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【2026年12月施行】公益通報者保護法改正の全体像と企業に求められる対応

2026/7/27

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【2026年12月施行】公益通報者保護法改正の全体像と企業に求められる対応

企業不祥事の早期発見と是正を目的として整備されてきた公益通報者保護法は、近年の企業不祥事の高度化・複雑化を受けて、さらなる実効性の強化が求められている。こうした背景のもと、公益通報者保護法は2026年12月に改正法が施行される予定であり、企業の内部通報体制や人事労務管理に与える影響は小さくない。

今回の改正では、「通報者保護の実効性向上」と「企業の対応義務の強化」が大きな柱となっている。従来の制度では形式的整備にとどまりがちであった内部通報制度について、実務運用の質が問われる局面へと移行する点は見逃せない。

本記事では、2026年改正のポイントを整理した上で、人事労務担当者が押さえるべき実務対応について体系的に解説する。

本記事のポイント

公益通報制度が大きく見直し

2026年12月施行の改正で、通報者保護と企業責任が強化されます。

通報を妨げる行為を禁止

通報者探索や通報しない旨の合意要求などが明確に禁止されます。

運用体制の実効性が問われる

企業には通報対応の記録管理や説明責任への対応が求められます。

(1)公益通報者保護法改正の背景と目的

公益通報者保護法は2006年に施行され、2022年には一度大きな改正が行われている。2022年6月に施行された改正の主なポイントは以下のとおりである。

①内部通報体制の整備義務の明確化

常時使用する従業員数が300人を超える事業者に対し、公益通報に対応するための内部体制(窓口の設置、調査体制の整備など)を構築することが義務づけられた。同300人以下の事業者については努力義務とされている。

②通報対応業務従事者の指定と守秘義務の強化

通報の受付や調査に関与する担当者を明確に指定することが求められ、これらの従事者には厳格な守秘義務が課された。違反した場合には刑事罰(30万円以下の罰金)が科される点も重要である。

③保護対象となる通報者の範囲拡大

従来の労働者に加え、退職後1年以内の元従業員や役員も、一定の要件を満たす場合には保護対象に含まれることとなった。

④行政機関への通報要件の緩和

一定の要件下で、事業者内部を経由せずに行政機関へ通報した場合であっても、保護の対象となる範囲が拡大された。

もっとも、2022年改正後も、内部通報制度が「利用されない」「信頼されない」など実効性に課題が残されていた。このため、今回の改正では制度を実際に機能させることに重点が置かれている。

(2)改正の主要ポイント――実効性向上と保護強化の4本柱

2026年12月施行の改正では、主に以下の4つの強化策が体系的に導入されている。

①体制整備義務の履行確保(実効性の強化)

2022年改正で義務化された内部通報体制について、履行確保の仕組みを大幅に強化するため、以下が盛り込まれた。

  • ・従事者指定義務に違反する事業者に対し、命令権限を新設
  • ・命令違反に対する刑事罰(30万円以下の罰金)の導入
  • ・立入検査権限の新設および虚偽報告等への罰則

これにより、従来の行政指導中心の枠組みに比べて、行政措置および罰則を通じた実効性確保が図られている。

②公益通報者の範囲拡大(フリーランスの追加)

保護対象はさらに拡張され、業務委託関係にあるフリーランスも対象になった。業務委託終了後であっても1年以内であれば対象に含まれる。これにより、企業外部の人材も含めた広い範囲での通報保護が制度上担保されることとなった。

③通報阻害行為の明確な禁止

改正においては、通報制度の形骸化を招いていた企業側の行為に対し、明確な禁止規定が設けられた。

  • ・通報をしない旨の合意を求める行為の禁止(当該合意は無効)
  • ・通報者を特定する目的での探索行為の禁止

これは、制度の前提ではなく「通報を妨げる行為そのもの」を直接規制する点に特徴がある。

④不利益取扱いの抑止・救済の強化

通報者保護の中核となる不利益取扱い規制についても、大幅な強化が図られている。今回の改正では、「通報を理由とする人事措置」を強力に抑止するための仕組みが導入される。

  • ・通報後1年以内に行われた解雇や懲戒については、通報が理由であると推定される
  • ・通報を理由とする解雇や懲戒を行った場合、行為者個人に対する刑事罰に加え、法人にも罰金刑が科される(いわゆる両罰規定)

これにより、従来は通報者側が報復人事であることを立証しなければならなかった構造が見直され、通報後一定期間(原則として1年以内)に行われた人事措置については、企業側がその合理性を説明する責任を負うこととなる。

(3)企業に課される新たな義務と実務対応

今回の改正は、新たな義務を追加するというよりも、既存義務の履行確保と説明責任を強化する点に特徴がある。

なお、内部通報体制の整備義務は300人超の事業者に課される一方で、不利益取扱い規制や刑事罰は企業規模を問わず適用される。このように、規制内容によって適用範囲が異なる点には留意が必要である。

主な実務影響は以下のとおりである。

①内部通報体制の高度化(独立性・運用の実効性確保)

単に通報窓口を設置するだけでは不十分であり、「信頼して利用される体制」であることが求められる。具体的には、以下の要素が重要となる。

  • ・独立性と中立性の確保(人事部門からの切り離しや外部専門家の関与)
  • ・外部通報窓口の併設による通報ルートの多様化
  • ・通報受付から調査、是正措置までのプロセスの標準化
  • ・利益相反が生じる場合の排除ルールの整備

通報対応の公正性に対する信頼が確保されていない場合、内部通報が機能せず、外部通報や不祥事の顕在化につながるリスクが高まる。

②通報対応の記録と説明責任

今回の改正により、立証責任の転換や刑事罰の導入を背景として、人事措置や通報対応について企業側の説明責任が一層重くなっている。そのため、通報の受付から調査、是正措置に至るまでの一連のプロセスについて、適切な記録管理が不可欠となる。

