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労務管理における安全衛生管理とは?

2024/11/13

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労務管理における安全衛生管理とは?

(1)安全衛生管理とは

安全衛生管理とは、労働者が安全かつ健康に働ける環境を整えるための一連の活動を指す。これには、職場のリスク評価、労働者の健康診断、安全教育の実施、災害防止対策などが含まれる。企業は法律にもとづき、労働者の安全と健康を守るための措置を講じる義務がある。

(2)安全衛生管理の目的

安全衛生管理の主な目的は、労働者の生命と健康を守ること。具体的には、以下のような目的が挙げられる。

労働災害の防止
労働災害の防止は、安全衛生管理の最も基本的な目的。労働災害とは、労働者が業務中に負傷したり、病気になったりすることを指す。これを防ぐためには、職場のリスクアセスメント(事業場にある危険性や有害性の特定、リスクの見積り、優先度の設定、リスク低減措置の決定の一連の手順)を行い、危険箇所を特定し、適切な対策を講じる。
職業病の予防
職業病とは、特定の職業に従事することによって発生する病気。例えば、粉塵を吸い込むことによる肺疾患や、長時間のパソコン作業による視力低下などが挙げられる。職業病の予防には、作業環境の改善や定期的な健康診断が重要である。
・労働者の健康維持や増進
労働者の健康維持や増進も、安全衛生管理の重要な目的のひとつ。健康な労働者は、生産性が高く、企業の成長に寄与する。定期的な健康診断や健康相談の実施、健康教育の推進により、労働者の健康維持や増進を図る。
・労働者の生産性向上
安全衛生管理は、労働者の生産性向上にも寄与する。健康で安全な職場環境は、労働者のモチベーションを高め、生産性を向上させる。例えば、作業環境の改善や設備の更新、労働者の意見を反映した職場改善活動などが効果的である。
・企業の信頼性向上
安全衛生管理は、企業の信頼性向上にもつながる。労働者の安全と健康を守る企業は、社会的な信頼を得ることができる。例えば、労働災害の発生を防ぐための取り組みや、労働者の健康を守るための施策を積極的に行うことで、企業の社会的責任を果たすことができる。

(3)安全衛生管理を進める上でのポイント

安全衛生管理は、労働安全衛生法によって規定されている。労働安全衛生法に違反した場合には罰則が課される。

安全衛生管理を進める上でのポイントは以下のとおり。

項目 概要 労働安全衛生法
事業者による基本的責務 事業者は労働者の安全と健康を確保する 第1章 総則
第1条~第5条
労働者による順守 労働者は労働災害を防止するため必要な事項を守る
管理者・推進者等の選任 事業者は安全衛生の管理や推進の中心となる人を決める 第3章 安全衛生管理体制
第10条~第19条の3
委員会の設置 事業者は、安全衛生に関して審議を行い、意見を聞く場を設ける
事業者による危険防止措置 事業者は、設備や作業などにより労働者が危険な目にあったり、ケガや病気をすることがないように、防止措置をとる 第4章 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置
第20条~第36条
労働者の順守 労働者は事業者の危険防止措置に応じて必要な事項を守る
教育の実施 事業者は労働者に安全衛生教育を行う 第6章 労働者の就業に当たっての措置
第59条~第63条
健康の保持増進の措置 事業者は作業環境測定、作業の管理、健康診断等の実施により、労働者の健康保持・増進を行う 第7章 健康の保持増進のための措置
第65条~第71条

(4)安全衛生管理体制

安全衛生管理体制は、企業が効果的に安全衛生管理を行うための組織的な枠組み。事業場ごとに安全衛生管理体制を整備する必要がある。選任すべき役割は、業種と労働者数(常時使用する労働者数)によって異なる。

業種は以下のように区分される。

区分 業種
業種1 林業、鉱業、建設業運送業、清掃業
業種2 製造業(物の加工業を含む)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器等小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業、機械修理業
業種3 その他の業種

