建設業で人材確保が難しい理由とは? 採用・定着が進まない構造と対策4選
2026/2/25

建設業界では慢性的な人手不足が続く中、「採用しても人材が集まらない」「入社しても定着せずに離職してしまう」といった課題を抱える企業が少なくない。
就業者数の減少や高齢化、建設需要の高まり、働き方改革による労働時間規制など、外部環境の変化が重なることで、建設業における人材確保は年々難しさを増す。
しかし、同じ市場環境にあっても、安定的に人材を確保し、定着につなげている企業が存在するのも事実。本記事では、建設業で人材確保が難しい構造を「採用」と「定着」の観点から整理した上で、企業が取り組むべき具体的な人材確保対策4選を解説する。
(1)建設業界で進む人手不足の実情
国土交通省によると、建設業における就業者数はピークであった1997年の685万人に対して、2024年は477万人であり、27年で約210万人減少している。
建設業界では就業者数の減少が続いており、企業は限られた人材の中で採用活動を行わなければならない状況にある。こうした環境は、人手不足そのものに加えて、採用や定着が進みにくい「人材確保の構造的な課題」を生み出している。
・人材の高齢化と若手就労者離れ
人材の高齢化と若手就労者離れは、人手不足を引き起こす要因の一つである。国土交通省の調査によると、建設業において、就業者全体に占める55歳以上の割合は増加傾向であり、2024年時点では約37%に達している。
一方で、29歳以下の就業者の割合は低下傾向にあり、2021年は約12%にとどまっている。この背景には、少子高齢化の進行による労働人口減少に加えて、建設業界の過酷な労働環境がワーク・ライフ・バランスを重視する若手就労者に敬遠されていることが挙げられる。
さらに、団塊の世代である熟練技能者の引退が進んでおり、建設業界の人手不足が一層深刻な状況に陥ることが懸念されている。
・建設需要が高まっている
建設や土木工事に充てられた金額を表す「建設投資」は、2010年度以降増加傾向にあり、需要が高まっている。建設投資は、1992年度の84兆円をピークに減少局面に入り、2010年度には41.9兆円まで縮小した。
しかし、東日本大震災からの復興にかかわる需要増加や、民間企業の設備投資が回復したことによって、2010年度以降は増加傾向に転じている。さらに、国土交通省の予測では、2025年度の建設投資は75兆円に達し、2024年度と比べても3.2%増加する見込みである。
建設需要が拡大する一方で、採用市場における人材供給は限られており、企業間での人材獲得競争が激化している。結果として、人材を確保する難易度が高まっている。
・労働時間の上限規制
建設業の人手不足は、働き方改革関連法の影響も無視できない。この法律は、労働環境の向上を図ることを目的に「長時間労働の是正」「同一労働同一賃金の実現」「多様で柔軟な働き方の推進」を柱として掲げている。
これらの中でも特に、長時間労働の是正を目的とした時間外労働に対する上限規制が、人手不足の要因として挙げられる。時間外労働の上限規制については、一般の大企業は2019年4月、中小企業は2020年4月に施行された。
ただし、建設業においては従来の長時間労働や休日出勤を前提とした体制、慢性的な人手不足を踏まえ、5年間の移行期間が設けられていた。この移行期間はすでに終了しており、2024年4月1日から建設業界にも罰則を伴う時間外労働の上限規制が適用されている。
災害対応のような例外を除き、原則として一般企業と同じく、時間外労働は月45時間・年360時間の上限が定められた。その結果、限られた人員で現場を回す必要が生じ、採用計画や配置計画に影響を及ぼしている。特に新規採用が進まない企業では、人材確保の難しさが顕在化している。
(2)建設業で「採用」がうまくいかない理由
ここでは、人手不足という外部要因ではなく、採用活動のプロセスにおいて生じやすい課題に焦点を当て、建設業で採用が進まない理由を解説する。
・求人を出しても応募が集まりにくい
建設業界では、求人を出しても十分な応募が集まらないという課題を抱える企業が多い。その背景には、求職者が業界や職種を選ぶ段階で、建設業が最初から選択肢に入らないという構造がある。
若手就労者は、仕事内容や働き方を重視して就職先を検討する傾向が強く、「体力的にきつい」「休みが少ない」といったイメージが先行すると、求人情報を詳しく確認する前に敬遠してしまうことがある。
・仕事内容や働き方が十分に伝わっていない
建設業では、実際の現場や働き方が外部に伝わりにくいという側面がある。例えば、労働環境の改善やICT活用を進めている企業であっても、それを求職者に分かりやすく発信できていないケースは多い。
求人票に記載される情報が抽象的であったり、従来の表現のままで更新されていなかったりすると、求職者は過去のイメージのまま業界を判断してしまう。結果として、企業側が伝えたい魅力と、求職者が受け取る印象にズレが生じ、採用機会を逃している。
・採用条件や募集設計が市場と合っていない
