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病院における人事評価制度の課題や導入のメリットは? 見直しポイントも紹介

2025/6/4

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病院における人事評価制度の課題や導入のメリットは? 見直しポイントも紹介

医療現場では優秀な人材の確保やスタッフのモチベーション維持が大きな課題である。人材の定着率向上や育成体制の整備も喫緊の課題となっている。その解決策として、病院における人事評価制度の整備が注目されている。

適切な評価制度の導入により、課題の解決と病院全体のサービス向上が期待できる。本記事では、人事評価制度の概要や効果、導入メリット、制度整備のポイントについて詳しく解説する。

(1)病院における人事評価制度とは

病院における人事評価制度とは、病院で働く多様な職種のスタッフの業績や能力を評価し、その結果を昇給・昇格や人材育成に反映するための仕組みである。評価によりスタッフの貢献度を可視化し、組織目標の達成にもつながる。

・人事評価制度の効果
適切な人事評価制度は、病院組織に様々な好影響をもたらす。客観的な評価基準を設けてフィードバックを行うことで、昇給の根拠が明確になり、評価への納得感が高まり組織への信頼感が向上した事例もある。
また、定期的な評価面談の機会が増えることで上司と部下のコミュニケーションが活性化し、人材育成や離職防止につながる。さらに、制度をうまく運用すると優秀な人材の流出を防ぎ、看護師の育成にもつながることが期待される。
このように、人事評価制度の導入によりスタッフの安心感と組織の一体感が高まり、病院運営の基盤強化につながるのである。
・人事評価制度の課題
人事評価制度にはメリットが多い一方で、課題も存在する。新制度導入時に現場が戸惑うケースもあり、評価制度の定着には時間と工夫が必要となる。また、評価の公平性を保つことが難しく、評価者の主観や部署間で評価基準にばらつきが生じかねない。
例えば、若手を厚遇する制度設計にした結果、シニアスタッフには不利となり、不満につながった事例も報告されている。また、評価者への研修不足により評価基準の解釈が統一されない問題もあり、制度導入後も継続的な見直しが欠かせない。
人事評価制度の効果を十分発揮するには課題を認識し、公平性の担保や評価者教育、制度の定期的な改善を行う必要がある。
・病院における人事評価制度の特徴
多職種の専門スタッフが働く病院では、人事評価制度にも他業界とは異なる特徴がある。医師・看護師・コメディカル・事務など、職種ごとに役割が異なるため、階層や職種に応じて評価基準のカスタマイズが求められる。
一般職では業務プロセスや患者対応など行動面の評価を重視し、管理職以上では部門目標の達成など、成果面の評価比重が高くなる傾向がある。さらに、病院ごとの理念やビジョンを評価制度に反映させ、組織の戦略目標と人材育成を結びつける仕組みとなっている点も特徴的である。

(2)病院において人事評価制度を導入するメリット

病院で人事評価制度を導入すると、様々なメリットが得られる。ここからは、病院が人事評価制度を導入する具体的メリットを解説する。

・目標設定や達成度の測定がしやすくなる
医療現場では日々の業務が多忙で、各スタッフに明確な目標を設定し、達成度の測定をするのは容易ではない。その解決策として人事評価制度を活用すれば、明確な目標設定と達成状況のモニタリングが容易になり、フィードバックもスムーズに行える。
評価シートやシステム上で目標と達成状況を「見える化」すると、管理職も現場の進捗を把握しやすくなる。明確な目標が設定されることでスタッフ自身も優先すべき業務に集中しやすくなる。
結果として、目標の達成度合いを客観的に測定でき、必要に応じた指導や支援をタイムリーに実施できるようになる。
・評価の公正性や公平性が向上する
病院で公正な人事評価を実現するのは重要な課題である。従来の人力による評価では評価者の主観が入りやすく、評価基準の不統一から不公平感が生じることも少なくない。人事評価制度を導入し、評価基準を明確に定めた上で数値や指標にもとづく評価を行えば、すべてのスタッフを同じ物差しで測ることが可能となり、公平性が高まる。
さらに、評価を数値化して具体的な改善点をフィードバックすると、評価の透明性も高まり、スタッフも自身の課題を把握しやすくなる。公平な評価は、管理職とスタッフの信頼関係を強化し、組織全体の安定につながる。
・現場で働く人のモチベーションがアップする
公正で納得感のある評価は、スタッフのモチベーション向上につながる。あいまいな基準や主観的な評価では、不公平感からスタッフの士気が下がりがちであったが、評価基準が明確になり自身の努力が正当に評価されていると感じられれば仕事への意欲は高まる。
さらに、評価結果を昇給・賞与など処遇に反映すると、公平な報酬体系を実現でき、スタッフの働きがいや職場への愛着心を強める効果も期待できる。
公正な評価制度は現場スタッフのやる気を引き出し、組織全体の活力向上や離職率低下、医療サービスの質の向上にもつながるのである。
・評価業務が効率的になる
人事評価業務そのものの効率化も大きなメリットである。紙やエクセルでの評価管理は、評価シートの記入・回収や結果の集計に手間がかかり、人的ミスも発生しやすかった。人事評価システムを導入すれば、評価データの自動集計や一元管理が可能になり、評価者間での情報共有も容易になる。
また、集計作業が自動化されることで結果の取りまとめに要する時間も大幅に短縮され、人為的ミスも減少する。評価業務の効率と正確性が飛躍的に向上し、事務負担が軽減される。浮いた時間を分析や面談に充てることで、より質の高い人事運営が実現できるのである。

