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時間外労働の上限規制とは? 働き方改革で求められる対応策について解説

2026/2/4

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時間外労働の上限規制とは? 働き方改革で求められる対応策について解説

時間外労働の上限規制とは、長時間労働を是正し、労働者の健康を守ることを目的として定められた制度である。働き方改革関連法の施行により、36協定を締結している場合であっても、時間外労働には明確な上限が設けられた。

この上限を超えて労働させた場合には、労働基準法違反になり、「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科される恐れがある。そのため、すべての企業において、労働時間を適切に把握し、長時間労働を前提としない働き方へ見直していくことが求められている。

本記事では、時間外労働の上限規制の基本的な内容や注意点、法令順守のために企業が取り組むべき時間管理体制の構築方法について解説する。制度の正しい理解を通じて、長時間の時間外労働の削減を目指そう。

(1)2019年から施行された新たな時間外労働の上限規制

働き方改革関連法の施行により、時間外労働に対して新たな上限規制ルールが設けられた。時間外労働の上限規制自体は2019年から導入されているが、一部の業種については業務の特性などを考慮し、2024年4月まで適用が猶予されていた。

猶予の対象は、建設業運送業(自動車運転の業務)・医師・鹿児島県および沖縄県における砂糖製造業である。現在では、これらの職種や業種も含め、原則すべての職種・業種が時間外労働の上限規制の対象になっている。

時間外労働の上限規制による主な変更点は、36協定を締結していても残業時間には上限があること、そして上限を超えた場合は労働基準法違反として罰則が科されることの2つである。

ここでは、現在の時間外労働の上限規制の内容について詳しく解説する。

36協定のルール

労使間で36協定を締結すれば、月45時間以内、年360時間以内の時間外労働が認められる。この点は働き方改革関連法施行前と変わっていない。

法定労働時間は、原則1日8時間、週40時間までとされていて、週40時間を超えた分が、時間外労働時間と位置づけられる。これを超えて従業員を残業させる場合、労使間で36協定を結び、労働基準監督署へ届出をしなければならない。

・特別な事情があった場合の上限規制ルール

働き方改革関連法の施行前は、特別条項付きの36協定を結んだ場合、時間外労働に上限がなかった。それが、上限規制ルールの適用により、特別条項付きの36協定を結んだとしても、上限時間が設けられた。

主なルールは以下の4つである。

  • ‐月45時間を超えられるのは年6回まで
  • ‐年間720時間まで
  • ‐月100時間未満
  • ‐2~6カ月の平均が80時間以内

ただし例外として、災害時の復旧や復興の事業の場合は、月単位の時間外労働の上限規制の範囲外と認められる。

・管理職に対する上限規制

管理監督者に対しては、時間外労働の上限規制は適用されない。なぜなら、管理監督者は本人の裁量で労働時間を調整できるはずだと考えられるからである。

ただし、役職名が部長や店長など社内においては「管理職」と呼ばれていても、上限管理が必要だと判断される場合もあるため注意が必要である。また、管理監督者も従業員のため、勤怠管理は必要で、深夜手当の支払い義務がある点にも注意しよう。

・上限規制に違反した場合の罰則

働き方改革関連法では、時間外労働の上限規制に加え、違反時の「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」という罰則も明記されており、注意が必要だ。これまでの制度では、告示を受ける程度で具体的な罰則はなかったが、上限規制の適用後は、罰則が科される可能性がある。

さらに注意すべきなのは、規制で定められた上限には複数の項目があるということだ。上記で示した4つの上限時間のルールのどれか1つでもオーバーしてしまった場合は、罰則を受ける可能性がある。

(2)時間外労働の上限規制以外の注意点

労働基準法には、時間外労働の上限規制以外にも注意しなければならない点がいくつか存在する。ここでは、年次有給休暇割増賃金率同一労働同一賃金の原則について説明する。

・休暇制度の見直し

働き方改革により、年次有給休暇付与日数が10日以上の従業員には、1年間に5日以上の年次有給休暇を取得させることが義務づけられた。企業は一定の要件を満たす、すべての従業員に対し、年次有給休暇を付与しなければならない。

