建設業に必要な新しい働き方とは? 働き方改革関連法への対応について解説
2026/1/21

建設業界は、人手不足や長時間労働、過酷な労働環境といった課題を抱え、従来の働き方のままでは持続的な成長が難しい状況にある。しかし、働き方改革への取り組みを進めることで、従業員の定着率向上や生産性の改善、企業の競争力強化など、多くのメリットを得られる。
本記事では、建設業界が直面する課題の整理から、働き方改善による具体的な効果、さらには取り組むべき施策まで、幅広く解説する。
(1)建設業界の働き方の課題
建設業において、人材不足の深刻化、長時間労働の常態化、労働環境の厳しさといったさまざまな問題があり、業界全体の働き方そのものを抜本的に見直す必要がある。
ここでは、建設業界が直面している課題を整理し、働き方改善の実現に向け考察する。
・建設業界の人材不足
建設業界が直面している最大の課題の一つは、深刻な人材不足である。建設業は、団塊の世代の離職や少子高齢化に伴う働き手の不足に加え、他業種よりも離職率が高い実情がある。
建設業就業者数は、2024年時点で55歳以上は36.7%に達し、29歳以下の若年層はわずか11.7%にとどまっている。このデータからも明らかなように、建設業界の高齢化は著しく、若手人材の育成・確保が進んでいない状況が浮き彫りになっている。
今後は労働人口全体の減少が進む中で、建設現場における安定した人材確保と、次世代への技術継承が急務になるだろう。
・長時間労働の常態化
建設業においては、人材不足が慢性化しているにもかかわらず、建設需要は依然として多い。そのため、限られた人員で短い工期をこなさなければならず、結果として1人あたりの労働時間が長時間化する傾向が続いている。
建設業における年間労働時間は、製造業と比較して31時間、全産業平均と比べると48時間も長い。さらに、年間出勤日数についても、製造業より11日、全産業平均より10日多いというデータが示されており、他業種と比べて過酷な労働環境に置かれていることがわかる。
また、休日取得の実態についても課題がある。建設工事全体の約6割が「4週6休以下」となっているのだ。このような長時間労働の常態化は、働き手の健康問題や定着率の低下を招くだけでなく、業界全体にも大きな影響を与えるため、早急な改善が求められる。
(2)建設業界における働き方を改善するメリット
建設業界では、従来の長時間労働や過酷な作業環境が課題とされてきた。しかし、働き方の改善に取り組むことで、従業員の定着率向上や生産性のアップ、さらには企業の競争力強化など、多くのメリットが期待できる。
ここでは、建設業界における働き方の改善がもたらす具体的な効果について詳しく解説する。
・離職率を抑えられる
職場環境を整えることは、従業員の定着率向上に直結する。快適で働きやすい職場は社員のモチベーションを高め、長期間にわたり働き続けたいという意欲を引き出すだろう。その結果、人材の流出を防ぎ、企業や業界全体の安定した成長に貢献する。
・求職者から選ばれる職場になる
働きやすい環境や手厚い福利厚生は、求職者にとって大きな魅力だ。こうした職場を提供している企業は、優秀な人材からの注目度が高く、採用活動も円滑に進めやすくなる。結果として、業界全体で深刻な人材不足の緩和にもつながると言える。
・生産性アップにつながる
職場環境の改善は、従業員の業務効率にも大きく影響する。安全で整備された作業スペースや効率的な設備が整うことで、社員は集中して業務に取り組むことができ、作業スピードや成果の質も向上するだろう。これにより、納期順守や高品質なプロジェクト完成が可能になる。
・企業競争力の強化につながる
従業員が働きやすい環境で最大限の力を発揮できることは、企業の競争力向上にも直結する。生産性やプロジェクトの品質が向上することで、他社との差別化が可能になり、業界内での優位性を確立できるだろう。結果として、持続的な成長と収益向上につながる。
・業界イメージの刷新を図れる
従来、建設業界は「厳しい労働環境」というイメージが強くある。しかし、労働環境の改善に積極的に取り組むことで、業界全体の印象がポジティブに変わり、若手や新しい人材の参入がしやすくなる。これは長期的な人材確保にもつながる重要なポイントだ。
(3)働き方を改善するために建設業が取り組むべきこと
国土交通省は建設業の働き方の改善に向け、「建設業働き方改革加速化プログラム」を定めた。これをもとに、以下では、働き方を改善していくために建設業が取り組むべきことを解説する。
・長時間労働の是正
建設業では、長時間労働の原因を細分化し、改善に向けた具体的な取り組みをする必要がある。具体的には、「週休2日制の推進」「適正な工期設定」「労務時間管理の適正化」などが挙げられる。
