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看護師の勤怠管理における課題とは? 対策や導入システムの選び方も紹介

2025/5/7

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看護師の勤怠管理における課題とは? 対策や導入システムの選び方も紹介

医療機関における看護師勤怠管理は、24時間体制による複雑なシフトや多様な手当、法令順守など、他業種に比べて多くの課題を抱えている。こうした課題の解決策として注目されているのが、勤怠管理システムの導入である。

本記事では、看護師勤怠管理における課題を整理し、対策やシステム導入のメリット、選定のポイントを解説する。

(1)看護師の勤怠管理における課題

医療機関における看護師勤怠管理は、他業種と比較して非常に複雑であり、管理者にとって大きな負担となっている。24時間体制で運営される医療現場では、夜勤や当直を含むさまざまな勤務形態が存在するため、シフト作成や勤怠集計、給与計算といった業務が煩雑化しやすい。

ここでは、看護師勤怠管理に関する主な課題について述べる。

・夜勤や当直があり計算の手間が大きい
看護師を含む医療従事者は、日勤・準夜勤・深夜勤といった3交替制や変形労働時間制で勤務するなど、勤務形態が複雑である。そのため医療現場では、手作業での勤怠集計が負担となっている。
多くの医療機関では、依然として手作業による勤怠管理が行われており、タイムカードやシフト表をもとにした確認作業に時間を要している。特に夜勤の回数や勤務時間帯のズレなどを正確に集計することは容易ではなく、管理担当者の大きな負担となっているのが現状である。
・割増賃金による給与計算に時間がかかる
医療機関には多様な職種や専門性を持つスタッフが在籍しており、それに伴い支給される手当や割増賃金の種類も多岐にわたる。夜勤手当、深夜手当、休日勤務手当など、複数の条件にもとづいて賃金が計算されるため、給与計算業務は煩雑になりがちである。
・法令上の制限によりシフト作成が複雑になる
医療機関では、法令や要件に応じた柔軟な人員配置が求められ、シフト作成に多くの時間と手間がかかる。例えば、「宿直は週1回まで」などの法的制限に加え、人員配置基準などの要件も考慮しなければならない。
さらに、職員一人ひとりの希望や休暇、勤務制限なども反映させる必要があり、シフト作成は非常に複雑な作業となる。加えて、急な欠勤やシフト変更が発生した際には、即座に代替要員を調整する対応力も求められる。
・手書き管理により正確な勤務時間が把握しづらい
一部の医療機関では、今もなお手書きの日報や出勤簿を用いた勤怠管理が行われている。日報による勤怠管理は柔軟性に富む一方で、正確な勤務実態の把握が難しく、管理負担が大きいという問題も抱えている。
特に、自己申告による勤務時間の記録では、残業時間や労働実態の正確な把握が困難である。また、シフト表とのデータ照合や記録内容の集計にも多くの時間と労力を要するため、結果として勤怠管理業務の非効率性を招いている。

(2)勤怠管理システムを導入するメリット

医療現場の勤務体制は複雑であり、手作業による勤怠管理では正確性や効率性に課題が生じやすい。こうした課題を解決する手段として、勤怠管理システムの導入が注目されている。

勤務時間の把握や給与計算、シフト作成など、勤怠に関わる多くの業務を効率化することが可能であり、医療機関における働き方改革の推進にもつながる。以下に、勤怠管理システムを導入する具体的なメリットを示す。

なお、愛知労働局が公開している「看護師等の勤務環境改善事例集」では、医療機関における具体的な勤怠管理の工夫や改善事例が紹介されている。

・勤務時間を正確に把握できる
勤怠管理システムを導入する最大の利点の一つは、リアルタイムで勤務時間を正確に把握でき、残業管理や働き方改革の推進にもつなげられる点である。WEB上のタイムカードにより、出退勤の記録が保存され、いつでも勤務状況の確認が可能になる。
また、システムによっては残業時間や有給休暇の取得状況を自動的に集計でき、総労働時間の管理も容易となる。さらに、所定の残業時間を超過しそうな場合にアラートを出す機能が備わっているシステムも多く、長時間労働の抑制にも貢献することだろう。
・手作業による集計負担が軽減される
勤怠管理システムの導入により、手作業による勤怠データの集計業務が大幅に削減される。勤怠データの自動集計により、タイムカードの回収やエクセルへの入力といった煩雑な作業が不要となり、総務担当者の負担を大幅に軽減できる。
大規模な医療機関では、複数の拠点や部署から勤怠データを集めて一元管理する必要があるが、システムを利用することでそれらが一括で処理できるようになる。また、勤怠データをそのまま給与計算システムに連携できる機能を活用すれば、給与業務も効率化され、ミスの防止にもつながる。
・シフトや「様式9」作成が楽になる
医療現場特有の複雑な勤務形態に対応するためには、シフト作成機能や様式9出力に対応した勤怠管理システムを選定することで、管理業務がスムーズになる。医師や看護師、事務職員といった異なる職種に応じた勤務スケジュールを自動的に組めるシステムであれば、シフト作成にかかる時間と手間を大幅に削減できるだろう。
急なシフト変更にも柔軟に対応できる設計となっているシステムも多く、人員の過不足を自動で検知し、管理者に通知する機能が備わっているものもある。また様式9に対応していれば、必要データの抽出と帳票作成が自動化され、記入ミスや作成工数の削減にもつながる。
・さまざまなデバイスから打刻ができる
勤怠管理システムは、パソコンに限らず、スマートフォンやタブレットといったモバイル端末からの打刻にも対応している場合が多い。また、ICカードをかざすだけで出退勤が記録される機能もあり、業務の多忙な現場職員の利便性が向上するだろう。
病棟や外来などを移動しながら勤務する看護師にとって、いつでもどこでも打刻できる環境は非常にありがたいものである。これにより、出退勤記録の漏れや不正確さを防ぐとともに、職員の負担も軽減できる。

