医療従事者の給料はいくら? 平均年収・職種別の相場・手当の仕組みを解説
2026/6/17

医療従事者の給料は、医師・看護師・薬剤師といった職種ごとに大きな差があり、その水準や内訳は一般企業とは異なる構造を持つ。また、勤務地域や病院の規模・機能によっても待遇が変わるため、全体像を把握しにくい分野でもある。
本記事では最新の公的統計にもとづき、医療職の平均年収や職種別の相場を整理して解説する。さらに「医師の働き方改革」に伴う宿直手当や自己研鑽(けんさん)の労務管理、2026年度診療報酬改定への対応を踏まえた賃上げ戦略まで、労務担当者が押さえるべきポイントを網羅している。
(1)公的統計で見る医療従事者の平均給料・年収の実態
医療従事者の給料は、職種や年齢、勤務先の種類や地域など複数の要因によって構成されるため、単一の平均値だけでは実態を捉えきれない。
ここでは、厚生労働省が実施する「賃金構造基本統計調査」をはじめとする公的統計をもとに、医療職の給与構造を整理する。職種間・年齢間・地域間でどのような差が生じているのかを見ていく。
・職種別に見る平均年収の違い
医療従事者の給与は職種ごとに大きく異なり、業務上の責任範囲や専門性、および夜勤・交替制勤務の有無が賃金水準に直結する構造になっている。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、推定される医師の平均年収は約1,512万円、薬剤師は同約567万円、看護師は同約525万円であり、資格による専門性と業務負担の差が明確に確認できる。もっとも、看護師の年収は夜勤手当や深夜割増賃金の影響を受けやすく、勤務形態によって収入の内訳や実態に差が生じやすい点には留意が必要である。
■職種別の推定平均年収
| 職種 | 推定平均年収 | 主な給与構成要因 |
|---|---|---|
| 医師 | 約1,512万円 | 高度な診療責任・長時間労働(宿直含む) |
| 薬剤師 | 約567万円 | 調剤報酬にもとづく専門性・薬局等の施設依存 |
| 看護師 | 約525万円 | 夜勤手当・交替制勤務手当・地域手当 |
- ※厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」のデータにもとづく
- ※推定平均年収は「きまって支給する現金給与額×12カ月+年間賞与その他特別給与額」より推定
・年齢階層別に見る平均年収の違い
年齢別の賃金は、一般的に経験年数の蓄積に伴い段階的に上昇する。特に医療現場では、中堅層以降の役職登用や専門資格手当の付与が、収入変動の大きな要因だ。
■年齢階層別の推定平均年収
| 年齢階層 | 推定平均年収 | 特徴 |
|---|---|---|
| 20代 | 約426万円 | 初期研修・基礎実務習得期 |
| 30代 | 約528万円 | 中堅層・夜勤回数の増加・専門資格取得 |
| 40代 | 約568万円 | 役職登用(師長・部長等)による手当の反映 |
| 50代 | 約604万円 | 給与のピーク層・管理職としての責任報酬 |
- ※厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」のデータにもとづく
- ※推定平均年収は、「きまって支給する現金給与額×12カ月+年間賞与その他特別給与額」により算出した各年齢階層の年収を、当該階層の労働者数で加重平均して推定したもの
・地域別による給与格差
医療職の給料は地域によっても差が生じ、基本的には都市部ほど高い傾向にある。これは人材需要の集中、物価に伴う地域手当の差や人件費水準の違いが影響していると考えられる。
賃金構造基本統計調査の都道府県別データから、医療分野においても都市部と地方部で賃金水準に大きな差が見られる。
■地域別の推定平均年収の傾向
| 参考地域 | 推定平均年収 | 背景・要因 |
|---|---|---|
| 東京 | 約605万円 | 高い地域手当・激しい人材獲得競争 |
| 沖縄 | 約458万円 | 低い地域手当(一方で慢性的な医師不足による好待遇例もあり) |
- ※推定平均年収は「きまって支給する現金給与額×12カ月+年間賞与その他特別給与額」より推定
・病院形態(国公立・民間)による給与格差
勤務する病院の設置主体(形態)によっても、給与体系の設計思想が異なる。
■病院形態による給与構造の違い
| 区分 | 給与構造の特徴 | 傾向 |
|---|---|---|
| 国公立病院 | 公務員給与に準じた俸給表 | 安定性が高く着実に昇給する年功型。 |
| 大学病院 | 教育・研究・診療の複合評価 | 本給は控えめな傾向にあるが、専門医手当や外勤による収入が補完。 |
| 民間病院 | 法人の経営方針・業績連動型 | 法人により格差が大きい。業績に応じた賞与や諸手当の比率が高い。 |
(2)労務担当者が押さえるべき医療特有の手当と給与体系
医療機関の給与体系は法令・制度が複雑に絡み合っており、判断を誤ると未払い残業等の法令違反につながる恐れがある。労務担当者には、法令にもとづき、実態に即した運用基準を整備することが求められる。
・夜勤手当と宿直手当の法的定義と運用上の注意点
夜勤と宿直は法的に性質が異なる。労働基準法第37条により、22時から5時までの労働には25%以上の深夜割増賃金の支払いが必要であり、夜勤は通常の労働時間として取り扱う。
