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過去最多の猛威を振るう季節性インフルエンザ 会社や学校の対応は?

2025/1/22

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過去最多の猛威を振るう季節性インフルエンザ 会社や学校の対応は?

(1)今年は季節性インフルエンザが大流行

全国で季節性インフルエンザの感染者数が、現在の統計方法を開始した1999年以降で最多となっている。厚生労働省が1月9日に発表した2024年12月23日から29日にかけての季節性インフルエンザの発生状況によれば、全国で報告数が317,812人に上り、前週から10万人以上増加。昨年同期(104,612人)と比べて、3倍を超える水準になっている。

昨年11月に流行期に入り、12月から急激に感染が拡大。国立感染症研究所が発表した流行レベルマップ(第52週)によれば、47都道府県のうち43都道府県が警報レベル(1医療機関あたりの季節性インフルエンザ患者数が30人以上)である。とりわけ、九州において多く、大分県の104.84人を筆頭に、鹿児島県(96.40人)、佐賀県(94.36人)が続く。

(2)季節性インフルエンザの特徴

季節性インフルエンザの特徴としては、以下が挙げられる。

・発生時期
季節性インフルエンザは、気温が低く、乾燥した環境において流行する傾向にある。そのため、日本では冬に流行しやすい。
・感染経路
感染力が強く、感染者のせきやくしゃみなどでウイルスが飛散するため、飛沫感染や接触感染により容易に感染する。
・ウイルスの変異
新しい変異株の出現により、従来のワクチンが効果を発揮しにくくなる。

ヒトに感染する季節性インフルエンザウイルスにはA型、B型、C型の3種類があり、流行しやすいのはA型とB型。季節性インフルエンザウイルスの型によって症状が異なる。

  A型 B型 C型
特徴 感染力が非常に強く、最も流行しやすい。変異が激しく、免疫を持つ人が少なくなるので、流行を繰り返す。 感染力は強いが、変異が少なく、免疫を持つ人が多いので、A型と比べて流行しにくい。ヒトにのみ感染。 A型・B型と比べて症状が軽い。一度感染すると免疫がつくため、基本的に2度目はかからない。
種類 144 2 1
発熱 38度以上の高熱 平熱や微熱の場合もある 平熱や微熱の場合もある
主な症状 頭痛、のどの痛み、せき、関節痛、筋肉痛、全身の倦怠感 腹痛、下痢、嘔吐 鼻水、くしゃみ、せき

(3)季節性インフルエンザワクチン接種の効果

季節性インフルエンザワクチンを接種することで、季節性インフルエンザの発病や、発病後の重症化や死亡の可能性を低減する効果が期待される。現在、日本国内で広く用いられている季節性インフルエンザワクチンは、A型株2種とB型株2種のそれぞれを培養して製造された不活化ワクチン。「4価ワクチン」と呼ばれる。不活化ワクチンは、季節性インフルエンザウイルスの毒性や感染性をなくし、免疫をつくるのに必要な成分を取り出してつくられたもの。そのため、ワクチン接種によって季節性インフルエンザを発症することはない。

13歳以上の場合、接種回数は原則1回であり、13歳未満は2回接種が推奨される。子どもは今までに一度も季節性インフルエンザにかかったことがない場合や、似たタイプの季節性インフルエンザにかかったことがない場合があるため、2回接種することで、新しいウイルスに対して十分な免疫を獲得できるようにする。厚生労働省によれば、2回の接種を受ける場合は、免疫効果を考慮して、1回目の接種から4週間空けることが望ましいとしている。なお、季節性インフルエンザワクチンの効果は接種(2回接種の場合は2回目の接種)の2週間後から5カ月程度と言われている。

(4)季節性インフルエンザにかかったら

季節性インフルエンザにかかったかもしれないと思ったら、以下のことに留意する。

  • ・人混みや繁華街への外出を控え、無理をして学校や職場等に行かないようにする。
  • ・せきやくしゃみ等の症状のある時は、家族や周りの人にうつさないように、飛沫感染対策としてのせきエチケットを徹底する。
  • ・安静にして、休養をとる。特に、睡眠を十分にとることが大切。
  • ・水分を十分に補給する。
  • ・高熱が続く、呼吸が苦しい、意識状態がおかしいなど具合が悪ければ、早めに医療機関を受診する。

医師が必要と認めた場合には、抗インフルエンザウイルス薬が処方される。抗インフルエンザウイルス薬の服用を適切な時期(発症から48時間以内)に開始すると、発熱期間は通常1日から2日間短縮され、ウイルス排出量も減少する。

季節性インフルエンザにかかると、学生等については、学校保健安全法により出席停止期間が定められている。この対象となるのは、幼稚園(幼稚園型認定こども園を含む)、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学、高等専門学校である。そのほか、専修学校については学校保健安全法の一部が準用されて対象となり、保育所については児童福祉施設なので、学校保健安全法の対象ではないが、厚生労働省が定めた「保育所における感染症対策ガイドライン」において、幼稚園同様のルールが適用されている。

A.園児の場合
インフルエンザ発症後、5日が経過し、かつ解熱後、3日間まで出席停止
B.その他の場合
インフルエンザ発症後、5日が経過し、かつ解熱後、2日間まで出席停止

職場においては、労働安全衛生法により、従業員が伝染性の疾病など厚生労働省令で定める疾病にかかった場合、従業員の就業を禁止することが規定されているが、季節性インフルエンザは伝染性の疾病などの対象外。そのため、集団感染防止や安全配慮義務の観点から、Bのケースを参考にして、会社が就業規則等において就業停止のルールを定めるのが一般的である。

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