労務
労務管理における労働契約とは?
2024/10/9
(1)労働契約とは
労働契約とは、労働者が使用者に対して労働を提供し、その対価として賃金を受け取ることを約束する契約。労働契約は、労働者と使用者の間で結ばれるものであり、労働条件や労働時間、賃金などの具体的な内容が定められる。労働契約は、労働者の権利と義務を明確にし、労働関係の安定を図るために重要な役割を果たす。
(2)労働契約の種類
主な労働契約の種類は以下のとおり。
(3)労働契約法
労働契約法は、労働契約に関する基本的なルールを定めた法律。労働者の権利を保護し、労働条件の改善を図ることを目的としている。主な内容としては、労働契約の締結、変更、終了に関する規定や、労働条件の明示、労働者の保護に関する規定が含まれる。
労働契約法は、2007年12月5日に公布され、2008年3月1日に施行。その後、2012年8月10日の改正で、有期労働契約に関するルールが追加された。この改正により、同一の使用者との間で有期労働契約が通算5年を超えた場合、労働者が希望すれば無期労働契約に転換できる「無期転換ルール」が導入された。また、雇い止めに関する法理が明確化され、客観的合理性や社会的相当性がない雇い止めは認められないようになった。
さらに、2020年4月1日の改正(パートタイム労働法と労働者派遣法の改正によるもの)では、労働契約法第20条を削除。この改正により、不合理な労働条件の禁止に関する規定が、「パートタイム・有期雇用労働法」(パートタイム労働法から改称)に統合された。これにより、同一労働同一賃金のルールが強化され、労働者間の公平な待遇がさらに重視されるようになった。
最近では2024年4月1日の改正で、労働条件の明示に関するルールを変更。労働者を雇い入れる際や有期契約の更新時に、就業場所や業務の変更範囲など、労働条件通知書や雇用契約書に記載することが義務化された。
(4)労働契約の原則
労働契約法第3条において、労働契約に共通する、5つの原則を規定している。
- ・労使対等の原則
- 労使対等の原則とは、労働者と使用者が対等な立場で労働契約を締結し、労働条件を決定することを意味する。この原則は、労働者の権利を保護し、労働環境の改善を図るために重要である。労働者は使用者に対して対等な交渉力を持ち、労働条件の改善や労働環境の整備を求めることができる。
- ・均衡考慮の原則
- 均衡考慮の原則は、労働者間の待遇の均衡を図るためのもの。同一労働同一賃金の考え方にもとづき、同じ仕事をする労働者には同じ賃金が支払われるべきである。この原則により、労働者間の不公平が是正され、労働意欲の向上が期待される。また、企業内の公平な評価制度の確立にも寄与する。
- ・仕事と生活の調和への配慮の原則
- 仕事と生活の調和への配慮の原則は、労働者が仕事と私生活を両立させることを重視するもの。労働時間の柔軟化や休暇制度の充実などが求められる。この原則により、労働者のストレスが軽減され、健康的な生活が送れるようになる。また、労働者の満足度が向上し、企業への忠誠心も高まる。
- ・信義誠実の原則
- 信義誠実の原則は、労働契約において双方が誠実に対応することを求めるもの。労働者と使用者は互いに信頼関係を築き、誠実に契約を履行することが重要である。この原則により、労働環境が改善され、労使間のトラブルが減少する。また、労働者のモチベーションが向上し、企業の生産性も高まる。
- ・権利濫用の禁止の原則
- 権利濫用の禁止の原則は、労働者や使用者がその権利を不当に行使することを防ぐものである。労働者の権利を守るためには、使用者が権利を濫用しないことが重要である。この原則により、労働者の権利が保護され、公正な労働環境が実現される。また、労働者もその権利を適切に行使し、企業の秩序を乱さないようにすることが求められる。
(5)労働契約の締結
労働契約の締結には、以下のような手続きが必要である。
- ①労働条件の明示
- 労働契約の締結において、労働条件の明示は不可欠。労働条件には、賃金、労働時間、休暇、業務内容などが含まれる。これらの条件は、労働者が安心して働くための基盤となるものであり、明確に示されるべきである。労働条件の明示により、労働者と使用者の間での誤解やトラブルを未然に防ぐことができる。また、労働者の権利を守るためにも、労働条件の明示は重要だ。
- ②契約書の作成
- 労働契約の締結に際して、契約書の作成が必須。契約書には、労働条件や労働者と使用者の権利義務が明記される。これにより、双方の責任が明確になり、後々のトラブルを防ぐことができる。契約書は、労働者の権利を保護し、使用者の義務を明確にするための重要な文書である。契約書の作成は、労働関係の透明性を高め、公正な労働環境を実現するために欠かせない手続きとなる。
- ③労働者の同意
- 労働契約の締結には、労働者の同意が必要。労働者は、提示された労働条件に納得し、自らの意思で契約を締結する。労働者の同意は、労働契約の有効性を確保するための重要な要素になる。また、労働者の同意を得ることで、労働者の権利が尊重され、公正な労働関係が築かれる。労働者の同意は、労働契約の締結において最も基本的かつ重要なステップだ。
(6)労働契約の禁止事項
労働契約には、以下のような禁止事項が存在する。
- ・不当な労働条件の設定
- 労働契約において、不当な労働条件の設定は厳禁。例えば、過度な長時間労働や低賃金、過酷な労働環境などが該当する。不当な労働条件は労働者の健康や生活に悪影響を及ぼし、労働意欲を低下させる。また、法律に違反する場合も多く、企業にとってもリスクが高い。
- ・差別的な取り扱い
- 労働契約において、差別的な取り扱いは絶対に許されない。性別、年齢、人種、宗教、障害などにもとづく差別は、労働者の尊厳を傷つける行為。差別的な取り扱いは、労働者のモチベーションを低下させ、職場の雰囲気を悪化させる。また、法律に違反する行為であり、企業に対する信頼を損なう。
- ・違法な契約内容
- 労働契約において、違法な契約内容は無効。例えば、最低賃金以下の賃金設定や、労働基準法に違反する労働時間の設定などが該当する。違法な契約内容は、労働者の権利を侵害し、企業に対する法的リスクを高める。労働契約は、法律に基づいて公正に締結されるべきであり、違法な内容を含まないことが重要である。
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