建設業界の労働力不足は深刻! 要因と労働力不足解消を図る5つの方法を解説
2026/2/18

建設業界において、労働力不足は深刻な課題である。さらに、2025年以降、団塊の世代(1947年から1949年生まれ)にあたる多くの熟練技能者が75歳以上になり、本格的な引退が進んでいる。建設業における労働力不足が一層深刻化することが懸念される。
労働力不足は、建設業界における就労者数減少、需要拡大、労働時間規制、若手就労者減少と高齢化、外国人労働者の受け入れ制限など、複数の要因が複雑に関係している。本記事では、建設業を取り巻く環境、建設業が労働力不足に陥る理由、企業が取り組むべき5つの施策について解説する。
(1)建設業界を取り巻く環境
建設業界では、就業者数が減少しており深刻な状況にある。国土交通省によると、建設業就業者はピークであった1997年の685万人に対して、2024年は477万人であり、約30%減少した。27年で約210万人減少しており、人材確保や人材育成が建設業界の大きな課題とされている。
(2)建設業界が労働力不足に陥る訳
建設業界における労働力不足は、複数の要因が複雑に関係している。
・建設業の需要が拡大傾向にある
建設や土木工事に費やされた金額を示す「建設投資」は、2010年度以降、増加傾向にある。建設投資は、84兆円に達した1992年度をピークに減少傾向となり、2010年度は41.9兆円まで落ち込んだ。
しかし、東日本大震災の復興に伴う需要や、民間の設備投資が再び拡大したことによって、2010年度以降は増加傾向に転じている。そして、国土交通省の見通しによると、2025年度の建設投資は75兆5,700億円に達するとされており、2024年度と比較しても3.2%増加する見込みである。
建設業就業者数が減少している一方で、建設投資が拡大していることが、労働力不足を招く要因の1つとされている。
・他業界と同じ労働時間の上限規制
働き方改革関連法も、建設業における労働力不足に影響を及ぼしている。この法律は、労働環境の改善を目的として「長時間労働の是正」「同一労働同一賃金の実現」「多様で柔軟な働き方の推進」を掲げている。
中でも、労働力不足に影響を与えているのは、長時間労働改善を目的とした時間外労働の上限規制である。時間外労働の上限規制は、大企業では2019年4月、中小企業では2020年4月から適用されている。
一方で、建設業では従来の長時間労働や休日出勤が多い勤務形態、慢性的な労働力不足を考慮して、2024年3月末まで猶予期間が設けられていた。現在は猶予期間が終了し、2024年4月1日から建設業にも時間外労働の上限規制が罰則付きで適用されている。
災害時のような例外を除き、原則としてほかの業種と同様に、時間外労働は月45時間・年360時間と定められた。これにより、1人あたりの労働時間が短くなり、結果的に労働力不足につながっている。
・若手就労者の減少と労働人口の高齢化
国土交通省によると、建設業において、就業者全体に占める29歳以下の割合は減少傾向にあり、2024年は約12%にとどまっている。一方で、55歳以上は増加傾向であり、2024年は約37%に達している。
これは、少子高齢化や、厳しい労働環境がワーク・ライフ・バランスを重視する若手就労者に敬遠されていることが要因であると考えられる。さらに、団塊の世代にあたる多くの熟練技能者の引退が進んでおり、建設業における労働力不足が一層深刻化することが懸念される。
・外国人労働者の受け入れ制限
建設業界においても、労働力不足の対策として外国人労働者の受け入れが注目されている。ただし「技術・人文知識・国際業務」「技能実習」「特定技能」などの在留資格を持つ人材を採用しなければならない。在留資格によって、従事できる業務や期間が異なる。
また、受け入れる企業と外国人労働者は、それぞれが在留資格に応じた条件を満たすことが必要である。このため、外国人労働者の受け入れは、労働力不足の解消に有効である一方で、無制限に受け入れられるわけではない。
(3)建設会社が労働力不足を解消するために取り組むべきこと
ここでは、労働力不足を解消するために企業が取り組むべき5つの施策を解説する。
・業務によってはICTで省力化を図る
労働力不足への対策として、建設業界でも生産性を向上させるためのICT活用を国土交通省が推進している。さまざまな技術を活用することで、業務の効率化や、安全性の向上を実現できる。
例えば、BIM/CIMを活用した3D設計を導入することで、現場の状況や完成イメージなどを関係者間で共有しやすくなり、ミスや手戻りの軽減につながる。
また、ドローンを3次元測量や施工管理、危険個所の安全確認などに活用することで、業務の効率化と安全性向上を図れる。このように、ICTを取り入れて生産性を高めることは、労働力不足を解消する方法の一つである。
・適切な工期を設定する
適切な工期を設定することも、労働力不足の解消に重要とされている。建設投資の増加による需要拡大に伴い、工期を短期間に設定するケースが見られる。しかし、計画どおりに進めるために、時間外労働が増えると、労働者が負担に感じ、離職につながる可能性がある。
