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建設業のコンプライアンスとは? 順守すべき法令とリスク対策を徹底解説

2026/9/16

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建設業のコンプライアンスとは? 順守すべき法令とリスク対策を徹底解説

建設業コンプライアンスは、単なる「法令を守る」という受け身の姿勢にとどまらない。建設業法をはじめとする関連法令に違反すれば、営業停止や許可取消といった重い処分を受ける恐れがあるだけでなく、企業の社会的信用そのものを失いかねない。

本記事では、建設業コンプライアンスの考え方や業界特有のリスク、順守すべき法令の全体像、違反時の罰則、そして社内体制を構築するための実務ポイントまでを解説する。ぜひ、本記事を自社のコンプライアンス体制の点検に役立ててほしい。

本記事のポイント

建設業法が基礎知識

建設業法を中心に関連法令の理解が欠かせません。

業界特有のリスクに注意

重層下請け構造や人手不足が違反を招きます。

コンプライアンス体制を構築

研修やマニュアル整備で違反リスクを低減します。

(1)建設業におけるコンプライアンスとは

コンプライアンス」という言葉自体は広く知られているが、建設業においてそれが具体的に何を意味するのかを正確に理解できている担当者は多くないだろう。ここでは、コンプライアンスの基本的な考え方と、建設業における意味合いを整理する。

コンプライアンスの本来の意味

コンプライアンスとは「法令順守」と訳されることが多いが、実際には法令だけでなく、企業や個人が倫理や社会的ルールを守ることも含む広い概念である。コンプライアンスを徹底することは、事故や違法行為を防ぎ、企業の信頼性を高めることにつながる。

一方、法令や規則に違反した場合には、行政処分や罰則の対象となるだけでなく、企業の社会的信用を損なう恐れもある。そのため、コンプライアンスの徹底は、企業経営における重要な課題の一つとされている。

建設業における「コンプライアンス」の具体的な範囲

建設業では、法令や社会的なルールを順守しながら、施工品質の維持・向上に努めるとともに、作業員が安心して働ける安全な現場環境を整備し、適正かつ誠実な取引を行うことがコンプライアンスの重要な要素である。

具体的には、法令を順守するための組織体制を構築するとともに、関係する法令や規則の内容を十分に理解し、それらにもとづいて適切に業務を遂行することが求められる。

特に建設業者が意識すべき法令の一つが「建設業法」であり、建設業コンプライアンスを考える上で重要な位置を占めている。

(2)建設業がコンプライアンスリスクを抱えやすい理由

建設業は、他業種と比較してもコンプライアンスリスクが顕在化しやすい業界構造を持っている。ここでは、その背景を解説する。

・重層下請け構造によるリスク

建設業においては、工事全体の管理監督機能を担う元請けのもと、一次下請け、二次下請け、さらには三次下請け以降の企業が連なる重層的な下請け構造が形成されている。この構造は施工に関する役割や責任の所在が不明確になりやすく、品質や安全性の低下といった弊害も指摘されている。

下請け階層が深くなることで、施工体制や責任の所在、労務管理の状況を元請けが十分に把握しにくくなるケースも多く、法的リスクが生じやすい傾向にある。

・慢性的な人手不足と労働時間管理の難しさ

建設業少子高齢化による労働力人口の減少の中、若年入職者の減少や就業者の高齢化という構造的な問題に直面しており、外国人労働者を雇用する場面も少なくない。また、現場への直行・直帰など長距離かつ頻繁な移動が生じる業務特性から、労働時間の管理そのものが難しくなる。

工期に間に合わせるための長時間労働に対して適正な残業代の支払いや労働時間管理を怠れば、労働基準法違反に問われるリスクが生じる。

(3)建設業者が順守すべき主な法令

建設業コンプライアンスを考える上では、関連する法令の全体像を把握しておく必要がある。中心となるのは建設業法だが、それ以外にも押さえるべき法令は多岐にわたる。

建設業法の全体像

建設業に関連する法令には、建設業法のほか建築基準法、労働基準法労働安全衛生法などが挙げられるが、中心となるのは建設業法である。建設業法は、建設業を営む者の資質の向上や請負契約の適正化等を図ることで建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに建設業の健全な発展を促進することを目的としている。

同法は「許可制度」「技術者制度」「請負契約の適正化」「経営事項審査」「監督処分等」などが定められており、国土交通大臣または都道府県知事が許可・監督を行っている。

・独占禁止法や労働関連法令にも注意が必要

建設業では公共工事の発注が多いことから、独占禁止法が禁止する不当な取引制限(入札談合等)や不公正な取引方法も、建設業における重要なコンプライアンス上のリスクとして挙げられる。事業者同士が受注事業者や受注金額を事前に相談して決める入札談合は、紳士協定や口頭の約束であっても違反となる点に注意したい。

労働基準法労働安全衛生法といった労働関連法令の順守も、慢性的な人手不足に悩む建設業にとって避けては通れないテーマである。

(4)建設業法における具体的な禁止事項・義務

建設業法には、日々の実務のなかで意識すべき具体的な禁止事項や義務が数多く定められている。ここでは、特に実務上つまずきやすいポイントを取り上げる。

・一括下請負の禁止

建設業法第22条では、施工責任をあいまいにする一括下請負(丸投げ)が原則として禁止されている。元請けが施工計画の作成や工程管理、品質・安全管理などに主体的に関与する「実質的関与」が求められる。