一方、宿直は労働基準法第41条および同施行規則第23条にもとづき、監視・断続的業務として労働基準監督署の許可を受けた場合に限り、労働時間・休憩・休日に関する規制の適用が除外される。なお、深夜労働に対する割増賃金(労働基準法第37条)は適用除外とはならない点に留意が必要である。
■夜勤と宿直の区分と法的取り扱い
| 区分 | 法的根拠 | 取り扱い |
|---|---|---|
| 夜勤 | 労働基準法第37条 | 割増賃金の支払い対象・労働時間に算入 |
| 宿直 | 労働基準法第41条および同施行規則第23条 | 許可を前提に労働時間等規制の適用除外(※) |
- ※参考:[e-Gov法令検索]労働基準法第37条
- ※参考:[e-Gov法令検索]労働基準法第41条
- ※参考:[e-Gov法令検索]労働基準法施行規則第23条
- ※参考:[厚生労働省]医師、看護師等の宿日直許可基準について
・自己研鑽時間の労働時間該当性と給与支払い基準
自己研鑽の時間が労働基準法第32条の「労働時間」に該当するかは、判例および行政通達にもとづき、実態として使用者の指揮命令下にあるか(指示性・時間的場所的拘束の有無)によって判断される。厚生労働省も、業務上の必要性および指示性の有無を主な判断要素としている。
■研鑽時間の労働時間該当性の整理
| 区分 | 判断基準 | 該当性 |
|---|---|---|
| 業務命令研修 | 参加義務あり | 該当 |
| 必須研修 | 業務遂行上必要 | 原則該当 |
| 自主研鑽 | 任意・自由意思 | 非該当 |
実態として参加が義務づけられている、または不参加に不利益が生じる場合には、形式上は任意であっても労働時間と判断される可能性がある。院内において「業務」と「研鑽」の区分基準を明確に定め、運用を徹底することが不可欠である。
(3)2026年度診療報酬改定を踏まえた賃金改善と労務管理
診療報酬改定は人件費の原資に直結し、人材確保や賃上げ支援の継続が図られている。労務担当者は、改定内容を踏まえつつ、今後の制度動向も見据えた運用設計が不可欠である。
・ベースアップ評価料を活用した給与底上げのポイント
ベースアップ評価料は、賃上げ原資として対象職員へ還元することが原則であり、未還元と判断された場合には返還を求められる可能性がある。単なる一時金支給にとどめず、基本給・手当への反映と就業規則の整備を含めた、計画的な配分設計が求められる。
・医師の働き方改革における副業・兼業先との給与管理
労働基準法第38条第1項により、副業・兼業先を含む労働時間は通算管理が必要である。時間外労働の上限規制の順守はもちろん、割増賃金の支払主体の整理や、他院勤務時間の把握など、トラブルを未然に防ぐ管理体制の構築が不可欠となる。
割増賃金の取り扱いについては、厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」にもとづき、複数の事業場での労働時間を通算した結果、法定労働時間を超える労働については、各事業場における労働時間の状況に応じて割増賃金の支払い義務が生じる仕組みとされている。
・採用力や定着率を向上させる給与制度設計のポイント
給与水準だけでなく、昇給基準の明確化やキャリアパスとの連動、福利厚生を含めた実質的な処遇改善を組み合わせることが、採用力と定着率の向上につながる。特に職務内容や役割に応じた評価制度を整備することで、職員の納得感とエンゲージメントを高められる。
・専門・認定資格手当と評価制度の連動による処遇改善
高度化する医療ニーズに応えるため、専門・認定資格手当を評価制度と連動させ、継続的に支給することが有効である。これは職員のスキル向上と定着を促進するだけでなく、診療報酬上の加算取得や施設基準の維持に資する経営戦略としても機能する。
(4)医療従事者の給料に関するよくある質問
Q1.医療従事者の給料はなぜ職種によって違うのですか?
資格の専門性や業務責任、夜勤・宿直の有無などが異なるためです。医師は責任範囲が広く、看護師は夜勤手当、薬剤師は専門知識が給与に反映されやすい傾向があります。
Q2.医療従事者の給料は都市部と地方で差がありますか?
一般的に都市部の方が高い傾向があります。これは地域手当や人材不足による競争が影響しているためです。ただし、地方でも医師が不足する地域では高待遇となる場合があります。
Q3.夜勤手当と宿直手当の違いは何ですか?
夜勤手当は、深夜労働に対する割増賃金や勤務手当を含む形で支払われます。一方、宿直手当は監視・待機中心の勤務に支払われる手当で、労働基準監督署の許可が必要になります。
Q4.宿直中に通常業務を行った場合の給与はどうなりますか?
宿直中であっても、診療対応など通常業務に従事した時間は労働時間として扱われます。この場合、当該時間については時間外労働や深夜労働に該当すれば、労働基準法にもとづく割増賃金の支払いが必要です。宿直許可がある場合でも、実態として通常業務が常態化していると判断されれば、許可の見直しが求められる可能性があります。
Q5.医療従事者の給料は今後上がる見込みがありますか?
近年は診療報酬改定において賃上げを目的としたベースアップ評価料の導入や見直しが進んでおり、一定の処遇改善が図られています。ただし、実際の賃金水準は医療機関の経営状況や人員配置、制度の運用方法によって差が生じるため、一律に上昇するとは限りません。今後も制度改定の動向と併せて各医療機関の対応が重要になります。
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