【2025年1月施行】健康診断結果報告等の電子申請が義務化に
2025/1/8

(1)電子申請とは
電子申請とは、インターネットを利用して各種手続きをオンラインで行う方法のこと。従来の紙ベースの申請に代わり、電子申請は迅速かつ効率的に手続きを完了させることができる。これにより、申請者は物理的な書類の提出や郵送の手間を省くことができ、行政機関も処理の迅速化とコスト削減を図ることができる。
電子申請の導入は、デジタル化が進む現代社会において不可欠なもの。特に、企業にとっては業務効率向上やコスト削減が期待できるので、積極的に取り組むべきである。さらに、電子申請はセキュリティ面でも優れており、データの暗号化やアクセス制限などにより、情報漏えいのリスクを低減することができる。
日本政府は行政手続きコストを削減する一環として、2020年4月から特定の法人について、一部の行政手続きの電子申請を原則義務づけた。義務化された対象法人は以下のとおり。
- ・資本金、出資金または銀行等保有株式取得機構に納付する拠出金の額が1億円を超える法人
- ・相互会社(保険業法)
- ・投資法人(投資信託及び投資法人に関する法律)
- ・特定目的会社(資産の流動化に関する法律)
対象となった手続きは以下のとおり。
(2)電子申請による企業のメリット
電子申請により、企業には以下のようなメリットが期待できる。
- ・業務効率化
- 電子申請により、書類の作成や提出にかかる時間と労力が大幅に削減される。従来の紙ベースの申請では、書類の印刷、署名、郵送といった手間がかかっていたが、電子申請ではこれらの手順が不要となる。
- ・コスト削減
- 紙ベースの申請に伴う印刷費用や郵送費用が不要になるため、コスト削減が期待できる。さらに、書類の保管スペースも不要となり、オフィスのスペースを有効活用できる。
- ・迅速な処理
- 電子申請はリアルタイムで処理されるため、申請から結果の通知までの時間が短縮される。これにより、迅速な対応が可能となる。
- ・記入ミスや不備の減少
- 電子申請システムは入力内容のチェック機能を備えているので、記入ミスや不備が減少し、正確な申請を行える。これにより、申請の再提出や修正の手間が省ける。
(3)今回の対象となる手続き
2025年1月から施行される新しい規制により、企業は従業員の健康診断結果報告を含む特定の手続きを電子申請で行うことが原則義務づけられる。この規制の対象となる手続きには、以下のとおり。
- ▽労働安全衛生関係
2020年の義務化とは異なり、今回はすべての企業が対象になる。①はすべての企業で報告する可能性がある。②~④は常用労働者数に応じて報告を要し、⑤~⑦は業種によるものだ。
- ・労働者死傷病報告
- 労働者死傷病報告は、労働災害が発生した際に事業者が労働基準監督署に提出する報告書のこと。報告書には、事故の発生日時、場所、原因、被災者の氏名や年齢、負傷や疾病の程度などが詳細に記載される。また、再発防止策についても記載することが求められる。
- ・総括安全衛生管理者/安全管理者/衛生管理者/産業医の選任報告
- 事業者は、業種や常用労働者数に応じて総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医を選任する必要がある。そして、その選任状況を労働基準監督署に報告する義務がある。
- ・定期健康診断結果報告
- 定期健康診断は、常用労働者を雇用している事業者は原則実施が義務づけられている。その報告については常用労働者が50人以上いる場合に労働基準監督署へ報告する必要がある。
- ・心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告
- いわゆるストレスチェックに関する報告のこと。労働安全衛生法にもとづいて、常用労働者が50人以上いる場合にはストレスチェックの実施と、労働基準監督署への報告が義務づけられている。
- ・有害な業務に係る歯科健康診断結果報告
- 化学物質や粉塵などの有害物質にさらされる業務では、歯科健康診断を実施する必要がある。事業者は、常用労働者数にかかわらず、その結果を労働基準監督署に報告する義務がある。
- ・有機溶剤等健康診断結果報告
- 有機溶剤を取り扱う業務に従事する常用労働者に対して実施する。有機溶剤は、吸入や皮膚接触によって健康に悪影響を及ぼす可能性がある。事業者は、この健康診断を実施し、その結果を労働基準監督署に報告する義務がある。
- ・じん肺健康管理実施状況報告
- じん肺は、粉塵を吸入することによって発症する職業病であり、特に鉱山や建設業などで問題となる。事業者は、じん肺の予防と管理のために、定期的な健康診断と健康管理を実施し、その状況を労働基準監督署に報告する義務がある。
(4)電子申請をはじめるには
電子申請は、デジタル庁が運営する、行政手続き等のポータルサイト「e-Gov(イーガブ)」で行う。利用には以下の準備が必要になる。
- ・電子証明書の要否を確認する
- 対象手続きによって電子証明書の取得が必要な場合がある。この電子証明書は、書面の手続きにおける実印や印鑑証明書に相当する。必要であれば、認証局で電子証明書の発行を受ける。
- ・e-Govアカウントを取得する
- アカウントは5~10分程度で取得できる。外部認証サービスのGビズID、Microsoftアカウント、Googleアカウントを使用すれば、e-Govアカウントを取得する必要はない。(Googleアカウントの場合、e-Gov電子申請アプリケーションにはログインできない=2024年11月29日時点)
- ・ブラウザの設定
- 設定内容を確認し、必要に応じて設定を変更する。
- ・アプリケーションのインストール
- e-Gov電子申請アプリケーションをインストールする。
(5)もっと便利に電子申請を行うためには
e-Gov電子申請で直接手続きを行うことはできるが、準備や手間が多く、操作性に難があるなどの指摘がある。もっと便利に電子申請を行うためには、電子申請APIを利用した、民間のオンライン申請システムがおすすめ。導入すると以下のようなメリットが見込める。
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