建設業の離職率を下げる方法とは? 他業種と比較した労働環境について解説
2026/1/28

(1)建設業の早期離職率
建設業界では、若年層の早期離職が課題となっている。新卒入社後3年以内に退職した社員の割合は、大卒では全産業と同水準であるものの、高卒では高い状況にある。
2022年3月に卒業した新規高卒者のうち、建設業に入職して3年以内に離職した割合は41.4%であり、全産業平均の37.9%を上回っている。一方、新規大卒者においては、建設業が30.5%、全産業では33.8%となっており、建設業の方がわずかに低い結果となった。
このデータから読み取れるのは、高卒者の早期離職が特に深刻であるという事実である。大卒者も約3割が離職しており、業界として若手人材の定着に課題を抱えている状況だ。厳しい労働環境や将来への不安などが、若年層の離職を後押ししている可能性がある。
(2)建設業の主な離職理由
建設業界における人手不足の一因として、若手人材の離職が深刻な課題に挙げられる。特に新規入職者においては、業界特有の労働環境や待遇に対する不満が離職に直結しているケースが多い。
以下では、建設業における主な離職理由について、具体的な要因を挙げながら解説する。
・繁忙期の長時間労働
建設業では工期が決められており、工事の進捗が遅れると業務が定時で終わらないことが多い。実際、2022年時点の常用労働者の年間総実労働時間を見ると、全産業平均が1,633時間なのに対し、建設業は1,966時間と、年間で約300時間も長くなっている。
特に入職直後の若手社員は、業務を覚える必要から長時間勤務をする傾向にある。これに加えて、残業や休日出勤が常態化すれば、心身ともに疲弊しやすくなる。
また、家族や友人との時間が取りにくく、プライベートの充実が難しい状況もストレス要因になり得る。建設業におけるこのような環境こそが、早期離職の一因になっているのである。
・休日が少ない
建設業界では、慢性的な人手不足や業務量の多さにより、週休2日制を実現できていない企業が多い。加えて、天候不良や納期の都合から、土日祝日を含めた稼働が求められる現場も珍しくない。
こうした実態により、労働者は十分な休息を取ることが難しく、結果としてストレスや疲労が蓄積されやすくなる。家族や友人との時間が確保できないことで、ワーク・ライフ・バランスが崩れ、仕事へのモチベーションが低下し、離職率が高まる傾向にあるのだ。
・人間関係を構築しにくい
建設業界では、在籍社員が高齢化しているため、若手社員が孤立しやすく、職場になじみづらい。また、上下関係や指示命令型の文化が色濃く残る企業も多く、価値観の違いから人間関係に摩擦が生じることもある。
若手が成果をあげても、年功序列的な風土によって正当な評価が得られず、やりがいを感じにくいといった問題もある。さらに、建設現場は多職種が連携する必要があるため、業務内容の違いによるコミュニケーションの難しさも、人間関係を築きにくい要因の一つだと言える。
・適切な評価が得られにくい
建設業においては、建設現場の目標達成にどれだけ貢献したかの評価基準が明確でないことも多く、優秀な個人が適切に評価されないケースもある。
個々の貢献が十分に評価されないと、優秀な人材であってもやりがいや達成感を得にくくなり、モチベーションの低下につながる。若手社員にとって、成長や評価が実感できない職場環境は、モチベーション低下につながり、結果として離職率を高める。
・労働時間に対して賃金が低水準
建設現場では、日給制の給与体系が多く、賃金が低水準であることが多い。シビアな納期と肉体的な負担に見合った賃金を得られないと感じる若手社員が多い。
現場では、気温や天候に関係なく厳しい納期に対応しながら、体力的にも大きな負担を強いられる。その一方で、賃金が労働の質や量に見合っていないと感じる若手社員が多く、結果的に離職につながっている。
責任の重さや肉体的負荷に見合った報酬が得られないという不満は、業界としての離職を加速させる要因になっている。
(3)建設業の離職率低下を防止するための具体的な対策
建設業における離職率の低下を防ぐためには、従業員の働きやすさを向上させる具体的な施策が必要である。労働環境や職場の風土の改善を図り、社員の満足度と定着率を高めることが、業界全体の課題解決に直結する。
以下に、離職率低下を防止する具体的な施策を挙げる。
・DXによる業務の効率化
建設業においてDXを推進することは、非常に効果的な施策である。AI、ITツール、クラウドサービスを活用し、個々の業務が効率化されれば作業負荷が軽減され、長時間労働の解消につながる。
例えば、スマートフォンやタブレットを活用すれば、現場で即時に勤怠を管理し、図面や工数を確認することが可能である。また、業務管理システムにより情報共有がスムーズになる。
これにより社員の長時間労働が抑制され、休暇制度や賃金面の改善にもつながるだろう。
・週休2日制など休暇を取得しやすい仕組みの導入
離職率を下げるためには、企業側から休暇の取得を促す仕組みを整える必要がある。週休2日制を導入すれば、必然的に従業員の休暇が確保され、健康管理の推進にもつながる。
企業側から積極的に休暇取得を促すことで、「休みにくい」という職場風土を改善し、ワーク・ライフ・バランスの向上を図ることができる。結果として、社員の疲労の蓄積を防ぎ、長期的な職場定着につながるだろう。
・若手社員の居場所づくり
若手社員の離職防止のためには、昔ながらの上下関係を見直し、若手社員と意見交換できる職場環境を構築することが大切である。そのためには、企業風土を変えていく必要がある。在籍社員の意識改革も重要であり、年齢や職種の壁を越えたコミュニケーションの促進が求められる。
このためには、定期的な1on1ミーティングやチャットツールの活用など、気軽に感謝や意見を伝えられる場を設けることが効果的である。これにより、異なる職種との相互理解も深まりやすくなる。若手が居場所を感じられる環境は、モチベーションを維持するとともに、離職防止に直結する重要な要素なのである。
・評価制度の見直し
離職率を下げるには、労働環境の変化や若手社員のニーズに合わせ、評価制度を見直す必要がある。また、社員との対話を通して、会社側が評価において何を重視するかという点を明確にし、納得感のある評価制度を構築することが求められる。
具体的な評価基準を示すことで、社員のモチベーションを高められる。能力評価、業績評価、行動評価の中から自社に適した方式を選択もしくは組み合わせて、評価の目的と方法を社員に丁寧に伝えておくことが重要である。
適切な評価は、社員の働き方やモチベーションに大きな影響を与え、定着率向上に寄与するだろう。
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