預かる仕事のため、ミスに対する厳しい目があり、忙しさや疲れからコミュニケーションの余裕がなくなることがある。
- 職場での人間関係に疲れた看護師が、自分らしく働ける環境を求めて離職することが少なくない。
- ・キャリアアップのため
- スキル向上を目指す中で、学習時間の確保が難しく、離職を選ぶ看護師もいる。
- 新たな領域での業務に携わりたい、教育体制が充実した施設で認定看護師を目指したい、または進学や留学を通じて、さらなるスキルを向上させたいという目標を持つ看護師も多く、そのために現在の職場を離れることがある。
- 資格職である看護師は、自己成長を重視しており、ステップアップを目指す動機が強いため、離職という決断に至ることがある。
(3)看護師の離職率を下げるための対策
看護師の離職率を低減させるためには、さまざまな対策を講じる必要がある。労働環境の改善、福利厚生の充実、職場内の連携強化、そしてメンタルヘルスケアの充実が、看護師が長く働き続けられる職場をつくるために重要である。
- ・職場環境を整える
- 看護師が安心して長く働くためには、業務効率化や労働時間の見直しにより、看護師が働きやすい職場づくりを進めることが欠かせない。具体的には、電子カルテやICTの導入、タスク・シフト/シェアの推進によって業務負担を軽減できるだろう。
- また、勤務中に適切な休憩を促し、有給休暇を取りやすい制度を整えることも重要である。福利厚生施設として、休憩室や仮眠室の整備も有効で、看護師がリフレッシュできる環境が整うことで、心身の負担が軽減され、離職を防ぐ助けとなるはずだ。
- さらに、シフトの見直しや長時間労働の改善も、看護師が働きやすい環境づくりに寄与するだろう。
- ・福利厚生を充実させる
- 育休制度や昇給制度の見直しなど、ライフステージに応じた福利厚生の充実が離職防止に役立つ。育児や介護の支援制度、リラクゼーション施設の利用促進など、ライフステージの変化に対応する福利厚生が整っている職場は、看護師が長期的に働き続ける意欲を高める。
- 院内保育園の設置や育児・介護休暇制度の導入、定期的な健康診断の実施などは、看護師の仕事とプライベートのバランスを支えるために非常に効果的である。また、給与や残業手当の見直しも重要で、看護師が自分の働きに対して適切な報酬を得ていると感じることが、離職率の低下につながる。
- ・職場内の連携を高める
- 信頼関係と協力体制の構築が、看護師同士の連携と働きやすさを高める重要な要素となる。看護師同士の協力体制を強化するために、チームナーシングやパートナーシップ・ナーシング・システムの採用、情報共有の精度向上を図ることが効果的である。
- これにより、業務の引き継ぎやチームワークが向上し、看護師が働きやすい環境が整う。また、日勤者と夜勤者の役割の違いを明確にするため、ユニホームの色分けなどの施策を取り入れることも、業務を円滑に進めるために有効である。
- ・メンタルヘルスケアを充実させる
- 精神的な負担を軽減するサポート体制は、安心して働ける環境づくりにつながる。定期的なストレスチェックの実施や、メンタルヘルスに関する研修を行うことで、看護師が精神的な健康を保ちながら働ける環境がつくられる。
- さらに、病院内に専任のカウンセラーや相談窓口を設置することも、看護師が抱えるストレスを軽減するために重要な対策である。特に新人看護師の離職理由にメンタル不調が多いことから、メンタルヘルスケアの充実は離職率の低下に大きな役割を果たすといえる。
- 看護師が心身ともに健康を保ちながら働ける環境を提供することで、長期的に働き続けることが可能になる。
(4)まとめ
看護師の離職率は、過酷な労働環境や給与・待遇の不満、精神的な負担など、さまざまな要因によって引き起こされる。
しかし、職場環境の改善や福利厚生の充実、職場内での連携強化、メンタルヘルスケアの充実といった対策を講じることで、離職率を低減させ、看護師が長期的に働き続けられる職場をつくることが可能である。
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