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労務法改正

【2024年12月施行】改正された確定給付企業年金制度 iDeCoは何が変わったか?

2024/12/25

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【2024年12月施行】改正された確定給付企業年金制度 iDeCoは何が変わったか?

(1)iDeCoとは

iDeCo(イデコ)とは、個人型確定拠出年金のこと。公的年金(国民年金・厚生年金)のほかに任意で加入できる年金のひとつ。確定拠出年金は2001年に確定拠出年金法の成立により日本で開始された。開始当時は、米国の確定拠出年金制度のひとつ、「401k(ヨンマルイチケイ)」を参考にしたことから、「日本版401k」とも呼ばれた。確定拠出年金には企業型と個人型があり、後者がiDeCoである。iDeCoという名称は2016年に公募で決定、個人型確定拠出年金の英語表記の「individual-type Defined Contribution pension plan」の単語の一部を組み合わせてつくられたものである。

iDeCoでは、個人が積み立てを行い、運用することで将来の年金を準備する。加入者は毎月一定額を拠出し、その資金を自ら選んだ金融商品で運用する。運用結果に応じて将来受け取る年金額が変動するため、自己責任での運用が求められる。iDeCoは、国民年金や厚生年金といった公的年金に上乗せする形で利用されることが多く、老後の生活資金をより充実させるための手段となる。

(2)iDeCo加入のメリット

iDeCoに加入する最大のメリットは、税制優遇である。

①掛け金は全額所得控除
全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象になる。これにより、税負担が軽減される。例えば、年間24万円(月額2万円)を拠出した場合、所得税20%、住民税10%であれば、年間72,000円の税金が軽減されることになる。
②運用益が非課税で再投資も可能
一般的な金融商品による運用益は課税対象だが、iDeCoの場合は非課税。運用益を再投資することもできる。
③受け取る際も控除適用
年金として受け取る場合は公的年金等控除、一時金として受け取る場合は退職所得控除の対象になる。

また、自分のライフプランに合わせて、運用商品を選択できる自由度も魅力のひとつ。例えば、リスクを抑えたい場合は定期預金や国債を選んだり、リターンを追求したい場合は株式投資信託を選んだりすることができる。

(3)2024年12月施行の主な改正内容

2024年12月1日に施行された主な改正内容は以下のとおり。

・確定給付企業年金(DB)や共済加入者のiDeCoの拠出限度額を引き上げ
DB等に加入している会社員や公務員(国民年金第2号被保険者)のiDeCoの拠出限度額を月額12,000円から20,000円に引き上げた。これまで、DB等に加入している場合、拠出限度額の最大55,000円のうち、DB等の掛け金に関係なく、一律27,500円で評価され、残りの27,500円の中でiDeCoの拠出限度額を12,000円としていた。今回の改正で、DB等の掛け金を個別に算定するようになり、合算して55,000円のうち、iDeCoの拠出限度額が20,000円となった。これにより、公平性が向上し、より多くの資金をiDeCoに拠出することができるようになった。
国民年金第2号被保険者 施行前 施行後
(1)企業型DCのみに加入 月額5.5万円-各月の企業型DCの事業主掛金額
※ただし、月額2万円を上限
月額5.5万円-(各月の企業型DCの事業主掛金額+DB等の他制度掛金相当額)
※ただし、月額2万円を上限
(2)企業型DCと、
DB等の他制度に加入
月額2.75万円-各月の企業型DCの事業主掛金額
※ただし、月額1.2万円を上限
(3)DB等の他制度のみに加入(公務員を含む) 月額1.2万円
iDeCoへの加入手続きを簡素化
会社員や公務員がiDeCoに加入する際、個人口座から掛け金を拠出する場合については、事業主証明書の提出を不要に。これにより加入が簡単になった。

(4)iDeCoへの加入方法

iDeCoに加入できるのは原則20歳以上65歳未満の公的年金被保険者。原則60歳以降に受け取ることができ、受給開始時期は75歳になるまでの間で選ぶことができる。iDeCoに加入するためには、まず金融機関を選ぶ。銀行、証券会社、保険会社など多くの金融機関が、運営管理機関としてiDeCoの取り扱いを行っている。その中から自分に合った金融機関を1社選ぶ。

次に、加入申込書を提出し、毎月の拠出額を設定する。拠出額は最低5,000円から上限まで、1,000円単位で自由に設定できる。拠出額は1年(12月分から翌年11月分の間)に1度に限り、変更することができる。

最後に、運用商品を選択し、積み立てを開始する。運用商品は、定期預金、保険商品、投資信託など多岐にわたる。運用商品には、高い運用益を期待できるが元本割れの可能性があるものや、元本を確保するが運用益が少ないものなどがある。自分のリスク許容度や運用目標に応じて選択することが重要になる。

(5)iDeCo加入の注意点

iDeCoに加入する際にはいくつかの注意点がある。

・原則60歳まで引き出せない
iDeCoは老後資金を準備するための制度なので、原則として60歳まで積み立てた資金を引き出すことができない。そのため、急な出費に備えるための資金とは別に考える必要がある。
・加入期間によって受給開始年齢が引き下げられる
通算で10年以上加入すると60歳から受給が可能になるが、10年に満たない場合は受給可能年齢が引き下げられる。(8年以上10年未満=61歳、6年以上8年未満=62歳、4年以上6年未満=63歳、2年以上4年未満=64歳、1月以上2年未満=65歳)
・手数料が発生する
iDeCoへの加入時、運用時、受取時に手数料がかかる。金融機関によって手数料の金額が異なるため、事前に確認しておく必要がある。
・運用リスクを理解する
iDeCoは自分で運用商品を選択するため、運用成績によっては元本割れのリスクがある。リスクを分散するために、複数の商品に分散投資することが推奨される。
・課税所得がないと所得控除のメリットを享受できない
iDeCoの拠出額は全額が所得控除の対象となり、運用益も非課税。受取時にも税制優遇が適用される。しかし、課税所得がない場合は所得控除のメリットを享受できない。
・専門家に相談する
iDeCoの運用は自己責任で行うため、投資に不慣れな場合は専門家に相談することが重要。適切なアドバイスを受けることで、リスクを抑えた運用が可能になる。
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