1年間に5日以上の休暇を取得させるためにも、社員が休暇を取得しやすい環境づくりをするなど、労働者の健康に配慮した働き方改革に取り組んでいく必要がある。

・一部の時間外労働に対する割増賃金率

月60時間を超える時間外労働に対しては、割増賃金率が25%から50%に引き上げられた。月60時間超の時間外労働が深夜に及ぶと、さらに25%の割増賃金率が適用される。基準に従って、長時間労働に対して適切な賃金を提供する必要がある。労働時間だけでなく、賃金にも注意しよう。

同一労働同一賃金の原則

正規雇用者、非正規雇用者にかかわらず、同じ業務を遂行している場合は不合理な賃金格差を是正する必要がある。賃金といっても基本給・賞与・手当などあらゆる待遇について配慮しなければならない。同一労働同一賃金の原則を守って、正規社員と非正規社員が公平な待遇で働ける環境づくりをしていこう。

(3)時間外労働の上限規制への対応

すべての企業で時間外労働の上限規制への対応が求められる。上限規制に対応するためには、上限を超えないようにするのではなく、残業を減らす意識を持つことが大切である。

時間管理体制の構築やBPR(Business Process Re-engineering=業務改革)やDX化による業務改善、助成金の活用などによって、業務の質を落とさずに労働時間を減らすことが可能である。各対応方法について詳しく説明する。

・法令順守のための時間管理体制の構築

時間管理体制を構築するために、まずは自社の残業状況を把握しよう。その後、上限規制となる月45時間や年間360時間の要件に近づいた従業員に対して、アラートが立つ仕組みを導入することをおすすめする。

残業を発生させる要因は1つではないため、残業を減らすためには、全体的に均一化を目指すのではなく、どこでなぜ残業してしまっているのかを把握し、発生状況に合わせて適切に対処することが大切である。年単位・月単位・複数月の平均など、項目ごとに勤怠管理を監視できる仕組みも整えてみよう。

・BPRによる業務改善

業務内容、フローを見直し、無駄を洗い出すBPRにより、業務の質を高めるのも上限規制への対応として効果的である。短時間で業務を終わらせる仕組みを構築できれば、上限規制に対応しつつ業務の質を維持できる。

重複している作業や非効率的な作業、属人化している業務などを見つけて、無駄を削減していこう。BPRによって業務の質が向上できて、残業や長時間労働の防止につながる。

DX推進による生産性の向上

ICTやAIツール、クラウドサービスなど、各業務においてDXを推進し、可能な限り、自動化を図ることで生産性を向上させよう。DXはデジタルトランスフォーメーションを意味し、デジタル技術を活用して業務を根本的に変革することを言う。

近年、デジタル技術の発展は著しく、以前までは手作業だった工程もデジタル化できるようになっている可能性がある。業務の無駄や問題点を把握したら、ICTやAIツールを活用できないか、一度検討してみよう。

・助成金を活用した環境改善

職場の生産性向上のために利用できる、国の助成金を活用しよう。

例えば、2025年度に実施されている助成金には以下がある。

  • 働き方改革推進支援助成金
  • ‐業務改善助成金
  • ‐人材確保等支援助成金
  • ‐人材開発支援助成金

これらの助成金は労働時間や賃金など労働環境の改善を目指す企業を支援してくれる制度である。気になった場合は、ぜひ一度助成金について調べてみよう。

(4)まとめ

時間外労働の上限規制は、長時間労働を是正し、労働者の健康を守ることを目的とした重要な制度である。現在では原則、すべての職種や業種が対象になっており、上限を超えた場合には「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科される可能性がある。

罰則を避けるためだけでなく、持続可能な働き方を実現するためにも、労働時間の見直しや業務改善が不可欠である。勤怠管理体制の整備やDXの推進、助成金の活用などを通じて、従業員・企業双方に健全な職場環境を構築していこう。

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