具体的には、以下の対応が求められる。

  • ・通報内容および対応履歴の記録
  • ・調査過程における判断根拠の明確化
  • ・関係者とのやり取りの保存

特に、通報後に行われる解雇や懲戒については、後に合理性を説明できなければ法的リスクに直結するため、「後から説明できる記録」を前提とした運用設計が重要である。

③教育・研修の強化

制度の実効性を左右するのは現場の理解であり、従業員および管理職に対する教育・研修の重要性は一段と高まっている。

特に管理職については、以下について重点的に理解させる必要がある。

  • ・通報があった場合の初動対応
  • ・通報者の取扱いに関する禁止事項(詮索・不利益取扱い)
  • ・不用意な言動によるリスク

また、従業員に対しても、通報制度の存在と利用方法、匿名性や保護内容を周知することで、「利用される制度」として機能させることが求められる。

(4)人事労務管理への影響とシステム活用の重要性

今回の改正は、人事労務管理の実務に対して従来以上に直接的な影響を及ぼすものである。とりわけ、不利益取扱い規制の強化により、人事判断そのものが法的リスクと直結する構造になっている。

まず、評価・配置・懲戒といった人事措置については、通報者に対する報復と疑われるリスクを常に考慮する必要がある。特に通報後一定期間(原則として1年以内)に行われる人事判断については、企業側に合理性の説明が求められるため、判断過程の客観性と透明性の確保が不可欠となる。

また、(3)で述べたとおり、通報対応においては「記録」と「説明責任」が強く求められる。通報の受付から調査、是正措置、さらには関連する人事判断に至るまで、一連のプロセスを正確に記録し、後から説明可能な状態にしておくことが前提となる。

さらに、内部通報に関する情報は極めてセンシティブであり、通報者の特定につながる情報の管理には特段の注意が必要である。アクセス権限の不備や不用意な情報共有は、通報者探索の禁止規定に抵触するリスクもある。

このような要件を踏まえると、従来のExcel管理や属人的な運用では、適切な対応を継続的に担保することは困難である。具体的には、以下のような機能を備えた人事労務管理システムの活用が有効となる。

  • ・権限設定による厳格な情報アクセス制御
  • ・操作履歴の自動記録(監査ログ)
  • ・通報受付から調査・是正措置までのワークフロー管理
  • ・人事措置に関する判断過程の記録および一元管理

これらの仕組みにより、「だれが、いつ、どの情報にもとづいて判断したか」を可視化することが可能となり、説明責任の履行とリスク低減の両立につながる。コンプライアンス対応が高度化する中で、内部通報制度は単なるリスク対策にとどまらず、人事労務管理の基盤の一部として位置づけられつつある。こうした観点からも、システムの活用は実務上の負担軽減とガバナンス強化を同時に実現する現実的な選択肢となっている。

(5)公益通報者保護法改正に関するよくある質問

Q1.2026年の公益通報者保護法改正が施行されるのはいつですか?

2026年12月1日に施行される予定です。それまでに企業は内部通報体制の見直しや対応準備を進める必要があります。特に今回の改正では、体制整備の「実効性」が重視されているため、単なる形式的な整備では不十分です。

Q2.中小企業にも対応義務はありますか?

内部通報体制の整備義務は、常時使用する従業員数が300人を超える事業者に課されています。一方で、300人以下の企業は努力義務とされています。

ただし、今回の改正で強化された不利益取扱い規制や刑事罰は企業規模に関係なく適用されます。そのため、300人以下の企業であっても、実務上は同様の水準での対応が求められます。

Q3.外部通報はどのような場合に保護されますか?

報道機関などへの外部通報は、一定の厳しい要件を満たした場合に限り保護されます。例えば、以下のようなケースです。

  • ・内部通報では不利益な取扱いを受ける恐れがある場合
  • ・証拠隠滅の恐れがある場合
  • ・生命や身体への重大な被害が生じる恐れがある場合

これらの要件を満たさない場合は保護の対象とならない可能性があるため、注意が必要です。

Q4.通報者に対する不利益取扱いとは具体的に何ですか?

不利益取扱いには、解雇や懲戒といった明確な処分だけでなく、以下のような行為も含まれます。

  • ・配置転換や降格などの人事上の不利益
  • ・評価の引き下げ
  • ・業務からの排除や嫌がらせ

今回の改正では、通報後1年以内の解雇・懲戒は通報が理由と推定されるため、企業側の説明責任が大きくなっています。

Q5.企業が対応を怠った場合、どのようなリスクがありますか?

対応不備があった場合、以下のようなリスクが生じます。

  • ・行政指導や命令、さらには罰則の対象となる可能性
  • ・通報者に対する不利益取扱いが認定された場合の刑事責任
  • ・訴訟や損害賠償請求
  • ・企業イメージの毀損や外部通報による不祥事の公表

特に今回の改正では、解雇や懲戒に関して刑事罰が導入されているため、人事判断が直接的な法的リスクにつながる点に注意が必要です。

(6)まとめ

2026年12月施行の公益通報者保護法改正は、企業の内部通報制度を「形式」から「実効」へと転換させるものである。通報者保護の強化と企業責任の明確化により、人事労務部門にはこれまで以上に高度な対応が求められる。

特に重要なのは、制度の整備にとどまらず、実際に機能する運用体制を構築することである。そのためには、規程整備、教育研修、システム導入を含めた総合的な対応が不可欠である。

内部通報制度は、単なるリスク対策ではなく、企業の健全性と持続的成長を支える経営基盤の一部である。今回の法改正を契機として、自社の体制を見直し、信頼性の高い組織運営へとつなげていくべきである。

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