業種区分ごとに労働者数に応じて各役割の設置が義務づけられる。

役割 業種1 業種2 業種3
総括安全衛生管理者 100人以上 300人以上 1,000人以上
安全管理者 50人以上 50人以上 義務なし
衛生管理者 50人以上 50人以上 50人以上
安全衛生推進者 10~49人 10~49人 義務なし
衛生推進者 義務なし 義務なし 10~49人
産業医 50人以上 50人以上 50人以上
・総括安全衛生管理者
総括安全衛生管理者は、企業内で安全衛生管理を統括する役割を担う。職場のリスク評価や安全教育の実施、災害防止対策の立案・実行など、幅広い業務を担当する。労働安全衛生法にもとづき、一定の資格を有する者が選任されることが求められる。
・安全管理者
安全管理者は、総括安全衛生管理者が行う業務のうち、安全にかかわる技術的事項を管理する役割。職場のリスクアセスメントを行い、危険箇所を特定し、適切な対策を講じる責任を負う。また、安全教育の実施や災害防止対策の立案・実行も担当する。安全管理者は、労働安全衛生法にもとづき、一定の資格を有する者が選任されることが求められる。
・衛生管理者
衛生管理者は、総括安全衛生管理者が行う業務のうち、衛生にかかわる技術的事項を管理する役割。労働者の健康管理や職場の衛生状態の維持・改善を担当する。具体的には、定期的な健康診断の実施、職場の衛生環境のチェック、労働者への衛生教育の実施などが含まれる。第一種衛生管理者免許や第二種衛生管理者免許が必要である。
・安全衛生推進者(衛生推進者)
安全衛生推進者は、安全管理者や衛生管理者の選任が義務づけられていない中小規模事業場(10人以上50人未満)で設置される。日常的な安全点検や労働者への安全教育の実施、健康診断の実施、労働災害の原因の調査などを担当する。業種3の中小規模事業場については、安全衛生推進者に代わり衛生推進者を選任し、衛生にかかわる業務を行う。
産業医
産業医は、労働者の健康管理を専門とする医師であり、企業内での健康診断や健康相談、職場環境の改善提案などを行う。労働者の健康状態を把握し、職業病の予防や健康増進のためのアドバイスを提供する。

(5)安全衛生委員会

安全衛生委員会は、企業内の安全衛生管理を推進するための組織。労働安全衛生法第19条にもとづいて設置される。安全委員会と衛生委員会を含み、衛生委員会は労働者数が50人以上の全業種の事業場で設置する必要があり、安全委員会は業種や労働者数によって設置条件が異なる。

  業種 労働者数 安全委員会 衛生委員会
1 林業、鉱業、建設業製造業の一部(木材・木製品製造業、化学工業、鉄鋼業、金属製品製造業、輸送用機械器具製造業)、運送業の一部(道路貨物運送業、港湾運送業)、自動車整備業、機械修理業、清掃業 50人以上 必要 必要
2 製造業(1以外)、運送業(1以外)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器等小売業、 燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業 100人以上 必要 必要
50人以上
100人未満
義務なし 必要
3 1と2以外の業種 50人以上 義務なし 必要

安全衛生委員会は、経営者、労働者代表、総括安全衛生管理者などで構成され、定期的に会議を開催し、職場の安全衛生に関する問題点や改善策を協議する。これにより、労働者の意見を反映した実効性のある対策が講じられる。安全衛生委員会の具体的な活動内容は以下のとおり。

・定期会議の開催
安全衛生委員会は、定期的に会議を開催し、職場の安全衛生に関する現状報告や問題点の共有、改善策の検討を行う。会議では、労働者からの意見や提案を積極的に取り入れ、実効性のある対策を講じることが求められる。
リスクアセスメントの実施
安全衛生委員会は、職場のリスクアセスメントを定期的に実施し、潜在的な危険を特定し、リスクを評価する。リスクアセスメントの結果にもとづき、適切な対策を講じることで、労働災害の発生を未然に防ぐことができる。
・安全教育の推進
安全衛生委員会は、労働者に対して定期的に安全教育を実施し、危険に対する意識を高める。安全教育は、労働者が安全に働くための基本的な知識や技能を習得するために重要である。
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