労務
迫る健康保険証廃止 企業でやるべきことは何なのか?
2024/11/20
(1)健康保険証の廃止
マイナンバーカードによる健康保険証としての利用(マイナ保険証)は2021年10月に本格的に運用開始。導入移行期間中は、現行の健康保険証とマイナ保険証のどちらも利用できる。その後、2023年6月にマイナンバーカードと健康保険証の一体化などを含むマイナンバー法の改正が行われ、同年12月に閣議で健康保険証の廃止が正式に決定した。そして、いよいよ2024年12月2日に健康保険証の新規発行が終了し、健康保険証は廃止となる。
(2)マイナ保険証のメリット
マイナ保険証のメリットは以下が挙げられる。
- ・医療機関や薬局への情報共有がスムーズになる
- 受診時や調剤時にマイナ保険証で受付をし、情報提供に同意することで、過去に処方された薬や特定検診などの情報を医師や薬剤師にスムーズに共有することができる。
- ・手続きなしで高額療養費の限度額を超える支払いが免除される
- 従来は医療機関・薬局の窓口で全額を支払った上で支給申請書を提出して、超過分の支給を受ける、もしくは事前に「限度額適用認定証」を申請して、窓口負担の上限額を抑える必要があった。マイナ保険証であれば、「限度額適用認定証」を申請することなく、超過分を窓口で払う必要がなくなる。
- ・マイナポータルで簡単に医療費控除ができる
- 1年間に支払う医療費が一定額を超える場合、医療費控除を受けることができる。従来は医療費の領収証を管理し、明細書を作成し、確定申告時に添付する必要があった。マイナ保険証を利用していれば、マイナポータルからe-Tax(国税電子申告・納税システム)に連携することで、領収証の管理や保管が不要になり、簡単に医療費控除を申請できるようになる。
- ・医療従事者の負担軽減
- 従来は健康保険証の内容を事務職員が手入力する必要があったが、マイナンバーカードと顔認証付きカードリーダーによってデータを共有できるので作業負担が軽減される。また、顔認証や暗証番号の入力によって認証を行うことで本人確認を容易に行えるようになり、不正防止につながりやすい。
(3)マイナ保険証の利用申込方法
マイナンバーカードを持っていて、マイナ保険証の利用登録を行っていない場合、以下のいずれかの方法で登録することができる。
- ①医療機関・薬局の受付で行う
- 顔認証付きカードリーダーにマイナンバーカードを置くと、未登録の場合、登録画面が表示され、その場で登録することができる。
- ②マイナポータルで行う
- マイナポータルにアクセスし、「利用を申し込む」ボタンを押して申込画面を開く。利用規約に同意した後、マイナンバーカードをICカードリーダーにセットして読み込む。その後、利用者証明用電子証明書のパスワードを入力して、正常に受付がなされれば登録完了になる。
- ③セブン銀行ATMで行う
- ATM画面の「各種お手続き」から「マイナンバーカードの健康保険証利用の申込み」に進む。利用規約に同意した後、カード挿入口にマイナンバーカードを挿入。その後、利用者証明用電子証明書のパスワードを入力して、正常に受付がなされれば、登録完了になる。
(4)マイナンバーカードを持っていない場合
12月2日以降、健康保険証がまったく使えなくなるわけではない。廃止時点で手元にある健康保険証を最長1年間(有効期限が2025年12月1日より前に切れる場合はその有効期限まで)使用できる。また、マイナンバーカードを持っていない、もしくは持っているがマイナ保険証の利用登録をしていない場合は、加入している医療保険者から、被保険者資格の情報等を記載した「資格確認書」が交付され、それをもって保険診療を受けることができる。
資格確認書は、マイナ保険証の利用登録をしている人を除いて、申請不要で交付され、更新についても申請はいらない。後期高齢者については、2025年7月末までの暫定的な運用として、現行の健康保険証が失効する者に資格確認書を申請不要で交付する。ただし、以下の者については申請が必要になる。
(5)企業が実施すべきこと
健康保険証の廃止に備えて、企業が実施すべきことは以下のとおり。
- ・従業員への情報提供
- マイナ保険証は、企業にとって、保険証関連業務の効率化が図れるため推進すべきものだが、利用率は12.43%(厚生労働省発表、2024年8月実績)と極めて低い。マイナ保険証の利用登録は従業員が手続きをする必要があるので、マイナ保険証の利用方法やメリットなどについて十分に周知して、理解を促すことが欠かせない。
- ・「資格情報のお知らせ」の配布
- 協会けんぽや健康保険組合等の医療保険者から企業に対して、被保険者と被扶養者の資格情報とマイナンバー登録情報が記載された「資格情報のお知らせ」が送付される。企業はこの書面を従業員に配布し、内容の確認を依頼する。
- ・「資格確認書」の配布
- マイナ保険証の利用登録がなされていない従業員には、加入している医療保険者から「資格確認書」が企業に対して交付される。企業は該当の従業員へ「資格確認書」を配布する。
- ・業務フローの見直しやシステム整備
- マイナ保険証の利用は任意であるため、従業員によって対応が変わり、これまでと比べて業務が複雑化する。そのため業務フローの見直しや対応マニュアルの準備が求められる。また、企業内での人事労務管理システム等がマイナ保険証に対応できるように、システムの整備やアップデートを行うことが必要になる。
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