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建設業における36協定とは? 他業種とは異なる労働実態について解説

2026/1/14

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建設業における36協定とは? 他業種とは異なる労働実態について解説

建設業界においても、労働時間管理の重要性が高まっている。特に「36協定」の理解と順守は、長時間労働が常態化しやすい建設現場において喫緊の課題と言える。

時間外労働の上限規制は、建設業については5年間の猶予が与えられていたが、2024年4月より本格的に適用されている。本記事では、36協定の基本から建設業特有の実態、今後求められる対応を解説する。

(1)建設業における36協定

長時間労働が常態化しやすい建設現場では、労働時間の管理が一層重要な課題になっている。そこで欠かせないのが「36協定」の理解である。

以下では、36協定の基本的な仕組みから、建設業特有の事情に照らした現状・課題を解説する。

36協定とは何か

36協定とは、法定労働時間を超える労働を行わせる場合に、労使間で締結しなければならない協定である。日本の労働基準法では、1日8時間、週40時間を超えて労働させることを原則として認めていない。

これを超える時間外労働や休日労働を行わせるには、労働者と使用者の間で「時間外及び休日労働に関する労使協定」を結び、所轄の労働基準監督署に届け出る必要がある。この協定の法的根拠が労働基準法第36条にあることから、「36協定」と呼ばれている。

なお、36協定の届出の有無にかかわらず、実際に法定労働時間を超えた労働が発生した場合には、25%以上を割増した賃金を支払うことが義務づけられている。これらの基本的なルールは、建設業であっても他業種と同様に適用される。

建設業36協定の関係

建設業においては、天候の変化や資材供給の遅延などにより、工期の見通しが立てにくく、突発的な対応が求められる場面が多い。また、慢性的な人手不足も加わり、労働時間の管理が困難になりやすい。

こうした事情を踏まえ、2019年4月から一般企業に適用された罰則付き時間外労働の上限規制について、建設業に関しては上限規制の適用が、5年間猶予された。この期間中、建設業界には準備期間が与えられ、2024年4月以降、他業種と同様に、上限規制が本格的に適用された。

(2)建設業の36協定における時間外労働の上限

2024年4月より、建設業界にも時間外労働の上限規制が本格的に適用された。これまで猶予されてきた制度が、ついに他業種と同様に適用されることにより、現場の労務管理は新たな段階へと進んだ。

ここからは、建設業36協定における時間外労働の上限について解説する。

36協定締結時の時間外労働上限

建設業においても、36協定を締結することで時間外労働を認めることは可能だが、2024年4月以降、その上限は「月45時間・年360時間」と定められている。

仮にこの規定に違反した場合、労働基準法にもとづき6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性がある。従って、法令を正しく理解し、協定内容を順守することが求められる。

・特別条項付き36協定締結時の時間外労働上限

臨時的な特別な事情がある場合は「月45時間・年360時間」を超えられるが、別途詳細な上限が決められており、次の4点を順守しなければならない。

  • ‐時間外労働は年720時間以内
  • ‐時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
  • ‐時間外労働と休日労働の合計時間が2~6カ月平均で80時間以内
  • ‐月45時間を超える時間外労働は1年で6カ月まで

これらの条件を超過した場合、法令違反とみなされ、罰則の対象になる。特別条項の導入は、あくまで臨時的措置であることを踏まえ、運用には十分な注意が必要である。

・建設事業の例外規定

災害復旧・復興のための事業にかかる労働に対しては、例外規定として時間外労働の上限規制の一部が適用されない。このような例外規定は他業種には見られない特徴であり、建設業界特有の重要なポイントである。

人事・労務担当者は、こうした特例の存在を正しく理解し、どの業務が例外に該当するかを明確に把握しておく必要があるだろう。

(3)建設業が36協定を順守するために意識すべきポイント

建設業界において36協定を順守するためには、単に法令を理解するだけでは不十分である。労働時間の実態を正確に把握し、効率的な現場運営と働き方の改革を両立させることが不可欠だ。

近年はデジタル技術の活用や働き方の多様化を背景に、労務管理の手法も変革を迫られている。ここでは、建設業が特に意識すべきポイントを解説する。

・実態を可視化できる勤怠管理

従来のアナログ的な勤怠管理では、従業員の労働時間を正確に把握し切れず、時間外労働の上限超過に気づかないリスクが高い。建設業は多くの場合、事務所に出勤するのではなく、直接現場に向かう直行直帰の働き方が主流であるため、労働時間の管理は一層難しくなる。

