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【2026年7月施行】障害者の法定雇用率引き上げの影響と企業の実務対応

2026/6/1

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【2026年7月施行】障害者の法定雇用率引き上げの影響と企業の実務対応

2024年4月、障害者雇用促進法の改正により、民間企業の法定雇用率は2.5%へと引き上げられた。さらに2025年4月には除外率制度が見直され、対象業務の範囲が狭まるなど、企業に求められる対応は一段と厳格化している。

これらは単発の制度改正ではなく、段階的に障害者雇用を拡大していく政策の一環である。2026年7月には、法定雇用率を2.7%に引き上げることを予定している。これにより、障害者雇用は「努力義務的な対応」から「経営上の重要課題」へと完全にシフトすると言える。

本記事では、これまでの制度改正の流れを踏まえつつ、2026年改正のポイントと企業が取るべき実務対応について整理する。

(1)2026年改正は「雇用率+対象拡大」の複合インパクト

2026年7月の法定雇用率引き上げ(2.7%)は、単なる数値の上昇ではない。2024年の雇用率引き上げ、2025年の除外率引き下げと連動し、企業に対する実質的な雇用義務を大きく引き上げる改正である。

特に2025年の除外率見直しは見落とされがちであるが、その影響は小さくない。除外率制度とは、業務特性上、障害者の配置が困難とされる職種について、雇用率算定の基礎となる労働者数から一定割合を差し引いて算定できる仕組みである。

除外率設定業種 除外率
非鉄金属第一次製錬・精製業・貨物運送取扱業(集配利用運送業を除く) 5%
建設業・鉄鋼業・道路貨物運送業・郵便業(信書便事業を含む) 10%
港湾運送業・警備業 15%
鉄道業・医療業・高等教育機関・介護老人保健施設・介護医療院 20%
林業(狩猟業を除く) 25%
金属鉱業・児童福祉事業 30%
特別支援学校(専ら視覚障害者に対する教育を行う学校を除く) 35%
石炭・亜炭鉱業 40%
道路旅客運送業・小学校 45%
幼稚園・幼保連携型認定こども園 50%
船員等による船舶運航等の事業 70%
  • ※除外率設定業種の場合、常用労働者数から除外率に相当する常用労働者数を除いた人数に法定雇用率を乗じる。例えば、常用労働者数が1,000人で建設業の場合、「(1,000人-1,000人×10%)×2.7%」で24人(小数点以下は切り捨て)になる。2.5%であれば、22人なので2人増加することになる。

除外率が引き下げられたことで、「これまではカウント対象が抑えられていた企業」が、それ以降はより多くの障害者雇用を求められる状況となっている。こうした改正により、2025年の除外率引き下げによって算定基礎となる労働者数(分母)が増加し、さらに2026年の雇用率引き上げによって必要雇用人数(分子)も引き上がるという構造になっている。結果として、企業の実務負担は段階的に増していくことになる。

また、2026年7月の法定雇用率引き上げにより、障害者雇用義務の対象となる企業の範囲も拡大する。法定雇用率は常用労働者数に応じて必要雇用人数が算出される仕組みであるため、雇用率の上昇に伴い「1人以上の雇用が必要となる企業規模」が引き下がり、従来の40人以上から37.5人以上へと対象が広がる。これにより、これまで対象外であった中小企業が新たに対象となる可能性がある。

(2)除外率引き下げがもたらす“見えにくい負担増”

2025年4月の改正では、除外率が設定されている業種に対して、除外率が一律10ポイント引き下げられた。これにより、これまで100人換算だった企業が、実質的には110人、120人規模として扱われるケースも生じる。ここで重要なのは、この変更が法定雇用率の引き上げとは別軸で効いてくる点である。

すなわち企業は、「除外率引き下げにより算定母数の増加」、そしてその上で2026年に「雇用率が2.7%へ上昇」という2段階の影響を受ける。結果として、「想定以上に不足人数が増える」という事態が現実的に起こり得る。2026年7月以降の対応を考える際には、この点を前提にシミュレーションを行うことが不可欠である。

なお、週10時間以上20時間未満で働く障害者については、「特定短時間労働者」として雇用率に算入できる仕組みも設けられている。対象は重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者で、1人につき0.5人として算定される。こうした制度を活用することで、フルタイムに限定しない多様な就労形態を前提とした雇用設計も検討の余地がある。

(3)未達リスクは「コスト」から「レピュテーション」へ

障害者雇用に関する未達のリスクは、従来は主に納付金など金銭的負担として認識されてきた。しかし現在はその性質が変わりつつある。

障害者雇用促進法では、未達企業に対してハローワークによる指導が行われ、改善が見られない場合は企業名の公表に至る可能性がある。さらに近年は、人的資本開示やESG評価の文脈の中で、雇用実績が対外的に評価される場面も増えている。

そのため未達は、採用市場における企業イメージの低下を招き、取引先・投資家からの評価に影響を及ぼすレピュテーションリスク(企業評価の低下が経営に影響を及ぼす可能性)へとつながる。2026年改正以降は、「納付すればよい」という発想ではなく、企業価値の観点から対応を検討する必要がある。

(4)採用難の本質は「業務設計」にある

障害者雇用が進まない理由として「採用できない」という声は多いが、その背景を分解すると、問題の本質は採用以前の業務設計にあるケースが多い。

除外率引下げにより、これまで対象外とされていた業務領域でも雇用が求められる中、「既存業務のままでは任せられない」という前提自体を見直す必要がある。

具体的には、以下のような取り組みが求められる。

  • ・業務の細分化(タスク単位への分解)
  • ・業務の標準化やマニュアル化
  • ・デジタルツールの活用による業務再設計

すなわち、2026年改正への対応とは単なる採用活動ではなく、業務の再構築プロジェクトであると捉えるべきである。

(5)定着まで含めた「運用設計」が成否を分ける

法定雇用率の達成は、採用時点ではなく「継続雇用」によって初めて実現される。そのため、定着支援の仕組み化は不可欠である。

特に2026年以降は、採用競争の激化により「採用しても定着しない」という課題が顕在化しやすい。これに対応するためには、以下のような取り組みが必要になる。

  • ・定期的なフォロー面談の実施
  • ・現場担当者への教育
  • ・外部支援機関(就労支援機関等)との連携
  • ・人事労務管理システムによる情報の一元管理

これらを通じて、属人化しない運用体制を構築すべきである。障害者雇用は、一過性の対応ではなく、継続的なマネジメントプロセスとして設計すべき領域だと言える。

(6)まとめ

2024年の法定雇用率引き上げ、2025年の除外率引き下げ、そして2026年のさらなる法定雇用率の引き上げという一連の制度改正は、障害者雇用を段階的に拡大させる明確な政策意図にもとづくものである。企業にとっては、単なる数値対応ではなく、雇用のあり方そのものを見直す転換点と言える。

特に今回の改正は、除外率の見直しによる算定基礎の変化と、雇用率引き上げによる必要人数の増加が組み合わさることで、実務負担が着実に増す構造になっている。これに対応するためには、採用活動の強化にとどまらず、業務設計や定着支援を含めた一体的な取り組みが不可欠である。

今後は、障害者雇用を「義務対応」として捉えるのではなく、人的資本経営の一環として位置づける視点がより重要になる。2026年7月の施行を見据え、現状の雇用状況を正確に把握した上で、計画的かつ戦略的に対応を進めていくことが求められる。

まずは、自社の雇用状況と除外率適用後の算定基礎を正確に把握し、2026年7月時点で必要となる障害者雇用人数を試算することが出発点となる。

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