(3)自院にあった看護師向け勤怠管理システムの選び方

看護師をはじめとした医療従事者の勤務体制は非常に多様かつ複雑であり、それに対応する勤怠管理システムの導入は不可欠である。

ただし、システムの選定においては、自院の業務内容や勤務形態に適した機能や運用面の柔軟性、セキュリティ、コストなど、多角的な観点から検討する必要がある。ここでは、看護師向け勤怠管理システムを選ぶ際に注目すべきポイントを解説する。

・実際に必要な機能を洗い出す
病院の勤怠管理においては、一般企業とは異なる独自の要件が存在するため、まずは現場で実際に必要とされる機能を明確にすることが重要である。病院向けの勤怠管理システムを選ぶ場合、交替勤務や夜勤などを含む勤務形態に対応するシステムであることが前提となるであろう。
例えば、以下のような機能が求められる。
  • ‐自動でのシフト作成機能
  • ‐夜勤や当直など多様な勤務形態に対応可能
  • ‐リアルタイムでの出退勤状況の可視化
  • 給与計算システムとの連携機能
  • ‐モバイルデバイスからの打刻対応
こうした機能を備えたシステムを選定することで、勤怠管理業務の効率化だけでなく、スタッフの労働環境の改善や離職防止にもつながる。
・予算と機能のバランスを考える
勤怠管理システムの導入にあたっては、初期費用からランニングコストまでを総合的に評価し、経済的に最適な勤怠管理システムを選ぶ必要がある。初期導入費用のみならず、月額費用、アップデートに伴う費用、将来的な機能追加の対応範囲など、長期的な視点でコストを考慮すべきである。
合理的かつ継続的に運用可能なシステムであるかを検討し、経済的な負担と業務効率の向上の両立を目指すべきである。
・セキュリティ対策が充実しているかを確認する
医療機関では、患者情報や従業員の個人データといった機密性の高い情報を取り扱うため、患者情報や従業員データを守るために、堅固なセキュリティ対策が施されたシステムを選定することが重要である。
仮に機能が充実していても、セキュリティ対策が不十分であれば、情報漏えいなどのリスクを招く可能性がある。
確認すべき主なポイントは以下のとおりである。
  • ‐個人情報保護に関する規格への対応状況
  • ‐通信や保存データの暗号化
  • ‐定期的なセキュリティアップデートの実施
  • ‐多要素認証の導入
  • ‐アクセス制限や権限管理の徹底
  • ‐操作履歴の記録と監査機能
こうした対策が講じられているシステムを選ぶことで、安心・安全な勤怠管理が可能となり、医療機関の信頼性も高まる。
・導入後のサポート体制が充実しているかを確認する
システム導入後も安心して運用できるよう、24時間対応など充実したサポート体制かを確認したい。トラブルや不具合が発生した際に、迅速かつ適切な対応を受けられる体制が整っていなければ、業務に支障が出るおそれがある。
具体的には、以下の観点から確認することが望ましい。
  • ‐サポート窓口の対応時間(24時間365日対応が理想)
  • ‐サポートの提供手段(電話、メール、チャットなど)
  • ‐システムのバージョンアップ対応や障害時の対応
  • ‐多言語対応の可否(外国籍職員がいる場合)
トラブル発生時の安心感は、現場での運用において非常に大きな意味を持つため、サポート体制がしっかり整っているシステムを選ぶことが重要である。

(4)まとめ

看護師勤怠管理は、勤務形態の多様性や法的制限、手作業での運用による非効率性など、さまざまな課題を内包している。これらの課題を解決するためには、勤怠管理システムの導入が極めて有効である。

正確な勤務時間の把握や給与計算の自動化、複雑なシフト作成の効率化などを実現できる点が大きな利点である。システム選定にあたっては、必要な機能の洗い出し、コストと性能のバランス、セキュリティ面、導入後のサポート体制など、多角的な視点から検討する必要がある。

自院の実情に即したシステムを導入することで、勤怠管理業務の効率化のみならず、職員の労働環境改善や医療サービスの質の向上にも寄与するであろう。

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