そのため、勤怠管理システムを導入し、リアルタイムで従業員ごとの時間管理ができる仕組みが必要である。正確な勤怠管理は、法令順守はもちろんのこと、業務効率化にも寄与するため、企業の経営基盤の構築にもつながっていくであろう。

DX推進による生産性向上

建設業の労働時間削減と生産性向上には、DXの推進が欠かせない。事務作業にはクラウドサービスを導入し、現場ではドローンやICT建機などの先端技術を活用し、生産性の向上を図り、人材不足を補うことが可能になる。

こうした技術革新を積極的に取り入れ、業務のDX化を推進することは、労働時間の適正管理だけでなく、慢性的な人手不足の解消にもつながる。建設業にとって、業務のDX化は重要な課題だと言える。

週休2日制

建設業は他業種に比べて休日が少なく、離職率が高いことの一因になっている。そこで、2024年4月から施行された時間外労働の上限規制に合わせ、週休2日制の導入が推奨された。

週休2日制の実現は、労働者のワーク・ライフ・バランスを改善し、業界全体の働きやすさの向上につながるものだ。多様化する働き方のニーズに応え、建設業に対するネガティブなイメージを払拭する狙いもある。

国土交通省も公共工事を中心に週休2日制の推進を表明しており、義務化には至っていないものの、影響力の強い公共事業を起点として、業界全体での導入が加速していくことが考えられる。こうした流れに対応し、週休2日制を積極的に取り入れる姿勢が必要なのである。

(4)建設業における36協定以外の規制

36協定」以外にも、労働環境を整備するための重要な規制が存在する。「同一労働同一賃金」や「月60時間超の時間外労働に対する割増賃金」など、近年の法改正により、対応を求められている。

ここからは、建設業における36協定以外の規制について詳しく見ていく。

同一労働同一賃金への対応

同一労働同一賃金とは、正規雇用者、非正規雇用者にかかわらず、同じ業務を遂行している場合の不合理な賃金格差を是正することを目的としている。ここでいう待遇には、賃金だけでなく、休日の取り扱いや福利厚生、教育の機会なども含まれる。

これは、建設業に限らず全産業を対象とし、2020年4月(中小企業は2021年4月)から開始された。建設業界では、有期契約労働者や派遣労働者の割合が比較的高いため、正社員との間に待遇格差が生じやすい傾向がある背景から、不合理な待遇格差の解消が求められている。

・月60時間超の時間外に対する割増賃金

月60時間を超える時間外労働に対しては、通常25%以上とされていた割増賃金率を50%以上に引き上げた。これは2019年4月から大企業に対して適用され、2023年4月からは中小企業にも適用され、建設業においても同様に適用されている。

業務の効率化や現場の生産性向上、コストの見直しなど、組織全体での対応が急務になった。

(5)建設業の36協定に関するよくある質問

ここでは、建設業36協定に関するよくある質問を紹介する。

Q1.建設業でも36協定の時間外労働の上限は「月45時間・年360時間」で固定ですか?

はい。2024年4月から建設業にも本格適用され、原則として「月45時間・年360時間」が上限です。ただし、特別条項付き36協定を締結した場合のみ、一定条件の範囲内で上限を超えることが認められます。

Q2.特別条項付き36協定を結べば、繁忙期は自由に時間外労働を増やしても良いのですか?

いいえ。増やせる時間には厳しい上限があり、「年720時間以内」「1カ月100時間未満」「2~6カ月平均80時間以内」など複数の規制をすべて守る必要があります。これを超えた場合は罰則の対象になります。

Q3.建設業時間外労働の上限規制において例外はありますか?

災害復旧・復興工事については、一部の上限規制が適用除外となる例外規定があります。ただし、通常の建設工事は例外とならないため、担当者は対象業務を正確に判断する必要があります。

(6)まとめ

建設業界における36協定の理解、そして実行は、今や法令順守だけでなく企業の信頼性や人材確保にも直結する重要課題だと言える。2024年4月からは建設業に対する上限規制の猶予も終了し、他業種同様に厳格な労働時間管理が求められている。

勤怠管理デジタル化DX推進、週休2日制の導入などの改革を進めながら、より働きやすい環境を構築していくことが、今後のカギを握るであろう。

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