(3)病院の人事評価制度を整備する際のポイント

病院で人事評価制度を構築・見直しする際には、制度を形骸化させず、実効性を持たせるための工夫が必要である。ここからは、病院の人事評価制度を整備・運用するにあたって注意すべきポイントを解説する。

・実務と関係する評価項目を取り入れる
人事評価の評価項目は、スタッフの日々の業務と直結した内容とするのが重要である。現場の実務とかけ離れた指標では制度が形骸化し、スタッフの行動改善につながらない。各職種・職位の役割に即した具体的な評価項目を設定する。
例えば、部署ごとの業務目標の達成度を評価に含めれば、組織全体で目標意識が共有され、仕事の「質」と「量」を指標化することで、スタッフが日々の成果を意識するようになる。病院の理念を体現する行動や問題解決能力なども評価項目に取り入れると、スタッフの意識改革と能力開発を促すことができる。
なお、現場の声を反映して項目を決定すれば、スタッフの納得感も高まる。
・人事考課判定会議を開く
公正な評価を実現するため、評価結果を最終確認する「人事考課判定会議」の実施が有効である。1次評価(直属の上司)と2次評価(上長)を終えた後、部門長以上の経営幹部が集まり、評価の最終判定を行う。
この場で部署間の評価のばらつきを調整し、全社的に統一された基準での評価となるよう議論する。また、優秀なスタッフについて今後のキャリアパスを検討する場ともなり、適材適所の人事配置や昇進計画につなげることができる。
判定会議を通して評価プロセスの透明性が高まり、スタッフに対して「公平に評価されている」との安心感を与える効果も大きい。
・結果をフィードバックする仕組みをつくる
評価結果をスタッフに適切にフィードバックする仕組みづくりも欠かせない。評価面談は単に評価を通知して終わりにするのではなく、スタッフの成長につなげる場とすべきである。面談では、評価者が期待する役割や現在の評価結果、今後の期待を具体的に伝え、次の目標達成に向けた具体策について助言を行う。
さらに、良かった点と改善すべき点の双方を伝えて、スタッフのモチベーションを維持・向上させることが重要である。フィードバック体制を整えることで、評価結果がスタッフの成長に直結し、人事評価制度の実効性が高まる。
・人事評価システムを導入する
制度を安定的かつ効率的に運用するために、クラウド型の人事評価システムを導入するのも有効な手段である。評価項目や基準をシステム上で一元管理すると評価フローが標準化され、属人的な運用を防止できる。
電子化によって評価データの集計・分析が容易になり、人材配置や昇格の判断材料として客観的なデータを活用できる。また、被評価者自身が評価結果やフィードバック内容を確認できるシステムであれば、評価プロセスの透明性が高まりスタッフの納得感も得られやすい。
なお、病院の特性に合ったシステムを選定すると、よりスムーズな導入・運用が期待できる。

(4)まとめ

病院における人事評価制度は、公平な評価によってスタッフのモチベーションを高め、人材育成と病院経営の質を向上させるために欠かせない仕組みである。制度の効果と課題を踏まえ、メリットを最大限に引き出す運用を心掛けることが重要である。

評価項目の工夫や評価プロセスの透明性確保、丁寧なフィードバックといったポイントを押さえて制度を定着させることで、人事評価制度は現場に根付き、病院全体の成長と発展につながっていくのである。

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