単に現場に技術者を配置しているだけでは実質的関与とは認められず、名義だけを貸している状態とみなされれば一括下請負に該当する。

違反した場合は、建設業法にもとづく監督処分の対象となり、原則として15日以上の営業停止処分が行われることがある。

・書面による契約締結、帳簿の備え付け、標識の掲示義務

建設業法第19条は、契約締結に際して工事内容や請負代金の額、工期など重要事項を記載した書面を作成し、原則として署名または記名押印の上、相互に交付することを定めている。また、一定の要件を満たせば、電磁的方法による契約も認められている。口頭のみで契約したり、原則として工事着手後に契約書を取り交わしたりすることは、建設業法違反となる恐れがある。

また、店舗や建設工事の現場では標識を掲示する必要がある(同第40条)。さらに、建設業者は営業所ごとに帳簿を備え付け、保存する義務がある(同第40条の3)。保存期間は原則5年間、発注者と締結した住宅新築工事に関するものは10年間(建設業法施行規則第28条)とされている。

(5)コンプライアンス違反時の処分とリスク

建設業法などに違反した場合、企業が負うリスクは決して小さくない。行政処分だけでなく、社会的信用の失墜という間接的な影響も無視できない。

・監督処分(指示・営業停止・許可取消)

法令違反や不適正な行為が確認された場合、許可行政庁は違反の内容や程度に応じて、指示処分や営業停止処分などの監督処分を行うことがある。さらに、非常に悪質な場合などには許可取消処分の対象となることがある。

・罰金・過料・拘禁刑といった罰則

罰則についても条文ごとに重さが異なり、標識の掲示や帳簿の備え付けなどに関する違反には10万円以下の過料、主任技術者・監理技術者を適正に配置しなかった場合には100万円以下の罰金が科されることがある。

また、建設業許可が必要な工事を無許可で請け負った場合には、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金が科されるなど、違反の内容に応じて重い罰則が定められている。

(6)2026年施行「取適法」など最新の法改正動向

建設業を取り巻く法制度は年々更新されており、最新の改正動向を把握しておくことも重要なコンプライアンス対応の一部である。

・取適法にも注意が必要

2026年1月1日から、下請法(正式には下請代金支払遅延等防止法)を改正した「中小受託取引適正化法(取適法)」が施行され、従来の資本金基準に加え、発注者と受注者の従業員数にもとづいて適用対象を判断する「従業員基準」が新たに設けられた。これにより、これまで下請法の対象外だった取引の一部も、新たに規制の対象となる可能性がある。

ただし、建設工事の下請け取引については、建設業法による規制の対象となるため、取適法の適用対象外とされている。一方で、建設業者が発注するすべての取引が対象外になるわけではない。例えば、建設資材の製造委託や運送委託、設計図の作成委託など、建設工事の下請け取引には該当しない委託取引については、取適法の対象となる場合がある。そのため、建設業者は取引内容ごとに適用の有無を確認しておくことが重要である。

(7)建設業のコンプライアンス体制を構築するためにすべきこと

法令の内容を把握するだけでは、コンプライアンス違反を防ぐことはできない。日常業務の中に根づく仕組みをつくることが欠かせない。

・研修の実施とマニュアルの整備

従業員向けにコンプライアンスや関係法令に関する社内研修を実施することは、法令違反による監督処分や信用失墜のリスクを避けるための第一歩であり、一度きりではなく継続的に取り組むことが求められる。併せて、法務担当者等が各営業所を巡回して法令順守状況をチェックする体制を整え、順守すべき手順やルールを文書化したコンプライアンスマニュアルを作成しておくことで、従業員全員の判断や対応を統一できる。

自社の業務実態に即したオリジナルのマニュアルを整備することが、現場での実効性を高めるカギとなる。

(8)建設業のコンプライアンスに関するよくある質問

Q1.建設業コンプライアンス違反を防ぐには何をすればよいですか?

建設業法をはじめとする関係法令を把握した上で、社内研修や定期的な法令順守チェック、コンプライアンスマニュアルの整備などを行うことが重要です。また、契約書の作成・管理や技術者の配置、労働時間の管理など、違反につながりやすい業務についてチェック体制を整えることも有効です。

Q2.建設業法に違反するとどのような処分を受けますか?

違反内容や程度に応じて、指示処分や営業停止処分、許可取消処分などの監督処分を受ける可能性があります。また、違反の内容によっては、罰金や拘禁刑などの刑事罰が科される場合があるほか、過料の対象となる場合もあります。処分の内容は、違反行為の種類や悪質性などによって異なります。

Q3.建設業コンプライアンス体制はどのように構築すればよいですか?

まずは自社に関係する法令やルールを整理し、順守すべき事項を明確にすることが重要です。その上で、従業員への継続的な研修、法令順守状況の定期的なチェック、業務手順をまとめたマニュアルの整備などを進める必要があります。現場だけに任せるのではなく、経営層や管理部門も関与する体制を整えることで、継続的なコンプライアンス対策につながります。

(9)まとめ

建設業コンプライアンスは、重層下請け構造や慢性的な人手不足といった業界特有のリスクを理解し、建設業法をはじめとする関連法令の内容を正しく把握した上で、研修・チェック・マニュアル整備といった仕組みを社内に根づかせることが、企業の持続的な成長につながる取り組みである。

2026年施行の取適法のように、法制度は今後も更新され続ける。日々の労務管理や契約書管理、法令対応などの実務負担を軽減しながらコンプライアンス体制を強化するために、建設業に対応した人事労務管理システムの導入を検討するのも一つの方法である。

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