‐週休2日制の推進
建設業の労働環境を他業種と同等に整備するためには、週休2日制の導入が不可欠である。他業種が週休2日制を導入すれば、休日が確保されない業界からは人材が流出してしまう。
この状況を改善するため、まずは公共工事において週休2日制の浸透を図り、制度化を進めている。公共事業での成功事例を足掛かりに、民間工事へと普及させる狙いである。
また、週休2日制を実施した企業には適切な評価を与える制度を設け、業界全体としての意識改革が必要だ。
‐適正な工期設定
建設業において、適切な工期設定という視点は、非常に重要である。建設業における過重労働の原因の一つは、短い工期の設定にある。
国土交通省は、「適正な工期設定等のためのガイドライン」の見直しを進めるとともに、「工期設定支援システム」の活用を推奨している。課題となっている短い工期設定を適切な水準に見直すことで、労働者の負担軽減を目指す必要がある。
‐労働時間管理の適正化
労働時間管理の適正化にも取り組む必要がある。これまで建設業では、労働時間の把握が自己申告に依存するケースが多かった。
しかし今では、従来の自己申告による勤怠管理は原則認められず、タイムカードやパソコンのログ管理など、客観的に勤務実態を示す情報を用いた管理が義務づけられた。これにより、適正な労働時間の把握と、過重労働の未然防止が可能になる。
・給与や社会保険制度の見直し
働き方を改善していくためには、給与や社会保険制度の見直しも不可欠である。適切な賃金水準の確保と、公正な能力評価にもとづく給与体系の整備は、人材確保や定着率向上に直結する重要な施策である。
建設業界では、技能にもとづき正しく能力評価するために「建設キャリアアップ」への加入を推進している。また、社会保険制度についても、2020年以降は加入が実質的に義務化されている。
新規に建設業の許可を取得する場合や、許可の更新時には社会保険への加入が必須になっており、未加入事業者は許可の取得・更新が認められない。
・生産性向上への取り組み
労働時間を短くする中で企業の競争力を維持するには、労働密度を高める必要がある。慢性的な人手不足が続く建設業界においては、DXや効率的な人員配置により生産性を高める取り組みが求められる。
そこで注目されているのが、IoTやICT建機の導入によるデジタル化である。これらの技術を活用することで、工期の短縮と人件費の削減が実現できる。
このように、建設業における生産性の向上への取り組みは、重要な戦略であり、今後の業界の発展に向けたカギと言えるだろう。
‐DXによる業務効率化
DXによる業務効率化など、最先端のITツールの導入により作業効率を高めることは、非常に重要である。ウェアラブルカメラによる遠隔管理や、タブレット端末による書類手続きの電子化は、現場作業の効率化と管理コストの削減に大きく寄与するものだ。
さらに、ICT建機の導入により、オペレーターの負担が軽減される。これらの技術を導入することで、人件費の高騰や人材確保の難しさといった課題に対応していく必要がある。
‐技術者配置要件の見直し
現場技術者の配置に関する規制を緩和し、複数現場の兼務や主任技術者の業務範囲拡大など、限られたリソースを有効に活用する取り組みも重要である。
具体的には、一人の監理技術者が複数現場を兼務できる制度の整備や、上位企業が下位企業の主任技術者の業務を補完することを認めるといった規制緩和が実施されている。
こうした取り組みにより、限られた技術者を有効的に活用しつつ、現場の安全性と品質を維持する仕組みの構築が求められている。
(4)建設業の働き方に関するよくある質問
ここでは、建設業の働き方に関するよくある質問を紹介する。
Q1.建設業の働き方改革は、いつから対応が必要ですか?
建設業でも働き方改革関連法の適用がすでに始まっており、時間外労働の上限規制や労務管理の適正化への対応が求められています。早めに自社の労働環境を見直すことが重要です。
Q2.中小規模の建設会社でも働き方改革は実現できますか?
可能です。週休2日制の段階的導入や勤怠管理のデジタル化など、無理のない範囲から取り組むことで対応できます。補助金や支援制度を活用することで、負担を抑えながら進めることも可能です。
Q3.働き方改革に取り組むことで、建設会社にはどのようなメリットがありますか?
離職率の低下や人材確保のしやすさ、生産性の向上などが期待できます。働きやすい職場づくりは企業の評価向上にもつながり、長期的には競争力強化や安定した経営に寄与します。
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