建設業の労務費とは? 算出方法と適正化するポイントを解説
2026/8/12

建設業では、資材価格の高騰や人手不足の影響により、労務費の管理がこれまで以上に重要になりつつある。労務費は工事原価を構成する主要な費用であり、適切に管理できなければ利益の減少につながる。労務費を正しく把握することで原価管理の精度が向上し、経営改善にも役立つ。
本記事では、建設業における労務費の意味や内訳、重要視される理由について解説する。建設業を営んでいる人や、労務費の適正な管理方法を知りたい方は、ぜひ参考にしてほしい。
(1)建設業における労務費とは
建設業における労務費とは、工事に直接従事する作業員へ支払う賃金や法定福利費など、工事施工に必要な人員にかかる費用である。工事原価を構成する重要な要素の一つであり、企業の利益にも大きく影響する。
ここでは、建設業における労務費と人件費の違いや労務費の内訳について解説する。
・労務費の意味と人件費との違い
労務費とは、建設現場で工事に直接従事する作業員へ支払う賃金や各種手当などの費用を指す。一方、人件費は労務費を含む広い概念であり、事務職員や営業担当者、管理職の給与なども含まれる。建設業では工事ごとの原価を正確に把握する必要があるため、工事に直接かかわる費用である労務費と、それ以外の人件費を区別して管理することが重要である。
・労務費に含まれるもの
労務費には、賃金や賞与、各種手当、法定福利費などが含まれる。
これらは工事を行うために必要な人員に関する費用として計上される。一方、本社部門や営業部門、総務・経理部門など工事に直接かかわらない社員にかかる人件費は、工事原価ではなく販売費及び一般管理費(販管費)として処理されるのが一般的である。
正確な原価管理を行うためには、費用の区分を適切に理解することが大切である。
・建設業で労務費が重要視される理由
建設業では、工事原価に占める労務費の割合が大きく、労務費の増減は利益率に大きな影響を及ぼす。
また、少子高齢化による人手不足や賃金上昇を背景に、技能労働者の確保に向けた処遇改善の重要性が高まっている。さらに、働き方改革の推進により適正な賃金の支払いが求められていることから、労務費を正確に把握し適切に管理することが不可欠である。
そのため、労務費の管理は企業の競争力向上や安定した経営につながるのである。
(2)建設業の労務費が注目されている背景
近年、建設業では労務費への関心が高まっている。ここでは、建設業の労務費が注目されている背景について解説する。
・建設業の人手不足と高齢化が進んでいるため
建設業では就業者の高齢化が進んでおり、若年層の入職者不足が深刻な課題となっている。国土交通省の「国土交通省における働き方改革等の取組」によると、2025年時点で建設業就業者に占める55歳以上の割合は36.6%である一方、29歳以下は11.9%にとどまっている。
ベテラン技能者の引退が進む中、後継人材の確保や技術継承が十分に進まなければ、将来的な人材不足がさらに深刻化するだろう。そのため、適正な労務費を確保し、働きやすい環境を整備する重要性が高まっている。
・働き方改革によって労務費負担が増加しているため
働き方改革により、建設業にも2024年4月から時間外労働の上限規制が適用され、企業はこれまで以上に適切な労務管理が求められている。長時間労働の是正や休日確保を進めるためには、人員配置の見直しや業務効率化が必要であり、結果として労務費負担が増加するケースも少なくない。
また、人材確保のためには賃金水準の向上も不可欠である。こうした背景から、建設業では労務費を適正に管理しながら収益性を維持する取り組みが求められている。
(3)建設業における労務費の算出方法
労務費を適切に管理するためには、正しい算出方法を理解することが重要である。建設業では、工事に直接従事する作業員にかかる「直接労務費」と、現場管理や事務部門などにかかる「間接労務費」に分けて計算するのが一般的である。
ここでは、それぞれの特徴や計算方法について解説する。
・直接労務費の場合
直接労務費とは、工事現場で実際に作業を行う作業員に支払う賃金や手当などの費用である。一般的には「作業員数×作業日数(または作業時間)×日給(または時給)」を目安として算出するが、企業の原価管理方法によって算出方法は異なる。
例えば、日給15,000円の作業員が5人で20日間作業した場合、直接労務費は150万円となる。工事原価に大きく影響するため、実際の作業実績にもとづいて正確に集計することが重要である。
・間接労務費の場合
間接労務費とは、現場管理や事務部門など、工事を支える人員にかかる費用である。一般的には現場監督や施工管理担当者、事務職員などが含まれるが、会社の原価管理方法によっては、現場管理者の人件費を直接工事原価として処理する場合もある。複数の工事で共通して発生する費用については、一定の基準にもとづいて各工事へ配賦する必要がある。
代表的な方法として、各工事の直接労務費の割合を用いて按分する方法がある。間接労務費を適切に配賦することで、工事ごとの正確な採算状況を把握できるだろう。
(4)建設業の労務費を適正化するポイント
労務費は工事原価の中でも大きな割合を占めるため、適切に管理することで利益率の向上につながる。ただし、人員削減や賃金の引き下げによるコスト削減は、人材流出や品質低下を招く恐れがある。
ここでは、建設業の労務費を適正化するポイントについて解説する。
・歩掛を活用して工程を管理する
歩掛とは、一定の作業を完了させるために必要な作業員数や作業時間を示す基準である。歩掛を活用することで、工事ごとに適切な人員配置や作業計画を立てられるため、人員の過剰配置や待機時間の発生防止が期待できる。
また、作業実績と歩掛を比較することで、生産性の低下要因を把握できる点もメリットである。
・作業効率を向上させる
作業効率が向上すれば、同じ工事をより少ない人数や短い工期で完了できるため、無駄なコストの削減につながる。例えば、作業手順の見直しや機械化の推進、資材配置の最適化などが有効である。
また、技能教育や情報共有を徹底することで、作業品質を維持しながら生産性を高められる。まずは無駄な作業時間を削減することが重要である。
・ITツールを活用する
勤怠管理システムや現場管理アプリなどのITツールを活用すると、作業員の勤務状況や稼働時間をリアルタイムに把握できる。
これにより、労働時間の集計作業を効率化できるだけでなく、人員配置の最適化や残業時間の抑制にもつながる。
また、紙やExcelによる管理で発生しやすい入力ミスを防げる点もメリットである。このように、労務管理の効率化は、結果として労務費の適正化や原価管理の精度向上につながる。
(5)建設業の労務費に関するよくある質問
ここでは、建設業の労務費に関してよく寄せられる質問を紹介する。労務費の基本的な考え方や法改正のポイント、管理方法について理解を深める参考にしてほしい。
Q1.労務費と外注費の違いは何ですか?
労務費は、自社で雇用している作業員に支払う賃金や法定福利費などの費用を指します。一方、外注費は協力会社や一人親方など、自社以外へ業務を委託した際に支払う費用です。原価管理や会計処理では区分が異なるため、適切に計上することが重要です。
Q2.労務費を削減しても問題ありませんか?
単純に人員や賃金を削減すると、品質の低下や人材不足につながる可能性があります。重要なのは労務費そのものを減らすことではなく、作業効率の向上やITツールの活用によって無駄なコストを削減し、適正化を図ることです。
Q3.建設業の労務費はなぜ上昇しているのですか?
建設業では人手不足や技能労働者の高齢化に加え、働き方改革による労働環境の改善や賃金水準の引き上げが進んでいます。そのため、近年は労務費が上昇する傾向にあります。
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