国土交通省が公表している「建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン」でも、適正な工期を設定することが求められている。
労働者に過度な負担をかけず、離職を防ぐためには、休日や準備作業、天候、後片付けなどを考慮した余裕ある工期を設定することが大切である。適正な工期を確保することは、労働者の定着を促し労働力不足の解消にもつながる。
・先を見据えた人材への投資
先を見据えた人材への投資も、労働力不足解消の有効な手段である。具体的には、労働者が業務に役立つ資格や免許を取得する際に企業が支援する方法が挙げられる。
企業が定めた資格や免許の取得にかかる費用の一部または全額を、企業が負担する。この支援は、企業の生産性向上につながるだけでなく、労働者のキャリアパスが明確になることで、モチベーションアップや離職防止にも効果がある。
このように、人材への投資は労働力不足の解消につながる対策の一つである。
・新制度「育成就労制度」を見据えた積極的な外国人労働者の活用
労働力不足を補う有効な手段として、外国人労働者の受け入れを加速させることが重要である。現在、これまでの「技能実習制度」に代わり、国内での外国人労働者の育成と確保を主眼に置いた「育成就労制度」の下での受け入れ準備が進んでいる。
育成就労制度は、2024年6月に「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」が公布され、2027年4月から運用を開始する。
これまでの技能実習では目的が国際貢献であったため、最長5年で帰国することを前提としている。育成就労制度においては、3年間の就労を通じて「特定技能1号」の水準までスキルを引き上げ、日本国内での人材育成・人材確保を目的としている。受け入れ時点で日本語能力要件(JLPT N5=基本的な日本語をある程度、理解することができる)を加えている点も育成する上で大きなポイントだ。
外国人労働者は、特定技能1号から2号にステップアップすれば、家族の帯同が可能になり、在留期間が無期限になるなど、魅力的なキャリアパスが提示されている。企業にとっても、長期的な人材確保が可能になるので、労働力不足を抱える企業には大きな意味を持つ。
- ※参考:[出入国在留管理庁]育成就労制度
企業が今後取り組むべきは、以下の点が挙げられる。
-
‐特定技能へのスムーズな移行支援
:長期的な戦力として定着してもらうための教育体制。 -
‐キャリアアップシステムの活用
:「建設キャリアアップシステム(CCUS)」への登録を行い、能力を正しく評価する仕組みづくり。 -
‐日本語教育と生活支援
:現場での安全確保と離職防止のため、コミュニケーション面でのサポートを強化。
新制度への理解を深め、外国人労働者を「一時的な労働力」ではなく「共に成長するパートナー」として受け入れる体制を整えることが、長期的な労働力不足の解消につながるだろう。
・労働環境の見直しを図る
建設業界には、長らく「3K(きつい・汚い・危険)」のイメージがあり、若手から敬遠される傾向がある。働き方改革関連法によって、長時間労働を改善するために時間外労働の上限規制が設けられたが、幅広い人材を確保するには、さらなる労働環境の改善が求められる。
ワーク・ライフ・バランスを保ちやすい労働環境を整備することは、人材確保や離職防止につながり、結果的に労働力不足の解消も図れる。
(4)建設業の労働力不足に関するよくある質問
ここでは、建設業の労働力不足に関するよくある質問を紹介する。
Q1.建設業の「2024年問題」による労働力不足は、現在どのような状況ですか?
2024年4月から時間外労働の上限規制が罰則付きで適用されたことで、1人あたりの労働時間に制限がかかり、実質的な労働供給量は減少しています。2026年現在は、この規制に適応するための「適正な工期設定」や「ICTによる省力化」が業界全体の急務となっており、対策を講じている企業とそうでない企業の間で、人材確保の格差が広がっています。
Q2.新制度「育成就労制度」は、従来の技能実習制度と何が違うのですか?
最大の違いは、制度の目的が「国際貢献」から「人材確保・育成」に明確化された点です。3年間で「特定技能1号」水準のスキル習得を目指すカリキュラムが組まれ、一定の条件下で転籍(職場移動)も認められるようになります。これにより、外国人労働者にとって日本で働く魅力が高まり、長期的な戦力として定着しやすくなることが期待されています。
Q3.小規模な建設会社でも、ICT活用で労働力不足を解消できますか?
はい、可能です。大規模な重機の自動運転だけでなく、ドローンによる測量や、スマートフォンを用いた写真管理・日報作成のクラウド化など、身近なICT活用から始めるだけでも大幅な時短効果が得られます。事務作業や現場管理の効率化によって生まれた時間を現場作業に充てる、あるいは休日を増やすことで離職を防ぐなど、小規模な組織こそICTによる省力化の恩恵を大きく受けることができます。
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