採用条件や募集要件が、現在の労働市場と合っていないことも、採用が進まない要因の一つである。経験者を前提とした募集や、休日・勤務時間の条件が限定的な場合、応募できる人自体が限られてしまう。
「自分が応募してもよいのか分からない」と感じる求人は敬遠される傾向にある。採用市場の変化に合わせて、間口を広げた募集設計ができていないことが、採用の難しさにつながっている。
(3)建設業で「定着」が進まない理由
採用に成功したとしても、入社後に人材が定着しなければ、人手不足は解消されない。ここでは、建設業において定着が進みにくい理由を、入社後の環境や仕組みの観点から解説する。
・入社前後のギャップが生じやすい
建設業では、入社前に抱いていたイメージと、実際の仕事内容や働き方との間にギャップが生じやすい。仕事内容や現場の実情が十分に説明されていない場合、入社後に「思っていたのと違う」と感じ、早期離職につながることがある。
特に若手就労者にとっては、働き方や人間関係への不安が大きく、入社後のギャップは定着に大きな影響を与える要素である。
・育成やフォロー体制が属人化している
建設現場中心の業務が多い建設業では、育成や指導がOJTに依存しやすい傾向にある。その結果、教える人によって指導内容やフォローの質に差が生じ、若手が不安や不満を抱えやすくなる。
体系的な教育制度や、定期的な面談・フォローの仕組みが整っていない場合、従業員が孤立しやすく、離職のリスクが高まる。
・将来像やキャリアパスが見えにくい
建設業界では、経験を積むことで技術力が高まる一方で、将来的にどのような役割やポジションを目指せるのかが見えにくい企業も多い。評価基準や昇給の仕組みが不明確な場合、従業員は長く働くイメージを描きにくくなる。
若手就労者にとっては、「この会社で成長できるのか」「将来の生活が安定するのか」が重要な判断材料であり、キャリアの見通しが立たないことが定着を妨げる要因になっている。
(4)建設業における人材確保対策4選
ここでは、建設業界における人材確保対策を紹介する。
①行政の支援を活用する
国土交通省と厚生労働省は連携し、建設業界の人材確保や育成に対するさまざまな支援を実施している。中でも、若手や女性の入職・定着促進を重視しており、就労者と企業のマッチング支援や、助成金による支援などを実施している。
助成金には「トライアル雇用助成金」や「人材確保等支援助成金」「人材開発支援助成金」などがある。これらは、労働環境改善や従業員の教育にかかる費用などの一部を国が助成する制度である。助成金を活用することで、企業は負担を抑えながら、人材確保や育成に取り組める。
②若手就労者に向けた情報発信を強化する
SNSに慣れた若手就労者に向けた情報発信の強化も、人材確保対策の一つである。若手就労者は、インターネット上で就職活動に関する情報を取得する傾向がある。
そのため、ハローワークや専門情報誌への求人情報掲載に加えて、SNSやオウンドメディアを活用して、自社の情報を発信することは人材確保につながる。建設業界のマイナスイメージを払拭し、自社の魅力を伝えることが重要である。
③労働環境の改善や給与体系の見直し
若手就労者の確保や定着には、労働環境や給与体系の見直しが欠かせない。例えば、ワーク・ライフ・バランスを重視する若手就労者が魅力を感じるような勤務形態の整備や、IT技術を活用した業務効率化の推進などが考えられる。
また、教育制度の充実や、活躍に見合った給与体系の整備も必要である。このように、若手がモチベーションを保ち、仕事とプライベートを両立できる環境を整えることが人材確保・定着に重要である。
④若手や求職者に選ばれるためのテクノロジー活用と業務効率化
人材確保が難しい状況において、人手不足を補う有効な方法の一つが、テクノロジーの活用である。例えば、紙で保管していた資料をペーパーレス化してクラウド上で共有したり、ドローンやロボットに任せられる作業を人から移行したりする方法がある。
このように、テクノロジーを活用して業務を効率化することは、人手不足を補うだけでなく、従業員の負担軽減にもつながる。
(5)まとめ
建設業界では、人手不足が深刻な課題である。その背景には、建設業界における就業者数減少、高齢化と若手就労者離れ、建設需要の高まり、時間外労働の上限規制など、さまざまな要因が重なっている。
さらに、団塊の世代である熟練技能者の引退が進んでおり、建設業界の人手不足が一層深刻な状況に陥ることが懸念されている。人手不足に対応するためには、行政支援の活用や、若手就労者に向けた情報発信の強化、労働環境や給与体系の見直し、テクノロジー活用などの取り組みが必要である。
このような多角的な取り組みを通じて、魅力的な職場環境を整備することが、人材確保のカギを握る。人手不足という外部環境を踏まえつつ、自社の採用・定着の仕組みを整えることが、建設業における人材確保の第一歩になる。
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